トロヴァトーレ[全4幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Il Trovatore 1852
トロヴァトーレ[全4幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

レオノーラ(S) マンリーコ(T) ルーナ伯爵(Br) アズチェーナ(Ms)  フェルランド(B) イネス(Ms)他

❖概説❖

 色彩豊かな美しい旋律と華やかな歌で綴られたオペラで、イタリア・オペラの楽しさを満喫できる名作である。ヴェルディ自ら指揮に当たった初演は大成功を収めた。

第一幕「決闘」


 第一場 アリアフェリア城の城門の前。隊長のフェルランドが、衛兵たちの眠気覚ましに伯爵家にまつわる昔話をして聞かせる(「卑しいジプシーの老婆が」)。
 それによると、先代のルーナ伯爵には二人の子供がいたが、ある時、ジプシーの老婆が弟の方に呪いをかけたので、伯爵は老婆を火あぶりの刑に処した。すると弟の姿が見えなくなり、火刑場の灰の中から幼児の骨が見つかった。息子はどこかで生きているに違いないと信じる先代伯爵の遺言で、今の伯爵も弟を探しているというのである。
 第二場 城内の庭園の夜。侍女イネスを伴った女官レオノーラが現れる。彼女は昔御前試合で勝利した騎士が忘れられないと語り、ある夜リュートの音とともに吟遊詩人の声がするのでバルコニーに出てみると、あの時の騎士だったと言う(「おだやかな夜」)。ところが今宵はその声が聞こえないので、彼女は部屋に入る。
 入れ違いにルーナ伯爵がレオノーラに恋心を打ち明けようとやって来ると、吟遊詩人の声が聞こえる。城内からレオノーラが出て来て、暗闇に立つ伯爵を吟遊詩人と間違えて抱きつく。レオノーラは間違いに気づくが、怒った伯爵はマンリーコと名乗る吟遊詩人と決闘するために裏庭に消える。


第二幕「ジプシー」


 第一場 ビスカリア山中のジプシーたちの野営地。ジプシーたちは鍛冶仕事に励んでいる(アンヴィル・コーラス「朝の光がさして来た」)。ジプシーの老婆アズチェーナがたき火の炎を見つめながら、マンリーコに自分の母親が昔火刑に処された時の恐ろしい光景の話をする(「炎は燃えて」)。
 マンリーコがもっと詳しい話をせがむと、母親の復讐に伯爵の子供をさらって火に投げ込んだが、気がつくとそれは自分の子供だったと言う。では自分は誰の子だろうといぶかるマンリーコに、アズチェーナはお前は自分の子供だと答える。
 伝令が角笛の音とともに部下のルイスからの手紙を持って来て、マンリーコが決闘で死んでしまったと思い込んだレオノーラが修道院に入ると伝える。制止するアズチェーナを振りきって、マンリーコは馬で山を下りて行く。
 第二場 カステロール城近くの修道院の庭。ルーナ伯爵が、修道院に入るレオノーラを誘拐しようと物陰で部下と待ち伏せている(「君がほほえみ」)。そこに尼僧に囲まれたレオノーラが現れる。
 伯爵がレオノーラを誘拐しようとした瞬間、部下を連れたマンリーコが剣を抜いて割って入る。マンリーコが生きていたことに驚き喜ぶレオノーラを前に、伯爵はマンリーコに向かって剣を振りかざす。多勢に無勢で悔しがる伯爵を尻目に、マンリーコはレオノーラを連れ去る。


第三幕「ジプシーの子」


 第一場 ルーナ伯爵の野営地。兵士たちが出陣を前に勇ましく歌って立ち去る(「戦いのラッパは鳴り」)。そこに伯爵の従僕フェルランドが、怪しいジプシーの老婆を捕らえたと言ってアズチェーナを引き立てて来る。尋問で伯爵が昔誘拐された子供の兄であり、アズチェーナが弟を盗んだ犯人の娘で、しかも恋仇のマンリーコの母親であるとわかる。アズチェーナを人質に取った伯爵は、マンリーコをおびき出そうと火刑台を作らせる。
 第二場 カステロール城内。マンリーコは不安におびえるレオノーラを慰め、結婚式のために礼拝堂に入ろうとすると、ルイスが飛び込んで来て、アズチェーナが伯爵に捕らえられて、火刑台が用意されていると報告する。マンリーコは烈火の如く激しく怒り(「見よ、恐ろしい炎を」)、母親救出のためルイスとともに城外に飛び出して行く。


第四幕「処刑」


 第一場 アリアフェリア城のそば。レオノーラはマンリーコが捕らわれている塔の下に忍び込んで来て、彼を救い出そうと切々たる気持ちを歌う。(「恋はばら色の翼に乗って」)。城内からはミゼレーレの祈りが流れ、塔の中からはこの世とレオノーラに別れを告げるマンリーコの声も聞こえる。
 伯爵が城門から出て来るので、レオノーラは急いで物陰に隠れる。レオノーラは、部下を去らせて一人になった伯爵の前で必死にマンリーコの命請いをする。
 伯爵は彼女の体を代償に、マンリーコの助命を約束する。 しかしレオノーラは隠し持っていた毒を飲み、伯爵に生きた体は与えないとつぶやく。それとも知らず伯爵は、レオノーラがやっと自分のものになったと喜ぶ。
 第二場 城内の牢獄。アズチェーナとマンリーコは互いに慰め合う。疲れたアズチェーナは夢うつつに、自分の山に帰って平和に暮らそうと言って眠る(「我らの山へ」)。
 そこにレオノーラが入って来る。マンリーコは自分の命の代償に愛を売った彼女を責めるが、すでに毒を飲んだと知って誤解を解く。しかし毒が早く回りすぎて、入って来た伯爵はだまされたと知り、マンリーコの処刑を命じる。その時目覚めたアズチェーナは、彼こそ伯爵の弟だといって息絶える。



Reference Materials


初演

1853年1月19日 アポロ劇場(ローマ)

原作 
アントニオ・ガルシア・グティエレス/「エル・トロヴァドール」

台本 
サルヴァトーレ・カンマラーノ、エマヌエレ・デル・バールダレ/イタリア語

演奏時間 
第1幕26分、第2幕40分、第3幕21分、第4幕39分(エレーデ盤CDによる)

参考CD
●ステッラ、コソット、ベルゴンツィ、バスティアニーニ/セラフィン指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(DG)
●テバルディ、シミオナート、デル・モナコ、サヴァレーゼ/エレーデ指揮/ジュネーヴ大劇場管、フィレンツェ5月音楽祭唱(D)

参考DVD
●マルトン、ザージッチ、パヴァロッティ、ミルンズ/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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