椿姫[全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, La Traviata 1853
椿姫[全3幕] ヴェルディ作曲

 

 

❖登場人物❖

ヴィオレッタ・ヴァレリー(S) アルフレード・ジェルモン(T) ジョルジョ・ジェルモン(Br)  フローラ・ベルヴォア(Ms) ドゥフォール男爵(Br) アンニーナ(S)他

❖概説❖

 ヴェネツィア・フェニーチェ座における初演は大失敗であった。主役のヴィオレッタがミス・キャストであったのと、イタリアに馴染みの薄いパリの社交界をテーマにしたことによるといわれるが、再演以後は徐々に人気が上昇した。 オペラの題名の「ラ・トラヴィアータ」は“道を迷える女”という意味だが、日本ではデュマの原作の小説「椿姫」の題名がそのままオペラでも用いられている。

第一幕


 パリのヴィオレッタの家の客間。華やかな夜会が開かれている。招かれた友人や客たちはヴィオレッタの挨拶を受けて、快楽こそ人生と高らかに歌う。そこにガストン子爵に伴われた南仏の富豪の息子アルフレードがやって来て、ヴィオレッタに紹介される。ヴィオレッタが純情なアルフレードに惹かれる様子に、パトロンのドゥフォール男爵は早くもライバル意識を燃やす。宴たけなわとなったころ、皆に勧められてアルフレードは「乾杯の歌」を歌うと(「友よ、さあ飲みあかそう」)、ヴィオレッタや一同もそれに続く。しかし人々とともに大広間へ踊りに行こうとした時、ヴィオレッタは突然気分が悪くなる。
 彼女が客たちと離れて一人別室で休んでいると、心配そうにアルフレードが現れて優しく声をかける。そして、一年前から人知れず彼女を愛していたことを打ち明ける。高級娼婦のヴィオレッタは、はじめは軽く受け流していたが、次第にアルフレードの熱意に打たれて恋に陥る。二人はガストン子爵が現れるので一瞬我に帰るが、ヴィオレッタは別れ際にアルフレードに胸から取り出した椿の花を差し出し、明日の再会を約束する。
 夜もふけて、一同はヴィオレッタにいとまを告げて帰って行く。一人残った彼女は、人生で初めて知った恋心に不思議な気持ちになり、本当の愛の喜びを見出す自分に喜びと不安が交錯する(「ああ、そはかの人か」)。その時、戸外でアルフレードの愛の歌が聞こえてくる。その声にヴィオレッタは、快楽のまま自由に生きなければならないと口走るが、心は彼の愛に生きようと決心する(「花より花へ」)。


第二幕


 第一場 パリ郊外の田舎家。前幕から三ヶ月後、アルフレードはヴィオレッタとの愛の生活の喜びを率直に歌う(「燃える心を」)。そこに旅行服を着た女中のアンニーナが入って来るので問いただすと、ヴィオレッタが生活資金を作るために馬車や家具を手放していることを知る。驚いたアルフレードは、自分も金策のためにパリへ出かける。入れ違いにヴィオレッタが入って来る。召使が友人フローラが今夜開く舞踏会の招待状を持って来るが、アルフレードとの愛を大切にしたいヴィオレッタは出席する気持ちにならない。
 そこにアルフレードの父親ジェルモンが尋ねて来る。彼は息子がヴィオレッタに誘惑されて、財産も貢がされていると思い込んでいたが、ヴィオレッタの愛情を知り、彼女に深く感謝する。それでもなお娘の縁談に差し障りがあるので、息子と別れるよう執拗に彼女に犠牲を迫る。苦悩しながらもヴィオレッタは身を退くことを了承し、ジェルモンは去る。
 ヴィオレッタはアルフレードに別れの手紙を書いて使いの者に渡す。そして戻ったアルフレードにすがりついてからそっと出て行く。間もなくアルフレードは使いの者からヴィオレッタの縁切りの手紙を受け取る。何も事情を知らずに驚き怒っている息子の前にジェルモンが現れ、故郷に帰るよう諭すが(「プロヴァンスの海と陸」)、怒ったアルフレードは机上のフローラからの手紙を見つけると、復讐を叫んでヴィオレッタの後を追う。
 第二場 フローラ邸の大広間。ヴィオレッタに代わってパリの社交界の中心になったフローラは、豪華な夜会を開いている。仮装舞踏会たけなわの頃にアルフレードがやって来て、ガストン子爵らとカルタの賭けを始める。そこにドゥフォール男爵に伴われたヴィオレッタが入って来る。彼女はここに来たことを後悔する。
 アルフレードは男爵を賭けに誘って大勝する。一同が食事に去ると、アルフレードはヴィオレッタをつかまえて彼女の心変わりを詰問する。怒った彼は、賭けで勝った金札をヴィオレッタに叩きつけて罵倒するので、彼女は気を失う。人々がアルフレードの無礼を責めていると、ジェルモンが登場して息子を叱責する。後悔するアルフレード、いつかわかってくれると信じるヴィオレッタをはじめ、皆は思い思いの心の中を歌う。


第三幕


 パリのうらぶれたヴィオレッタの家の寝室。それから数ヶ月後、ヴィオレッタは病床に伏して死を待つだけの身になっている。目を覚ましたヴィオレッタはアンニーナに水をもらい、陽の光を入れてもらう。医者が往診に来て励ますが、アンニーナにもう長くないと伝えて帰る。
 一人になったヴィオレッタは、ジェルモンから来た手紙を取り出して読む。そこには、すべてを知ったアルフレードが許しを求めにあなたの許に行くでしょうと書かれている。しかしヴィオレッタはもう遅いとつぶやいて、過ぎ去った楽しい日々を回想する(「さようなら、過ぎ去った日よ」)。
 外から謝肉祭のにぎやかな音が聞こえ、間もなくアンニーナがアルフレードの来訪を知らせに飛び込んで来る。アルフレードはヴィオレッタに許しを請い、もう決して放さないから再び郊外で生活しようと言う(「パリを離れて」)。喜びのヴィオレッタは愛の力を得て病床から立ち上がるが、すぐに床に倒れる。 アンニーナが医者を連れて来る。ジェルモンも駆けつけて許しを請うが、死を悟ったヴィオレッタは自分の肖像のメダルを形見としてアルフレードに渡す。ジェルモン親子の深い後悔の中にヴィオレッタは息を引き取る。



Reference Materials


初演

1853年3月6日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作
デュマ・フィス/「椿姫」

台本 
フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ/イタリア語

演奏時間 
第1幕27分、第2幕55分、第3幕28分(クライバー盤CDによる)

参考CD
●コトルバス、ドミンゴ、ミルンズ/クライバー指揮/バイエルン国立歌劇場管・唱(DG)

参考DVD
●ストラータス、ドミンゴ、マクニール/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(DG)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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