オルフェオとエウリディーチェ[全3幕] グルック作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ドイツオペラ

C. W. Gluck, Orfeo ed Euridice 1762

オルフェオとエウリディーチェ[全3幕]グルック作曲

 
❖登場人物❖

オルフェオ(MsAC-T、T) エウリディーチェ(S) アモーレ(S)

❖概説❖
 オペラ改革論者としてのグルックが自らの理論を実践した作品であり、その豊かな表現力は現代のオペラハウスで一般的なレパートリーとして上演される最古の作品ということができる。当初は二幕版だったが、1764年に三幕に改訂された。

 1774年パリ・オペラ座上演に際して、ピエール・ルイーズ・モリーヌによりフランス語の台本に書き直され、多くのバレエ曲等が追加され(フルート曲で有名な「精霊の踊り」もそのひとつ)、オルフェオ役がテノールに変更された。
 なお、このオルフェオ役ははじめカストラート(去勢された男声歌手)の役だったが、現在ではアルトまたはメゾ・ソプラノが歌うのが普通で、近年はカウンター・テノールが歌う試みもある。


第一幕


 美しい森の中にある糸杉と月桂樹に囲まれたエウリディーチェの墓の前。蛇にかまれて最愛の妻を亡くした歌と竪琴の名手オルフェオが墓の前で泣き伏し、エウリディーチェの名前を三度呼ぶ。羊飼いやニンフたちも墓を花輪で飾って、彼女の死を悼(いた)んで立ち去る。

 一人になったオルフェオは永遠に妻を失った悲しみを歌い(「愛しい人を呼んでも」)、妻を返してくれるなら恐ろしい洞穴の中にでも入って行く覚悟だと神に訴える。

 すると愛の女神アモーレが現れて、「ジュピター大神がお前に同情して、生身のまま三途(さんず)の川を渡るのをお許しになった。お前の歌と竪琴で復讐(ふくしゅう)の女神や妖怪や怨霊たちを感動させることができるならば、エウリディーチェを取り戻せるだろう」と告げる。

 どんな試練にも耐えると力強く答えるオルフェオに対して、アモーレは、彼女をこの世に連れ戻すまでは絶対に振り返って彼女の顔を見てはならないし、この重大な禁制の理由を彼女に教えてはならない、そしてもしこの禁を破ればお前は永久に彼女を失うだろうと告げる(「見たくとも我慢するのだ」)。

 オルフェオは掟(おきて)に従ってエウリディーチェを取り戻すと決意を述べる。



第二幕


 第一場 身の毛もよだつような冥界(めいかい)の川とその奥の冥府(めいふ)の入口。不気味な踊りを踊っている復讐の女神や怨霊たちは、竪琴を弾きながらオルフェオがやって来るのを見て、彼の周りを囲んでいっそう踊り狂い、冥府の番犬の餌食にしてしまえと脅す。

 しかしオルフェオがかき鳴らす竪琴の美しい音色と、彼の懸命な願いに怨霊たちも同情を示し始め(「お願いだ!私を憐れみたまえ」)、とうとう彼の願いを聞き入れて冥府へ入ることを許して立ち去る。

第二場 天国の野原。精霊たちが踊っている。冥府に入ったオルフェオはその美しい自然に感動する(「何と澄みきった空」)。オルフェオがエウリディーチェを探していると、精霊たちが彼女を連れて来る。彼は妻の手をしっかりと握り、掟に従ってその姿を見ないようにして地上へと向かう。



第三幕


 第一場 森の中の暗い洞穴。オルフェオはエウリディーチェの手を引いて地上へ急ぎながら、もうすぐ太陽が見られる生活に戻れると喜び合う。ところがやがてエウリディーチェは、夫が自分を少しも見ようとしないし、抱いたりしてくれないのを不満に思う。

 オルフェオは、今は時間がないから黙ってついて来るように言うが、エウリディーチェは秘密を隠しておくのは裏切りだと言い(「何とつらいこの瞬間」)、岩の上に倒れるように腰を下ろしてしまうので、たまらなくなったオルフェオは妻の方を振り向く。するとエウリディーチェは急に力が抜けて息絶える。

 オルフェオは後悔にくれ(「われエウリディーチェを失えり」)、希望を失ったと嘆いて自殺しようとするが、その時アモーレが現れ、「お前の誠実さを認めてエウリディーチェを返してあげよう」と言う。エウリディーチェは息を吹き返して起き上がり、二人はしっかりと抱き合う。

 第二場 愛の女神アモーレの神殿。オルフェオとエウリディーチェの帰還を祝って、羊飼いたちが踊っている。そして全員でアモーレをたたえる。

 




Reference Materials


初演
1762
10月5日 ブルク劇場(ウィーン)

原作
ギリシャ神話

台本
ラニエリ・カルツァビージ/イタリア語
ピエール・ルイーズ・モリーヌ/フランス語

演奏時間
第1幕30分、第2幕38分、第3幕39
(ラニクルズ盤CDによる)

参考CD
●レイギン、マクネアー、シーデン/ガーディナー指揮/イギリス・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ唱(PH
ラーモア、ハグリー、アップショウ/ラニクルズ指揮/サンフランシスコ・オペラ管・唱(T

参考DVD
●コヴァルスキー、ウェブスター、バッド/ヘンヒェン指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(Art


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  






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