楽器の事典ピアノ 第1章 ピアノの生誕と発達の歴史 3 <フランス説> <イギリス説>

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[画像]「チンバロン」ーーー昔のダルシマーを改良して現在ハンガリーその他で演奏されている打楽器。19世紀の後半にこの写真のように改造されたという。音色も変幻自在で極めて表情豊かな演奏ができる。

〈フランス説〉


 ピアノの元祖といわれる楽器がフランスでも作り出されていた。1708年にフランスの鍵盤楽器のメーカーであるキュイジニエが、踏み板で木製の車輪のようなものを回し、この外側に松ヤニをつけて、それをチェンバロの弦に触れさせて連続音を出す不思議な楽器を考え出した。
 このようなピアノとヴァイオリンの混血児のような楽器は、その以前から存在していたもので、ゲイゲンベルグあるいはボードピアノ(弓で弾くピアノ)と呼ばれている。このキュイジニエの作った楽器では。弦を回転する輪の外側に押し付けるために、タンジェントを使っており、これをメイユ(英語のマレット。小さいハンマーのこと)と呼んでいた。
 この装置にヒントを得て、1716年にマリュウスというメーカーがクラブサン・ア・メイユ(ハンマーのついたチェンバロ)を発明しており、この楽器は四種類のものが作られ、パリの王立科学院に提出されたが、鍵盤の押さえ具合によって、音の大きさと鋭さが変わる点において絶賛されたと記録されている。これも考えようによってはピアノの発明につながっているようである。


ゲイゲンベルグ.png 

ゲイゲンベルグ
 

〈イギリス説〉

 ブリタニカ百科事典の第4版には「ピアノはイギリスの優れた詩人であるメーソンによって発明された」と記載されていたという。しかしこれは我田引水的な記述で、まったくの誤りである。ウィリアム・メーソン(1728〜97年)は、古い人名辞典を引くと「あまり有名でない二流詩人。二編の悲劇的作品を残した」と小さく記載されているが、詩人がピアノを発明したというのでは筋が通らず、事実は、彼が1755年頃ドイツのハンブルグからピアノを買い、これを高く売ろうとしたものらしい。






改訂 楽器の事典ピアノ 平成2年1月30日発行 無断転載禁止


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