シチリア島の夕べの祈り[全5幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, I Vespri Siciliani 1855
シチリア島の夕べの祈り[全5幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

エレナ公女(S) アリーゴ(T) モンフォルテ(Br) ジョヴァンニ・ダ・プローチダ(B)他

❖概説❖

 ヴェルディは、これが10年以上前にスクリーヴによって書かれ、未完に終わったドニゼッティの「アルバ公爵」の台本と同じ題材であることを知らずに作曲した。パリでの初演は大成功を収めたが、同年末トリノとパルマでのイタリア初演に際しては、A・フシナートが伊訳した「ジョヴァンナ・デ・グスマン」の題名で上演され、こちらも大成功を収めた。現在では翌56年ミラノ・スカラ座で上演された際のイタリア語改訳版を原題に戻して上演されるのが普通である。近年、日本では「シチリアの晩鐘」の日本語題名が使われることもある。

第一幕


 パレルモの街の大広場。フランス統治軍の兵営の前で、兵士たちが酒を飲みながら郷愁を語り合っているのを、シチリア人たちは憎悪の眼差しで眺めている。そこに人質となっている前シチリア王の妹エレナ公女が現れて、亡き兄の冥福を祈って復讐を誓う。酔ったフランス兵が公女に歌を強要するので、公女は静かに歌い出す(「沖合いはるか」)。
 あまりにも情熱的な歌に鼓舞されたシチリア人たちは、剣を手にフランス兵たちに襲いかかろうとする。その時、宮殿の前に総督モンフォルテが突然姿を現すので、群衆は恐ろしさに走り去る。エレナたちが憎悪の目で総督を睨みつけているところに、反逆罪で捕らわれていた青年アリーゴが現れ、公正な裁判で無罪になったことをエレナに告げる。
 この話を聞いていた総督はエレナたちが立ち去ると、アリーゴに自分の部下になるよう誘う。しかしアリーゴはその申し入れを拒絶してエレナの宮殿に向かう。


第二幕


 パレルモ近郊の海岸にある美しい谷間。永らく亡命していた愛国の士プローチダが、久しぶりに祖国の土を踏んだ感激に浸っている(「おおパレルモ」)。そこに教会から出て来たエレナとアリーゴが通りかかり、偶然の再会を喜ぶ。彼は今こそ決起の時が来たと告げて立ち去る。エレナはアリーゴの愛の告白に、もし兄の仇を討ってくれたなら身分違いの愛を受け入れると誓う。そこにフランス統治軍の将校がやって来て、アリーゴに総督の舞踏会の招待状を渡し、拒む彼を力ずくで連行してしまう。戻って来たプローチダは事の顛末を聞くと、復讐の決意を新たにする。
 若いシチリア人の男女たちが集まって来てタランテラを踊っている。来合わせたフランス兵士たちもこれに加わり、やがて踊っていた娘たちをさらって行ってしまう。エレナや花嫁を奪われたシチリア人の男たちは、改めて復讐を誓う。折から船遊びに興じるフランス人たちの歌声が聞こえ、プローチダとシチリア人たちは、今夜催される総督の舞踏会に仮面をつけて潜入して復讐を果たす計画を固める。  


第三幕


 第一場 総督の宮殿の居間。彼は一人机に向かって悩んでいる(「そうだ、あの女はわしを心底嫌っていた」)。そして、かつて愛していたシチリア女が死ぬ前に送って来た遺書を胸から取り出す。それには、アリーゴこそ二人の間に生まれた息子であると記されている。
 そこにアリーゴが連行されて来る。アリーゴは亡き母親の手紙を見せられて、自分の出生の秘密に驚き、運命のいたずらに当惑する。総督から自分を父として受け入れるならば名誉も富もすべて与えようと言われるが、アリーゴは父の手を振り切って走り去る。
 第二場 総督の宮殿の豪華な大広間。バレエ「四季」の上演に続いて(省略されることが多い)、仮面舞踏会となる。紛れ込んで来たエレナとプローチダは、アリーゴに今夜の総督暗殺計画を打ち明け、仲間の印の青いリボンを胸につける。アリーゴは今では父とわかった総督に危険だから立ち去るよう懇願するが、総督は聞き入れず、アリーゴの青いリボンを引きちぎる。
 この時エレナとプローチダが短剣を抜いて総督に襲いかかるが、とっさにアリーゴはその前に立ちはだかり、暗殺者たちは逮捕される。シチリア人たちはアリーゴの裏切りに激怒するが、運命と祖国愛の間に心が揺れるアリーゴは、父の胸の中に崩れ落ちる。


第四幕


 砦の中庭。アリーゴは一人悩みと苦しみを告白する(「涙の日、重い苦悩の日よ!」)。牢から連行されて来たエレナは、裏切ったアリーゴに激しい怒りをぶつけるが、彼が総督の息子であったと知らされると、彼の呪われた宿命に同情し(「アリーゴよ、ああ、心に語れ」)、改めて二人の愛を確かめる。
 次いで連行されて来たプローチダは、アラゴンの救援船が来ていることをそっとエレナに告げる。総督が現れ、反逆者たちを早く処刑するよう促すので、アリーゴはエレナとプローチダの命請いをする。総督は自分を父上と呼ぶなら彼らを許そうと言う。やがて処刑の時も迫り、アリーゴはたまらず「父上」と呼ぶ。総督は処刑を中止し、アリーゴとエレナとの結婚も許す。


第五幕


 総督の宮殿の庭。人々がアリーゴとエレナの結婚式を祝い、娘たちはエレナに花束を捧げる。エレナはそれに応えてボレロを歌う(「ありがとう、愛する友よ」)。アリーゴとエレナは愛を誓って宮殿に入ると、プローチダが現れてエレナに近づき、婚礼の晩鐘を合図にシチリア人は一斉に決起してフランス人たちを虐殺すると告げる。エレナは苦悩の末、アリーゴに結婚断念を告げるが、アリーゴが裏切りを怒る。そこに総督が現れ、強引に二人を結び合わせる。それを見たプローチダの合図で宮殿の鐘が一斉に鳴り出す。武器を手にしたシチリア人が宮殿になだれ込んで、フランス人たちを虐殺する。



Reference Materials


初演

1855年6月13日 パリ・オペラ座 

台本 
ウージェーヌ・スクリーヴ、シャルル・デュヴェイリェ/フランス語(イタリア語改訂版訳はE・カイミ)

演奏時間 
第1幕34分、第2幕35分、第3幕63分、第4幕68分、第5幕68分(ムーティ盤CDによる)

参考CD
● ステューダー、メリット、ザンカナーロ/ムーティ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●アーロヨ、ドミンゴ、ミルンズ/レヴァイン指揮/ニュー・フィルハーモニア管、ジョン・オールディス唱(RCA)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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