トスカ[全3幕] プッチーニ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. Puccini, Tosca 1898~99
トスカ[全3幕] プッチーニ作曲

 
場人物❖

フローリア・トスカ(S) マリオ・カヴァラドッシ(T) 警視総監スカルピア(Br)  チェザーレ・アンジェロッティ(B) 堂守(B) スポレッタ(T)他

❖概説❖

 音楽とドラマが一体となった劇的緊張感の高いオペラで、原作はフランスの名女優サラ・ベルナールのために書かれた悲劇である。初演は成功しなかったが、1901年3月ミラノ・スカラ座でトスカニーニの指揮により上演されて以来評判となった。


第一幕


 聖アンドレア・デラ・ヴァッレ教会。誰もいない教会堂に、脱獄囚アンジェロッティが逃げて来る。彼は妹のアッタヴァンティ侯爵夫人が聖水盤の下に隠しておいた鍵を探し出すと、礼拝堂の扉を開けて中に姿を消す。堂守がぶつぶつ言いながら見回りにやって来て、壁画を描いているはずの画家カヴァラドッシがいないので祈りを捧げる。そこにカヴァラドッシが戻って来て絵の覆いを取ると、現れたマリア像のモデルがいつも熱心に祈りに来る女性なので、堂守は嫉妬にかられる。
 カヴァラドッシはポケットから取り出した恋人トスカの肖像メダルと壁画を見比べながら恋人の美しさをたたえる(「妙なる調和」)。堂守は昼の弁当のかごに手がついていないのを見て立ち去る。アンジェロッティが奥の礼拝堂から現れて、旧知の同志カヴァラドッシとの再会を喜び、カヴァラドッシは逃走の手助けを約束する。その時、外からカヴァラドッシを呼ぶトスカの声が聞こえるので、彼はアンジェロッティに弁当かごを渡して再び礼拝堂に隠れさせる。
 入って来たトスカは、ここに誰かいたのではないかと疑いながらも、今夜音楽会が終わったら郊外の別荘へ行くことをカヴァラドッシに約束させる(「二人の愛の家へ」)。帰りがけに壁画のモデルがアッタヴァンティ侯爵夫人に似ているのに気づいて激しく嫉妬するが、カヴァラドッシになだめられて立ち去る。トスカがいなくなったのを確かめると、カヴァラドッシはアンジェロッティに隠れ家の別荘への道を教え、危険が迫った時には庭の古井戸に隠れるように言う。その時、脱獄を知らせる大砲の音がするので、二人は急いでその場を去る。堂守がナポレオン敗退の知らせを持って入って来るが、画家がいないのでがっかりして、集まった神学生や聖歌隊たちと一緒ににぎやかにはしゃぐ。
 突然、警視総監スカルピアが脱獄した国事犯アンジェロッティの捜索に現れる。部下のスポレッタが礼拝堂の中に落ちていたアッタヴァンティ家の扇を見つけ、堂守からは空になっていた弁当かごの件を聞き出す。その時トスカがやって来て、カヴァラドッシがいないのをいぶかる。かねてからトスカに下心を抱いていたスカルピアは彼女の嫉妬心をあおり、怒ったトスカの後をスポレッタに尾行させる。教会では枢機卿の入場を待って壮麗なテ・デウムの儀式が始まり、スカルピアは邪な欲望をつぶやく。


第二幕


 ファルネーゼ宮殿の一室。スカルピアは一人で夕食を取りながら何事か考えを巡らしている。階下からは戦勝祝賀パーティの音楽会で歌うトスカの声が聞こえる。そこにスポレッタが戻り、アンジェロッティは取り逃がしたが、カヴァラドッシを捕らえたと報告し、彼が連行されて来る。厳しい尋問にも、カヴァラドッシはアンジェロッティの行方にしらを切る。音楽会が終わってトスカが入って来るのを機に、カヴァラドッシは拷問室に入れられる。カヴァラドッシはトスカに何も言ってはいけないと念を押すが、苦痛にうめく彼の悲鳴に耐え切れなくなったトスカは、ついに庭の古井戸の中と白状してしまう。
 拷問室から出されたカヴァラドッシはトスカが口を割ったのを知って怒るが、ローマ軍勝利は誤りで実はナポレオン軍が大勝したとの報が伝えられると、狂喜してスカルピアを罵るので、激怒したスカルピアは彼の投獄を命じる。助命を請うトスカに、スカルピアは彼女の体を代償に要求するので、トスカは絶望的な悩みに心が乱れ(「歌に生き、恋に行き」)、彼の要求に屈する。するとスカルピアはスポレッタに形式だけのカヴァラドッシの銃殺を命じる。スポレッタが去った後、トスカはスカルピアにカヴァラドッシと二人で国外に去るための許可書を所望する。スカルピアが書類を書いている間にトスカは卓上にあるナイフに目を止め、スカルピアが彼女を抱こうとした瞬間に彼の胸を刺す。そして息絶えたスカルピアの手から出国許可書をもぎ取ると、死体の両側にローソクの火を置き、十字を切って静かに部屋を出る。  


第三幕


 聖アンジェロ城の屋上。澄んだ星空に教会の鐘の音や牧童の歌声が聞こえてくる。兵士に連行されたカヴァラドッシが現れ、看守に指輪を与えて恋人トスカへの別れの手紙を書くが、途中で感きわまって泣き伏してしまう(「星も光りぬ」)。そこにスポレッタに案内されたトスカが現れ、出国許可書を見せてこれまでの一部始終を語り、二人は自由の身になったことを喜ぶ。
 兵士たちが現れて銃殺刑が行われる。兵士たちが立ち去ったので、トスカはカヴァラドッシの傍に走り寄るが、空砲だとばかり信じていたのに彼は血に染まって息絶えている。だまされたと知ったトスカが悲鳴をあげているところに、スカルピア殺害を発見した兵士たちがトスカを捕らえに駆け上がって来る。これまでと悟ったトスカは「スカルピア、あの世で」と叫んで、露台の上から投身して恋人の後を追う。



Reference Materials


初演

1900年1月14日 コスタンツィ劇場(ローマ)

原作
ヴィクトリアン・サルドゥの同名戯曲

台本
ルイージ・イッリカ、ジュゼッペ・ジャコーザ/イタリア語

演奏時間
第1幕43分、第2幕39分、第3幕27分(デ・サバータ盤CDによる)

参考CD
● カラス、ディ・ステファノ、ゴッビ/デ・サバタ指揮/
ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●グレギーナ、リチートラ、ヌッチ/ムーティ指揮/
ミラノ・スカラ座管・唱(SONY)

参考DVD
●  ベーレンス、ドミンゴ、マックニール/シノーポリ指揮/
メトロポリタン歌劇場管・唱(PG)
● ゲオルギウ、アラーニヤ、ライモンディ/パッパーノ指揮/
コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(紀)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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