リゴレット[全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Rigoletto 1850~51
リゴレット[全3幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

リゴレット(Br) ジルダ(S) マントヴァ公爵(T) スパラフチーレ(B) マッダレーナ(Ms)  モンテローネ伯爵(Br) チェプラーノ伯爵(Br) ジョヴァンナ(Ms)他

❖概説❖

 ヴェルディが円熟期にさしかかった時期の傑作のひとつ。レチタティーヴォ・セッコを持たず、一貫してオーケストラ伴奏で歌われる書法が、ドラマを劇的に盛り上げる上で役立っている。

第一幕


 第一場 マントヴァ公爵の宮廷の大広間。華やかな舞踏会が開かれている。公爵は廷臣のボルサを相手に、3ヶ月前に教会での日曜ごとの礼拝で見染めた娘のことを話している。その時そばを通り過ぎる美しいチェプラーノ伯爵夫人にも色目を使い、自分の浮気心を自慢する(「あれか、これか」)。そして夫人を口説いて別室に踊りに行く。
 廷臣のマルッロは、道化役のリゴレットが美しい恋人を囲っていると嘲笑い、廷臣たちと彼女をさらってこようと話している。そこに公爵とリゴレットが戻って来て、伯爵夫人を手に入れるために嫉妬深い夫の伯爵を追い払う相談を始める。
 怒った伯爵を皆でからかっていると、公爵に娘をもてあそばれた老モンテローネ伯爵が奥の扉から現れる。モンテローネ伯爵は激怒して公爵をなじり、リゴレットに呪いの言葉を浴びせる。迷信深いリゴレットは一瞬不安を覚える。
 第二場 町はずれのリゴレットの家のそば。リゴレットが先ほどのモンテローネ伯爵の呪いを気にしながら暗い夜道を家に帰る途中、スパラフチーレに呼び止められる。彼は自ら殺し屋と名乗り、ご用の節はいつでもと言って去る。リゴレットは、奴は剣で人を刺し、自分は舌で刺すと自嘲気味につぶやいて家に入る。娘のジルダを見てリゴレットの気持ちは晴れるが、彼女が亡き母親について尋ねても多くを語ろうとしない。ジルダは教会以外の町の様子を知らないから外へ出てみたいと言う。その時、人の気配を感じてリゴレットは様子を見に出る。
 そのすきに学生姿に変装したマントヴァ公爵が中庭に忍び込み、乳母のジョヴァンナに財布を与える。戻って来たリゴレットは、乳母に戸締まりを厳重にするよう命じて外出する。木陰で様子をうかがっていた公爵は、自分が後をつけて来た娘の父親がリゴレットだと知って驚く。
 突然公爵が現れるのでジルダは驚くが、公爵から財布を握らされている乳母は奥に去る。ジルダはこの男がいつも教会で見かける若者だとわかり、二人は打ち解けて愛を語り合う。すると往来で人声がするので、公爵は自分はグワルティエル・マルデという貧しい学生だと名乗って立ち去る。一人残ったジルダは、胸をときめかせて家に入る(「慕わしい人の名は」)。
 一方、ボルサやマルッロら廷臣たちは、ジルダをさらって公爵への贈り物にしようと路上に集まる。そこに折り悪くリゴレットが帰って来るので、彼らは向かいの家のチェプラーノ伯爵夫人を誘拐するのだと騙して、リゴレットに目隠しをしてしまう。その間に廷臣たちは梯子をかけてジルダの寝室に侵入し、彼女を連れ去る。様子がおかしいのに気づいたリゴレットが目隠しを取ると、ジルダのハンカチが落ちていて娘がさらわれたことを知る。リゴレットは、あの呪いだと絶叫する。


第二幕


 マントヴァ公爵邸の一室。公爵が恋人が何者かにさらわれたと知って嘆いていると(「頬の涙が」)、廷臣たちがリゴレットの愛人をさらって来たと報告する。それがジルダと知った公爵は喜び、彼女の顔を見に行く。
 そこに鼻歌を歌いながらリゴレットが現れる。廷臣たちが彼をからかうが、彼も道化師らしく振るまいながら娘の所在を探り、廷臣たちのつじつまの合わない会話から娘が宮廷にいることを知る。一方、廷臣たちは彼女がリゴレットの愛人ではなくて娘と知って驚く。リゴレットは、廷臣たちを悪魔に例えて罵り、娘を返せと叫ぶ(「悪魔め、鬼め」)。
 そこにジルダが公爵の部屋から走り出て来て父親の腕に抱かれる。二人だけになると、ジルダは教会での若者との出会いや昨夜のできごとなど、すべてを泣きながら話すので、リゴレットは優しく娘をいたわる。そこに衛兵に引かれたモンテローネ伯爵が通りかかって、公爵の肖像画に呪いの言葉をかける。それを聞いたリゴレットも、公爵への復讐を誓う。


第三幕


 ミンチョ河畔にあるスパラフチーレのあばら家。いまだに公爵の愛を信じているジルダに、リゴレットはいかがわしい安酒屋の内部の様子をのぞかせる。公爵は気持ち良さそうに自分の浮気心を自慢し(女心の歌「風の中の羽根のように」)、殺し屋スパラフチーレの妹マッダレーナを口説いている。リゴレットはそんな公爵の姿を娘に見せ(四重唱「愛する美しい乙女よ」)、男装してヴェローナに出発するよう命じて立ち去らせると、スパラフチーレに前金を渡し公爵殺害を依頼する。
 酔いつぶれた公爵が寝つくと、スパラフチーレはさっそく殺しの準備に取りかかるが、公爵に魅せられたマッダレーナの助命の頼みで、身代わりを使うことにする。その一部始終をそっと戻って立ち聞きしていたジルダは、自ら公爵の身代わりになろうと決意して、激しい嵐の中でスパラフチーレの家の扉を叩く。 しばらくして約束の12時になり、リゴレットは公爵の死体を受け取りに来る。スパラフチーレは残金と引き換えに死体の入った袋を渡し、早く河へ捨てるように言う。重い袋を引きずって河畔まで来た時、遠くから公爵の歌声が聞こえる。いぶかしむリゴレットが袋を開けると、瀕死のジルダが入っている。ジルダは虫の息で許しを請い、息絶える。リゴレットはこれが呪いかと言って、ジルダの上に身を投げかける。



Reference Materials


初演

1851年3月11日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作
ヴィクトル・ユーゴー/「逸楽の王」

台本
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ/イタリア語

演奏時間 
第1幕56分、第2幕30分、第3幕33分(ムーティ盤CDによる)

参考CD
●コトルバス、オブラスツォワ、ドミンゴ、カプッチッリ/ジュリーニ指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG)
●デッシー、セン、ラ・スコラ、ザンカナーロ/ムーティ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)

参考DVD
●グルベローヴァ、ヴェルガーラ、パヴァロッティ、ヴィクセル/シャイー指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(D)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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