ルイザ・ミラー[全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Luisa Miller 1849
ルイザ・ミラー[全3幕]ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

ルイザ・ミラー(S) カルロ(ワルター伯爵の息子ロドルフォ)(T) ルイザの父ミラー(Br)  フェデリカ(A) ワルター伯爵(B) ウルム(B) ラウラ(Ms)他

❖概説❖

 ヴェルディ15作目のオペラであるが、物語は一般市民を主人公にしているだけに、従来の愛国的な作風とは一線を画している。したがって音楽も平明で、抒情的な美しさを持っている。初演は華々しい成功を収めた。

第一幕「愛」


 第一場 チロル地方の村にあるミラーの家の前の広場。村人たちが集まってルイザの誕生日を祝っているが、ルイザは恋人カルロがまだ来ないのを気にしている。父親ミラーは彼の素姓が知れないと心配するが、ルイザはカルロと出会った時のことを歌っている(「彼をひと目見たとき胸はときめき」)。そこにカルロがやって来る。二人は愛の二重唱を歌ってから皆で教会に向かう。
 ミラーが一人になったところに領主ワルター伯爵の秘書ウルムが現れ、昔ルイザを嫁にくれると言った約束の履行を迫るが、ミラーは夫を選ぶのは娘の自由意思にまかせる他はないと答える(「どちらを選ぶかは全く自由だ」)。するとウルムは、ルイザの恋人カルロは実は伯爵の息子ロドルフォだと告げるので、ミラーは心配が現実になったと驚く。
 第二場 ワルター伯爵の城の一室。ウルムは伯爵に、若殿が村娘と恋仲になったと告げ口する。伯爵は血統を守らねばならないと息子の恋愛を嘆き(「わが家の血統を守るためには」)、現れたロドルフォに、公爵未亡人フェデリカとの結婚を命じる。
 ロドルフォが地位や名誉はいらないと言おうとするうちにフェデリカが到着し、さっそく引き会わされる。ロドルフォはフェデリカと二人だけになると、彼女の寛大さに期待して恋人がいると打ち明ける。しかし心を傷つけられたフェデリカは激しい嫉妬に狂い、自分の胸を刺すようロドルフォに迫る。
 第三場 ミラーの家の中。ルイザがカルロを待っている。父親が入って来て、お前の恋人は実は伯爵の息子ロドルフォだと明かし、今日立派な結婚式を挙げようとしていると教え、お前がもてあそばれたので復讐してやると言う。
 そこにロドルフォがやって来て、ルイザに対する変わらぬ愛を誓う。そして、もし父が二人の仲を許さなければ、自分だけが知っている父の秘密で脅かす他はないと言う。その時息子を取り返しに伯爵が現れ、怒ったミラー父娘の逮捕を部下に命じる。するとロドルフォは伯爵の耳元で、どうして伯爵になれたかの悪業を暴くと言うので、驚いた伯爵はルイザだけを釈放する。


第二幕「奸計」


 第一場 ミラーの家の中。村人たちがルイザのところにやって来て、捕らわれたミラーが残虐に扱われている様子を知らせる。ウルムが現れて村人たちを帰す。
 そしてルイザに対して、もし彼女が本当に愛した人はウルムであってロドルフォではないと言うこと、また「ロドルフォの怒りを避けるため一緒に逃げて下さい」という自分宛の手紙を書いて伯爵に見せるならば、ミラーは許されるだろうと言う。ルイザは苦悩するが(「むごいことよ、ああ神様」)、父のためならと泣く泣くウルムの言う通りに手紙を書き終えると、この手紙は自発的に書いたことを城で証言するようウルムに誓わされる。
 第二場 ワルター伯爵の城の一室。ウルムは伯爵にすべて首尾よく行って、ルイザの手紙もロドルフォに届けたと報告する。二人は先代の伯爵を暗殺したことをロドルフォが知っているのに恐れおののき、もしも発覚した時にはともに死刑台に行こうと誓い合う。
 そこにフェデリカが現れるので、伯爵はロドルフォの恋狂いはもう終わったと彼女に言う。その証拠にとルイザを呼び寄せて、ウルムを愛していると心にもないことを告白させるので、フェデリカは喜ぶ。
 第三場 城内の中庭。一人の農夫が、ウルム宛に書いたルイザの手紙をロドルフォに渡す。それが謀略だと知らないロドルフォは、ルイザが裏切ったと思って苦悩し(「穏やかな夜には」)、ウルムを呼びつけて彼に決闘を申し込む。怖くなったウルムは空砲を打って逃げ出す。ロドルフォは騒ぎを聞いて駆けつけた伯爵に対して、ルイザに裏切られたと告げると、伯爵はそれならフェデリカと結婚して彼女を見返すよう諭す。


第三幕「毒薬」


 ミラーの家の一室。友人ラウラや村娘たちがルイザを慰めているところに、釈放されたミラーが帰って来る。彼は娘が死を決意しているのを知るが、父娘で悲しい運命を嘆き、明日の早朝二人で町を出て行くことを決心する。
 ミラーが立ち去り、ルイザが一人祈っているところにロドルフォがそっと入って来て、コップに毒薬を注ぐ。ロドルフォは、例の手紙は本当にルイザが書いたのかと問うと、ルイザが苦しそうに肯定するので、絶望した彼は毒薬の入った水を飲み、ルイザにも飲ませる。
 ロドルフォは水に毒が入っていると明かすと、死を悟ったルイザはすべてのかせを解かれて真実を打ち明ける。ロドルフォは早まったことをしたと後悔して運命を呪う。
 そこに物音を聞きつけたミラーが現れ、毒が回って瀕死の状態の二人を見つけて驚くが、ルイザは父に別れの言葉を告げて息を引き取る。やがて村人たちとともに伯爵とウルムが駆けつける。ロドルフォは最後の力を振りしぼってウルムを刺し殺し、父に向かって、あなたの罪だと言ってルイザの傍らに倒れて息絶える。




Reference Materials


初演

1849年12月8日 ナポリ・サンカルロ劇場

原作
フリードリヒ・シラー/「たくらみと恋」

台本
サルヴァトーレ・カンマラーノ/イタリア語

演奏時間 
第1幕58分、第2幕47分、第3幕41分(レヴァイン盤CDによる)

参考CD
●リッチャレッリ、オブラスツォワ、ドミンゴ、ブルゾン/マゼール指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(DG)
●ミッロ、クィヴァー、ドミンゴ、チェルノフ/レヴァイン指揮/メトロポリタン歌劇場管・唱(SONY)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  





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