ボエーム[全4幕] プッチーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Puccini, La Bohème 1893~95
ボエーム[全4幕] プッチーニ作曲

 
❖登場人物❖

ミミ(S) ムゼッタ(S) ロドルフォ(T) マルチェルロ(Br) ショナール(Br)  コリーネ(B) ブノア(B) アルチンドロ(B)

❖概説❖

 プッチーニの代表作のひとつで、あふれる抒情美と薄幸のヒロインのもの悲しい運命が胸を打つが、初演はそれほどの成功は収めなかった。なお以前レオンカヴァルロはこの小説のオペラ化をプッチーニに勧めたことがあったが、その時に断られたので自分でオペラを作曲した。それなのにプッチーニは知らぬ顔で後から作曲したので、レオンカヴァルロは怒り、以後二人の不仲はついに修復されることがなかった。


第一幕


 パリの屋根裏部屋。クリスマス・イヴの日、画家マルチェルロは「紅海渡行」の制作に励み、詩人ロドルフォは物思いにふけっている。寒さに震える二人は詩人の原稿をストーブで燃やしてわずかな暖をとる。そこに質屋が休みで本が売れなかったと哲学者コリーネが戻って来るので、さらに原稿を燃やし続ける。やがて金持ちの英国人に雇われた音楽家ショナールが、お金と食料や薪を持って意気揚々と帰って来る。一杯やってから外で食事をしようと皆で騒いでいるところに、折悪しく家主のブノアが滞納した家賃の取り立てに入って来る。四人のボヘミアンたちは家主に酒を勧めてオノロケ話をさせた末に、不道徳な男だと決めつけて部屋から追い出してしまう。そして夜の街へ繰り出して行くが、ロドルフォは急ぐ原稿があるから一足遅れて行くと言って部屋に残る。
 筆が進まないロドルフォが机に向かっていると、扉をノックする音がして、階下に住む貧しいお針子のミミがローソクの火をもらいに来る。胸を病んでいるミミは気分が悪くなるので、ロドルフォは気つけのぶどう酒を与え、ローソクの火をつけて送り出すが、鍵を忘れたことに気づいたミミは戻って来る。
 折りからのすきま風でローソクの火が消え、ロドルフォも自分の火を消してしまう。暗がりの中を手探りで鍵を探す二人の手が触れ合う。ロドルフォはミミの冷たい手をしっかり握って自分を紹介すると(「冷たい手を」)、ミミもそれにこたえて身の上を語る(「わたしの名はミミ」)。その時、階下からロドルフォを呼ぶ仲間の声が聞こえる。ロドルフォはカフェ・モミュスで待っているように答えると、ミミと愛の二重唱を歌い(「ああ愛らしい乙女」)、二人は月明かりの中でしっかりと抱き合って街中に出かける。


第二幕


 カルチェ・ラタンのカフェ・モミュス。広場はクリスマス・イヴのにぎわいを見せ、雑踏の中をくぐり抜けた三人のボヘミアンたちはカフェ・モミュスに入って席を探す。帽子屋に立ち寄ったロドルフォは、ミミを伴って一足遅れて到着し、仲間にミミを紹介する。広場では子供たちがおもちゃ屋のパルピニョールを囲んで母親におねだりしている。
 四人がミミを囲んで楽しい食事を始めたところに、マルチェルロのかつての恋人ムゼッタがパトロンの参事官アルチンドロをお供に派手な姿で入って来る。ムゼッタはマルチェルロがいるのに気づき、彼の気を引こうと派手に振るまう(ムゼッタのワルツ「わたしが町を歩くと」)。見て見ぬ振りをしていたマルチェルロも我慢できなくなる。するとムゼッタは突然、足が痛いからとアルチンドロに新しい靴を買いに行かせ、その間にマルチェルロの腕の中に飛び込む。そして飲食代をすべてアルチンドロのつけにして、皆は雑踏の中に紛れ込む。戻ったアルチンドロは、高額の勘定書を突きつけられてびっくりする。  


第三幕


 アンフェール門の前。前幕から二ヶ月後、マルチェルロとムゼッタは門の傍にある居酒屋に住み込んで生計を立てている。雪の日の早朝、開門を待ちかねてミミが居酒屋にマルチェルロを探しに来る。ミミはマルチェルロに、最近ロドルフォが嫉妬深くなって二人の愛も破局だと訴える。
 昨夜からこの居酒屋で寝込んでいたロドルフォが出て来る様子にミミは木陰に隠れる。ロドルフォはミミは浮気女だと言うが、マルチェルロに問いつめられて、ついに本音を語る。というのもミミは重病で、愛だけでは彼女の命はもたないと言う。それを聞いていたミミはむせび泣いてせき込んでしまう。気がついたロドルフォはあわててミミに駆け寄り、二人は愛を想い出に別れの言葉を交わす(ミミの別れ「さようなら、あなたの愛の叫ぶ声に」)。一方、酒場の中からはマルチェルロと気紛れなムゼッタの口論が聞こえ、言い争ってムゼッタは走り去る。


第四幕


 第一幕と同じ屋根裏部屋。四人のボヘミアンたちは元の気ままな生活に戻っている。ロドルフォとマルチェルロは別れた恋人が忘れられず(「もうミミは戻って来ない」)、気を紛らわそうと踊ったり決闘の真似などして騒いでいる。
 そこに突然ムゼッタが駆け込んで来て、瀕死のミミがロドルフォのそばで死にたいと言うので連れて来たと言う。ベッドに運び込まれたミミは、仲間の名を一人ずつ呼んで丁寧な挨拶をする。ムゼッタは自分の耳飾りをマルチェルロに渡して医者と薬を頼み、寒がる彼女のために自分はマフを取りに行く。コリーネは外套を売って金に替えようと決意し(「さらば古い外套よ」)、ショナールを促して、ミミとロドルフォの二人だけを部屋に残して出て行く。
 二人きりになるとミミは昔を懐かしみ、やがてムゼッタの持って来たマフを手にして眼を閉じる。ムゼッタは薬を作りながらミミの回復を祈るが、その間にミミは息を引き取る。
 ロドルフォはそれと知らずにミミに陽が当たらないようにカーテンを閉めるが、ショナールがミミの死に気づいてマルチェルロにそっと知らせる。コリーネが戻った時の皆の様子がおかしいので、ロドルフォはようやくミミの死を知る。そして彼女の名を叫んで、その上に泣き崩れる。





Reference Materials


初演

1896年2月1日 トリノ王立劇場

原作 
アンリ・ミュルジェ/「ボヘミアンたちの生活情景」

台本 
ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ/イタリア語

演奏時間 
第1幕30分、第2幕25分、第3幕26分、第4幕30分(カラヤン盤CDによる)

参考CD
●フレーニ、ハーウッド、パヴァロッティ、パネライ、マッフィオ/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ唱(D)

参考DVD
●ストラータス、スコット、カレーラス、スティルウェル/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




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