妖精ヴィッリ[全2幕] プッチーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Puccini, Le Villi 1884
妖精ヴィッリ[全2幕] プッチーニ作曲

 
❖登場人物❖

グリエルモ・ウルフ(Br) アンナ(S) ロベルト(T) 語り手

❖概説❖

 ソンツォーニョ出版社の一幕物オペラの懸賞募集に応募するために書かれたプッチーニのオペラ処女作であるが、入賞は果たせなかった。しかし翌年ポンキェルリやボーイトの肝煎りで落選者の作品が上演される機会があり、このオペラは大成功を収めた。リコルディ社からの楽譜出版にあたり、二幕に改作された。習作時代の作品とはいえ、美しいメロディとしっかりとした書法によるオーケストラはいかにもプッチーニらしい。


第一幕


 ドイツ・シュヴァルツヴァルト地方の森の中の広場。森の中の一軒家には林務官のグリエルモが娘のアンナと一緒に暮らしている。季節は春も真っ盛りで、村人たちはアンナとロベルトとの婚約を祝って、豪華な食事が並んだテーブルを囲んでにぎやかに歌い踊っている。ロベルトは間もなく大財産家になってアンナと結婚するだろうと言って、グリエルモにも踊りに加わるよう促す。
 皆が去ると忘れな草の花束を手にしたアンナが現れる。恋人のロベルトが伯母の遺産相続を受けるためにマインツに旅立つので、せっかくの婚礼の宴とはいえ、彼とのしばしの別れを悲しみ、花束をかばんの飾りにする(「もし私がお前たちのように小さな花だったら」)。ロベルトはそのような彼女の姿を見て、微笑みながら近づいて愛の二重唱を歌う。アンナは彼が旅立った後に自分が死ぬ夢を見たと打ち明けるので、当惑したロベルトは、すぐに戻って来るさと言って優しく彼女を元気づけ、二人は愛を誓い合う。
 教会の鐘の音が聞えると、グリエルモと村人たちがやって来て、ロベルトに出発を急かす。皆はグリエルモを囲んでひざまずき、ロベルトの旅の安全と、二人の愛の成就を願って神の加護を祈る。祝福の祈りが終わると、ロベルトはグリエルモやアンナに別れを告げ、途中まで友人たちに見送られながら旅立って行く。


〈間奏曲〉

 語り手が現れて、その後のロベルトの様子を物語る。出向いた先のマインツでロベルトは美しい妖婦に惑わされ、すっかり彼女の虜になってしまいアンナのことは忘れてしまった。不実な恋人の帰りを待ち焦がれていたアンナは、二度とロベルトに会えないまま冬のある日失意のうちに世を去ってしまう。弔いの葬列が舞台のカーテン越しに見える。
 黒い森の伝説によると、恋人に裏切られた純真な乙女は妖精に姿を変え、裏切った若者を捕らえて、彼が疲れて死ぬまで踊り狂うというのである。マインツで妖婦から見捨てられたロベルトは、故郷に帰る道すがら妖精たちが踊り狂って待ち受けている暗くて恐ろしい森の中を突き進んでいると語る。


第二幕


 第一幕と同じ森の中の広場。一人残されたグリエルモは娘アンナの死を嘆き、彼女を裏切ったロベルトをこのまま生かしておくことはできないと思わず彼の死を願う。そして妖精たちに復讐を遂げてくれるよう呼びかける(「そんなことはあり得ない」)。
 森の中で踊り狂う妖精たちを振り切ったロベルトは、まだアンナの死を知らないままに疲れきった様子でグリエルモの家の前にたどり着く。しかしようやく戸口まで着いたところで、ドアをノックするのをためらってしまう。彼は黒い森に伝わる妖精の伝説の物語を思い出す。彼は今ではアンナを捨てたことを後悔し、まだ彼女が生きていると思い込んで、幸せだったあの頃に戻りたいと願う。妖精がロベルトがやって来たと騒ぐので、恐怖に怯えた彼はひざまずいて神に祈る。
 その時、彼の耳には遠くからアンナの呼ぶ声が聞こえ、彼女の亡霊が現れる。ほっとしたロベルトは彼女が元気でいたことを喜び、アンナに近寄ろうとするが、彼女は「もうあなたの恋人ではない」と言い、彼に裏切られて失意のうちに死んでしまったと物語る。ロベルトは自分の冒した罪の深さにおののいて、思わず後ずさりするが、彼女の腕の中に体がたぐり寄せられる。
 妖精たちは、裏切り者は赦されないと言って、二人を取り囲んで激しい踊りの渦に巻き込む。ロベルトはその踊りから逃げ出そうと試みるが、再び踊りの輪に引き戻される。そしてアンナに憐れみを乞うが、彼女は「あなたは私のもの」と一声叫んで姿を消す。精魂尽き果てたロベルトはその場に倒れて絶命する。もうそこにはアンナの姿も妖精たちの姿もなく、ロベルトの死体の上に妖精たちの「ホザンナ!」と歌う勝ち誇ったような声だけが響く。





Reference Materials


初演

1884年5月31日 ダル・ヴェルメ劇場(ミラノ)

原作 
アルフォンス・カール/「ヴィリ」、ハイネの詩集など

台本
フェルディナンド・フォンタナ/イタリア語

演奏時間 
第1幕・間奏曲33分、第2幕31分(下記CDによる)

参考CD
●スコット、ヌッチ、ドミンゴ/マゼール指揮/ナショナル管、アンブロジアン・オペラ唱(SONY)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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