ジョヴァンナ・ダルコ(ジャンヌ・ダルク) [プロローグと全3幕]ヴェルディ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イタリアオペラ

G. F. Verdi, Giovanna d’Arco 1845
ジョヴァンナ・ダルコ(ジャンヌ・ダルク)[プロローグと全3幕]ヴェルディ作曲

 
❖登場人物❖

カルロ七世(T) ジャコモ(Br) ジョヴァンナ(S) デリル(T) タルボ(B)


❖概説❖
 この作品はヴェルディのオペラの中で必ずしも成功作とは言えないにしても、ジャンヌ・ダルクの愛国的な物語は当時のイタリア独立運動と呼応して一般の支持が高く、シーズン中に十七回も続演された。 原作はシラーの戯曲であるが、オペラでは改編整理されるとともに、登場人物の名前も変更されている。

プロローグ


 第一場 ドムレミイの村。民衆やフランス人の兵士たちがイギリス軍の侵略におののき、オルレアンの戦況について心配している。フランス国王カルロ七世が姿を現し、士官デリルにオルレアンに赴いてこれ以上の流血を防ぐように命じる。 人々が気弱な国王を元気づけると、感動した国王はデリルを連れて森の聖母マリアに祈ろうとする。人々は恐ろしい森に入るのを制止しようとするが、国王は神のお告げがあったと言って森に入って行く。
 第二場 森の中。近くの教会の鐘の音が聞こえる。羊飼いのジャコモは、娘ジョヴァンナが毎夜聖母マリアに祈りを捧げに来るのを心配して洞穴の中から様子を眺めている。 そこにジョヴァンナが現れ、祖国を救うために聖母マリアに祈り、歌い終わると眠りに落ちる(「剣と兜を授けたまえ」)。国王がやって来て、剣と兜を置いて聖母マリアに祈る。悪魔と天使の合唱が聞こえると、突如ジョヴァンナが目を覚まし、望んでいた剣と兜を取って、国王に「今こそフランスを救うために闘うべき時が来た」と叫んでともに戦場に赴く。その一部始終を見ていたジャコモは、驚きのあまり気を失う。


第一幕


 第一場 フランス北東部のランスの町を望む岩山。オルレアンの戦いに敗走したイギリス兵たちが意気消沈して帰国を望み(合唱「家へ、故郷へ」)、ジョヴァンナの悪魔的な働きが信じられないでいる。そこに「私はフランス人」といってジャコモが現れて、娘をイギリス軍に売り渡そうと申し出る。
 第二場 ランスの宮廷の庭。国王の戴冠式を目前に控えている。イギリス軍を撃破したジョヴァンナは、神の使命を果たしたので故郷に帰って平凡な娘に戻りたいと願う(「おお予言の森よ」)。しかし国王は彼女に対する秘めていた愛を告白して抱きしめる。ジョヴァンナもそれを受け入れようとしたところ天の声が聞こえ、彼女に身を引くよう警告する。
 そこに現れたデリルたちがジョヴァンナに軍旗を渡し、二人に早く戴冠式に出席するように促す。悩むジョヴァンナの耳に再び「おれたちの勝利だ」という悪魔たちの声が聞こえる。


第二幕


 ランスの広場。凱旋の大行進とともに広場を埋め尽くした人々は、イギリス軍を破ったジョヴァンナをたたえている。軍旗を掲げた国王たちが教会に入ると、ジャコモが一人で現われ、娘が悪魔に魂を売ったと思い込んで「老人の希望は娘だけだったのに」と嘆く。
 戴冠式が終わって、国王たちが教会から出て来る。身を引いて立ち去ろうとするジョヴァンナを国王が引き止めようとした時、一行の前にジャコモが進み出て、娘は魂を悪魔に売り渡した魔女だと叫ぶが、彼女は抗弁しようとはしない。人々は雷鳴の轟きに驚き、それに恐れおののいた人々は一転して「悪魔よ、立ち去れ」と叫ぶ。国王も残酷な人々の心移りを呪い、人々の前で抗し得ない自分の無力さを嘆く。


第三幕


 イギリス軍の要塞の内部。望楼の上から戦場が見渡せる。歩哨たちはフランス軍が攻めて来たことを知らせる。フランスの民衆から見放されたジョヴァンナはイギリス軍に捕らわれて鎖につながれ、傍らに火刑台の十字架が架けられている。彼女は再びフランス軍とともにイギリス軍と戦いたいと天に願い、酷い運命を嘆いている(「サウルが捕らわれた時に鎖を砕かれた神よ、私の鎖も砕きたまえ」)。そこにこっそりと忍び込んで来たジャコモは、彼女の純粋に国を憂う真情を知って鎖を解いてやる。ジョヴァンナは父の剣を抜き取ると戦場へ駆けつける。
 ジャコモは望楼から娘が白馬にまたがって勇敢に戦う姿を見て喜びの声をあげる。やがて不利だったフランス軍が形勢を逆転して要塞に凱旋して来る。国王が現れて、かつて群集の怒りから彼女を救い出せなかったことを悔い、ジャコモの前非を赦す。
 そこにデリルが入って来て、敵を殲滅させたがジョヴァンナは戦場で倒れたことが伝えられ、重苦しい行進曲に乗って彼女が運ばれて来る。瀕死の彼女は、自分は決して魔女ではないと述べ、聖母マリアの招きによって天国に行くと言う。天使たちの喜びの声と悪魔の敗北の声が聞こえ、ジョヴァンナは息を引き取る。






Reference Materials


初演

1845年2月15日 ミラノ・スカラ座

原作
フリードリヒ・シラー/戯曲「オルレアンの少女」

台本
テミストークレ・ソレーラ/イタリア語

演奏時間 
プロローグ40分、第1幕31分、第2幕23分、第3幕26分(レヴァイン盤CDによる)

参考CD
●ドミンゴ、ミルンズ、カバリエ/レヴァイン指揮/ロンドン響、アンブロジアン・オペラ唱(EMI)

参考DVD
● ラ・スコラ、ブルゾン、ダン/シャイー指揮/ボローニャ市立劇場管・唱(W)


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  




◀︎◀︎◀︎ 二人のフォスカリ        アッティラ ▶︎▶︎▶︎

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