ピアノの形状・サイズとそれらの性能の差異
グランドとアップライト
グランドピアノは、アップライトピアノと比較した場合、次に列挙するような多くの利点を持つ。
(1)アクションのハンマーの動きが合理的であるーーグランドではハンマーが弦を叩いてはね返る際に、重力の力を借りるわけであるから、その運動が極めて効果的である。
(注)ハンマーが弦と接触する時問はppの演奏とffの演奏では差異がでるがおよそ200の分の1〜500分の1秒である。
その反対に、アップライトでは、ハンマーが弦からバウンドして戻る力に加えて、スプリングとハンマーバットにつけられたテープによって引き戻す方式なので。演奏上の制約が生じる場合かおる。
(2)ダンパーの効果が優れているーーグランドのダンパーは打弦点(ハンマーが弦を叩く個所)の近くで弦に接触するように設計されている。つまり、アップライトと比較した場合、アンチノート(弦の振動の腹)を押えるため、止音効果が確実である。
(3)音量が大きいーーこれは大型のグランドにだけいえることであるが、弦が長いため低音部も高音部も、アップライトと比較にならないほどの、ボリュームが出せるし、しかも音質が優れている。
(4)レペティションのメカニズムが優れている グランドのアクションには特別な役目をするレペティションレバーがついていて、そのためジャックがナックルの下で瞬間的にスリップするので、レペティション(同じ音を急速に繰り返して弾くこと。連続弾奏ともよばれる)の効果がすばらしい。アップライトでもレペティションレールがっけられたりして、さまざまに工夫されているが、レペティションに関する限り、グランドには遠くおよばない。これは一定時間内の連続打鍵の実験によっても証明されている。
(5)音が遠くに広がるーーこれは屋根板を持ち上げたときのことであるが、演奏会場や広い部屋の際に美しい音響効果を生み出す。その反面、アップライトではフロントパネルが音を消し、背面を壁に密着させた場合にはさらに鼻づまりの音色となってしまう。
(6)演奏者の顔が見えるーーこれは機能とも音とも関係がないものであるが、アップライトでは奏者の背中だけが見えて、横から見ない限り顔を見ることができない。しかし。グランドではピアノコンチェルトの奏者が指揮者を見ることができるし、伴奏の場合は主演者と呼吸を合わせるのに好都合である。なお、グランドの場合、譜面台の角度が変えられることや。作曲の際に楽譜が書き易いことも見逃せない長所であろう。
グランドピアノの欠点を強いてあげれば、音色を変えずに。音だけを小さくする装置がついていないということである。つまり、左側のソフト(ウナコルダ)ペダルを踏んでも、鍵盤とアクションが移動して。2本弦が1本弦となり3本弦が2本弦となって鳴るのであって。音を小さくすることより、音色の変化のほうを重視している。なおこの際、ハンマーが不均等に摩耗するという欠点が浮び上ってくる。
アップライトでは、ソフトペダルによって、ハンマーが弦に近ずけられる。つまり打弦距離が短くなるのでタッチが変るが。音は小さくなるのである。また、マフラーと称する音の減少装置もっけやすい。これらの方式のグランドピアノもないわけではないが、その数は極めて少ない。アップライトの最大の利点は。設置する場合に。床面積が少なくてすむことと、アクションの調整が容易であること、および価格が安いことである。
(注)アメリカで1940年ごろまでに作られたアップライトピアノは、140センチ以上の背の高いものが標準で。堅牢で非常に重く、鍵盤のふたは二段折れの角型が多かっか。そのため、ドロップアクションとは逆に、エタステンションという、鍵盤からかなり上に設置されたアクションと歸盤とをつなぐための棒状の装置が必要であった。
アメリカでは、この種の中古ピアノを前パネルの上半分をカットして凹みを作り、奥に鏡を張って高さを低く見せるように改造して売り出している。 [画像] グランドピアノのケース部品名
[画像]コンソールおよびスピネットのケース部品名
内装
1 白けん 11 チューニングピン
2 黒見 12 鉄骨
3 アクション 13 支柱
4 ブラケット 14 ヒッチピン
5 ダンパーヘッド 外装
6 響板 15 やね(トップボード)
7 こま 16 側板
8 こまピン 17 けん盤ふた
9 響棒 18 脚
10 ピン板 19 キャスター (図上) 内装
1 白けん 11 支柱
2 黒見 12 鉄骨
3 アクション 13 ヒッチピン
4 ブラケット 外装
5 アクションボルト 14 やね
6 響板 15 親板
7 こま 16 上前板
8 こまピン 17 けん盤ふた
9 響棒 18 下前板
10 ニューニングピン 19 ペダル
20 脚部
21 キャスター (図下)
改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止
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