楽器の事典ピアノ 第7章 ピアノの種類およびその構造と機能  4 ケース

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ピアノの形状・サイズとそれらの性能の差異

ケース

 ピアノのケースは、通常、専門語でベニアードストック(プライウッドとは異なるもの)とよばれるもので作られ、現在では1枚板を使うことはほとんどない。
 べニアアートストックとは柔らかい木を芯にして囲りにオーク、メープル、ウオルナット、マホガ二ーなどの硬木の美しい化粧板をかぶせたもので、1枚板より強くて狂わないものである。
 低品質のピアノでは普通のプライウッド、ハードボード、あるいは木くずを固めて芯にしたものなどがある。しかしながら、これらを外観上で識別することは不可能である。
 特殊なケースのピアノとして、カワイの透明ピアノがある。これは1971年から作られており、透明度が極めて他高いアクリル樹脂を使っているので、一部のドラムセットと同様に、シースルーの楽器として、内部機構やその動きが見えるので、非常に美しく、特殊な用途に人気を愽しているものである。なお、透明ピアノは、以前、西ドイツのジンメル社で作られたことがあるが、現在ではカワイの製品だけである。
 ピアノの塗装には黒塗りと生地塗りとの二種類かおる。生地塗りとはケースの美しい硬木の色や、木目が浮かび出るように透明の塗料を使ったもので、日本では黒塗りの楽器がほとんどであったが、最近では諸外国と同様に、家具に調和する生地塗りのピアノが多く作られるようになってきた。
 なお、塗料としては、昔の天然の塗料はほとんど使われず、ポリエステルなどの優れた化学塗料が使われているので、表面硬度が高く、スクラッチなどの心配が少なくなっている。
 日本のピアノの古いものには、天然ウルシが使われていたことがある。美しくて、傷つきにくく、美術的であるが、工程に湿度を必要とすることと、塗装の厚みが音質に影響があること、一度傷つくと直しにくいなどの欠点かおり、さらに、高価なため現在では使用されていない。なお、化学ウルシ(カシュー)にはこれらの欠点がない。
 カラーピアノというさまざまな色の楽器が作られることがあるが、多くは特別注文で。ファッション性の強いものである。ただ、白色あるいは薄クリーム色に塗られたものは、たとえ不褪色性の塗料を使っても、長い間には変色のおそれがある。
 欧米のピアノの塗装は高湿度の日本に持ってくると、はげしく痛むことがあった。こまかいヒビ割れや表面材のはがれ、変色などはこのためである。トロピカルタイプという特殊工程をほどこしたものはこの限りではないが表面にっけられた多数のビスが目ざわりになることもある。
 今は古典形式のものとなったが、1950年ごろまでのアップライトピアノのケースは上パネルが3つ窓であるのが常識であった。中央の長方形は音量増幅用の窓、左右の正方形の窓はローソク台の取り付け部の名残りであるといわれている。また、立派な彫刻や象がん、燭台などの美術品としての意匠をこらしたものが多かったが、今はプレーンな形が好まれている。




改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止


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