マノン・レスコー[全4幕] プッチーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Pucini, Manon Lescaut 1892
マノン・レスコー[全4幕] プッチーニ作曲

 
❖登場人物❖

マノン・レスコー(S) 兄レスコー(Br) 騎士デ・グリュー(T)  ジェロンテ・ド・ラヴォワール(B) エドモンド(T)他

❖概説❖

 原作のマノンの物語に題材をとったオペラとしては、他にもマスネの「マノン」が名高い。レオンカヴァルロの台本がプッチーニの気に入らなかったために、何人もの手を経て完成されたが、プッチーニの出世作となった。


第一幕


 アミアンの旅篭の前の広場。学生、市民や多くの人々が集まって騒いでいる。エドモンドが、美しい夜がやって来ると言って仲間の学生に呼びかけると、娘たちもそれにこたえて青春を謳歌する。そこに学生の身なりをした騎士デ・グリューが現れるので、エドモンドは彼を仲間に誘うが、その誘いに乗らないので皆は彼を冷やかす。それに対してデ・グリューは、君たちの中に僕を魅了するほどの美人がいないと皮肉る(「きれいな髪の人たちの中で」)。
 やがて馬車が着いて、近衛軍曹のレスコーとその妹マノン、金持ちの老財務長官ジェロンテらが降りる。学生たちはマノンの美しさをたたえる。やがて人々が去り、レスコーとジェロンテが荷物を持って旅篭の中に入ったすきにデ・グリューはマノンに近づき、彼女の名前と明朝修道院に入るために出発することを聞き出す。その時レスコーがマノンを呼ぶので、デ・グリューは夜ふけの再会を約束して別れる。彼は美しいマノンへの思いをつのらせると(「何と素晴らしい美人」)、学生たちはいつの間にか恋に落ちたデ・グリューを冷やかす。
 一方、好色漢のジェロンテもマノンを手に入れようとして、レスコーの機嫌を取るために兄妹を食事に誘う。レスコーはカルタ遊びを始めるが、この間にジェロンテはマノンを誘惑するために旅篭の主人に馬車の用意を命じる。その間の様子を盗み聞きしていたエドモンドは、デ・グリューに協力してジェロンテの裏をかく計画をたてる。
 学生たちはレスコーを酔わせようと、しきりに酒を勧める。やがて日が暮れて、約束通り現れたマノンにデ・グリューは熱烈な愛を告白し、駆け落ちの説得に成功する。エドモンドたちの助けを借りたデ・グリューは、ジェロンテが用意した馬車を使って逃げてしまう。後から出て来たジェロンテはそれを知って大慌てし、レスコーと一緒にマノンの行方を探すことにする。一方、学生たちは計画がうまく運んだと大笑いをする。


第二幕


 パリのジェロンテ邸の一室。デ・グリューと駆け落ちしたものの、間もなく彼から引き離されたマノンは、今ではジェロンテの愛妾になっている。訪れたレスコーは彼女の満ち足りた生活を見て喜ぶが、彼女は華やかに着飾っても愛のない生活はつまらないと訴え(「柔らかなレースの中で」)、デ・グリューの消息を尋ねて彼への忘れられない愛を懐かしむ。 楽士たちがやって来てジェロンテの作ったマドリガルを歌ってマノンを慰め、続いて踊りのレッスンも行われる。ジェロンテも入って来てマノンの美しさをたたえて出ていく。やがて一人になったマノンが、鏡に写った自分にほれぼれとしているところにデ・グリューが現れる。
 デ・グリューははじめは自分を捨てたマノンを恨むが、やがて誤解が解けた二人の愛は再び激しく燃え上がる。それを見つけたジェロンテに彼女が居直るので、ジェロンテは嫉妬に燃えて立ち去る。
 入れ違いにレスコーが駆け込んで来て、ジェロンテが警官を呼びに行ったから早く逃げるように言う。デ・グリューも催促するが、マノンは宝石類を持ち出そうとして手間どり、その間に到着した警官に捕らえられる。デ・グリューは思わず剣を抜くが、君の他にだれが彼女を助け出せるのかと言うレスコーに自重を求められる。

〈間奏曲〉


第三幕


 早朝のル・アーヴルの港。売春の罪でアメリカに追放の身となったマノンは、他の女囚たちと仮設監獄に閉じ込められている。デ・グリューとレスコーが、彼女を救い出そうとやって来る。デ・グリューは警備の合間をぬって、鉄格子越しに愛の対面をしてマノンを力づける。間もなく遠くから騒ぎが聞こえ、レスコーが戻って来る。彼はマノン奪回作戦が失敗したことを伝える。やがて移民船に乗せられるために獄舎の扉から女囚が次々に引き出され、点呼を受ける。それを人々が物見高く見物している。女囚が一人ずつ移民船に移されるが、マノンの番になった時、群集の中に紛れ込んでいたデ・グリューは突然前に出て彼女に取りすがり、指揮官に彼女と一緒にアメリカへ連れて行ってくれるよう懇願する(「狂気のこの私を見て下さい」)。涙ながらのデ・グリューの訴えに指揮官は彼の願いを聞き入れる。


第四幕


 ニューオルリンズの荒野。植民地でも問題を起こしたマノンとデ・グリューの二人は、追っ手を逃れて荒涼たる砂漠をさまよっている。飢えと渇きに疲れ果てたマノンはもう一歩も歩けず、体を休めたいと言って気を失う。デ・グリューの優しい介抱にやっと気を取り直した彼女は、喉の渇きを訴える。そこでデ・グリューはマノン一人を残して、水と休憩場所を探しに行く。マノンは恐怖と寂しさに絶望し、哀れな自分の身の上を嘆き悲しむ(「一人寂しく捨てられて」)。戻って来たデ・グリューは何も見つからなかったと言い、死期を悟ったマノンは最後の接吻を求める。そして弱々しく永遠の愛を告げて息絶える。デ・グリューも悲しさに耐えかねて気を失い、マノンの体の上に折り重なって倒れる。





Reference Materials


初演

1893年2月1日 トリノ王立劇場

原作 
アベ・プレヴォ/「マノン・レスコーと騎士デ・グリューの物語」

台本 
ルッジェロ・レオンカヴァルロ、ドメニコ・オリヴァ、マルコ・プラーガ、ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ/イタリア語

演奏時間 
第1幕37分、第2幕48分、第3幕17分、第4幕21分(シノーポリ盤CDによる)

参考CD
●フレーニ、ドミンゴ、ブルゾン、リドル/シノーポリ指揮/フィルハーモニア管、コヴェント・ガーデン王立歌劇場唱(DG)

参考DVD
●マッティラ、ジョルダ―ニ、クロフト/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(EMI)
●テ・カナワ、ドミンゴ、アレン/シノーポリ指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(W)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  


プッチーニとトスカニーニ   オペラ名作217コラム 野崎正俊



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