アッティラ[プロローグと全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Attila 1846
アッティラ[プロローグと全3幕] ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

アッティラ(B) エツィオ(Br) オダベッラ(S) フォレスト(T)  ウルディーノ(T) レオーネ(B)

❖概説❖

 ヴェルディ九作目のオペラに当たる「アッティラ」は、愛国者としてのヴェルディの本領が発揮された作品で、初演の演奏途中から満場の聴衆を熱狂させる大成功を収めた。同時に次作「マクベス」で大きく示されることになった内面的な表現力も随所に見い出すことができる。


プロローグ


 第一場 アクイレイアの広場。アッティラを王とするフン族の兵士はアクイレイアの町を征服して壊滅、掠奪を図り、さらにローマを狙おうと気勢をあげている。広場を埋めつくしたフン族の兵士たちの歓呼の中にアッティラが現れ、兵士たちの勇猛さをたたえる。そこに奴隷のウルディーノがアクイレイアの娘たちを捕らえて献上する。アッティラは彼女たちが女戦士として戦ったと聞いて、その理由を尋ねる。アクイレイアの領主の娘オダベッラが、それは祖国愛のためだと答えるので(「強者どもが獅子のように」)、感動したアッティラは娘たちを釈放し、オダベッラには王自身の剣を与える。彼女はその剣で復讐を誓い、他の娘たちと立ち去る。
 そこにローマの将軍エツィオが、使節として現れる。彼はアッティラの世界制覇を認める代わりにイタリアは自分の手に委ねて欲しいと申し入れるが、アッティラはこの提案を拒否し、エツィオは憤然として立ち去る。
 第二場 アドリア海の干潟の中の湿地帯。激しい嵐の中で修行者たちが祈りを捧げている。そこに戦乱を逃れたアクイレイアの人々が騎士フォレストに率いられて到着する。フォレストはここに留まって反撃の時を待とうと言い、敵の手に落ちた恋人オダベッラに想いを駈せる(「あの人は野蛮人の手に」)。

第一幕


 第一場 アッティラの陣営のそばの森の中。月夜、捕らわれの身のオダベッラは死んだ父と恋人フォレストを想っていると(「おお、飛び行く雲の中に」)、異邦人に変装したフォレストが現れ、アッティラの愛人になったと彼女をなじる。彼女の真剣な弁解に誤解も解け、二人は復讐の誓いに激しく抱擁する。
 第二場 アッティラの天幕。悪夢にうなされたアッティラは、傍らのウルディーノに不吉な夢の中のできごとを語る(「ローマの前で私の魂が」)。
 それによると、ローマに攻め入ろうとした時に一人の老人が現れて、「お前は人間に対してだけ鞭打ち、神の土地には入れない」と命令されたと言い、恐れおののく。しかしアッティラはただちに気を取り直すと、進軍を命令し、戦いのラッパを吹けと叫ぶ。
 第三場 アッティラの陣営。アッティラの兵士たちが出陣しようとした時、白衣の老人レオーネに引き連れられた女と子供たちの行列が進んで来る。レオーネは先ほどの夢の中と同じ言葉をアッティラに告げるので、アッティラは思わずその場にひざまずき、人々は神の力を讃美する。


第二幕


 第一場 エツィオの陣営。「フン族と休戦協定を結んだので撤収するように」との皇帝の命令を受けたエツィオは憤慨する(「永遠の栄光の頂から」)。アッティラの奴隷たちが使いとして現れ、エツィオをアッティラの陣営に招待したいと伝える。彼らが去ると、奴隷に扮して紛れていたフォレスト一人が残り、エツィオにアッティラ暗殺計画を打ち明けて立ち去る。エツィオは復讐の決意を勇壮に歌う(「わが運命の賽は投げられた」)。
 第二場 アッティラの陣営。盛大な祝宴が開かれている。エツィオはアッティラに丁重に迎えられて宴会の席に着く。神官たちがアッティラに近づいて、異邦人と同席するのは危険だと忠告するが、アッティラは気にかけない。巫女たちが美しい合唱をしていると、突如激しい風が吹いて灯火が消えてしまうので、人々は恐怖におののく。やがて風が静まり、アッティラは祝宴の再開を命じる。そして盃を飲み干そうとした時、オダベッラがその盃には毒が盛られていると叫ぶ。フォレストが犯人は自分だと名乗り出るので、アッティラは剣を抜いて彼を殺そうとするが、フォレストの毅然たる態度にどうしても手を下せない。するとオダベッラが、自分に彼を処刑させて欲しいと申し出る。彼女の勇気ある行動を喜んだアッティラは、褒美としてフォレストを彼女に与え、彼女を王妃に迎えると宣言する。


第三幕 


 アッティラの陣営のそばの森の中。オダベッラが自分を裏切ったと思っているフォレストはウルディーノに、ローマ軍の陣営に走って行ってアッティラの軍を急襲するよう伝言を頼む。フォレストは一人オダベッラの不実を怒る(「哀れな男がオダベッラに」)。
 エツィオがやって来て、フォレストに早く決起するよう詰め寄る。そこに婚礼衣裳を着けたオダベッラがアッティラの陣営から逃げ出して来て、フォレストへの変わらぬ愛を訴えるので、苛立つエツィオと言い合っている。
 その時、オダベッラを連れ戻そうとアッティラが現れて、エツィオとフォレストを罵る。舞台裏からアッティラの陣営を攻めるローマ軍のときの声が聞こえる。するとオダベッラは王妃の冠を投げ捨て、持っていた短剣でアッティラを刺す。



Reference Materials


初演

1846年3月17日 ヴェネツィア・フェニーチェ座

原作
ツァハリアス・ヴェルナー/「フン族の王アッティラ」

台本
テミストークレ・ソレーラ、フランチェスコ・マリア・ピアーヴェ/イタリア語

演奏時間 
プロローグ35分、第1幕31分、第2幕22分、第3幕16分(ガルデッリ盤CDによる)

参考CD
●ドイテコム、ベルゴンツィ、ミルンズ、ライモンディ/ガルデッリ指揮/ロイヤル・フィル、アンブロジアン・オペラ唱(D)
● ステューダー、シコフ、ザンカナーロ、レイミー/ムーティ指揮/ミラノ・スカラ座管・唱(EMI)
●テオドッシュウ、ヴェントレ、フルラネット/レンゼッティ指揮/トリエステ・ヴェルディ歌劇場管・唱(Dyn)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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