横山幸雄ピアノQ&A136 から  Q21 受験校の先生にレッスンしてもらったほうが有利?

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Q21. 一年後に音楽大学受験を控えています。今師事している先生は、自分の希望する大学とは異なる音大出身なのですが、先日、知り合いから「受験校の先生につかないとダメだよ」と言われました。


 試験やコンクールなどで演奏に優劣をつけること自体、そもそも非常に厳しく微妙な問題をはらんでいる。それを前提に話をしても、点数をつける側からしてみれば、どんなに冷静に客観的に点数をつけようと思っても、自分のかわいがっている生徒なのか、それともまったく見ず知らずの人なのかによって、まったく同じにはならないかもしれない。

 コンクールによっては自分の弟子には点数をつけないものもあるが、かえって審査員の間では誰の弟子なのかわかってしまう場合もあるので、コンクール期間中ずっと顔を突き合わせなければならない審査員同士で気まずい思いをしないですむようにするために点数が甘くなっても仕方ない。また、例えばパリ音楽院の入学試験では、パリ音楽院自体で教えている先生は試験官にならず外部の先生が審査する。だが、それによって一種の公平性は保てたとしても、果たして結果に責任がとれるのかと言われれば、疑問のような気もする。

「完全な理想はない」という現状で考えたときに、「受験生の先生にレッスンしてもらったほうが有利かどうか」という質問に戻ると、最終的にはあまり関係のないことなのではないだろうか。

 自分がつきたい先生がその大学にいるのであれば、その先生のところにレッスンに行くのは、もちろん悪いことではないだろう。その先生にたまたまついたから合格した、あるいはつかなかったから合格しなかったというようなことも、もしかしたら起こりうるのかもしれない。しかし、もしそうだとしても、あまりそういうことは意識せずに、自分がつきたい先生について勉強することの方を優先させるべきだと思う。

 受験校の先生だからといっても、その先生と相性が合わなければ、自由な表現ができなかったり、それまでの奏法を変えなければならないこともあるだろう。またそれば続けば、ピアノを弾くのがイヤになってしまうという最悪のケースに陥る恐れもある。入学試験というのは確かに重要ではなるが、一生音楽を続けていこうとするならば、一つの通過点にすぎない。あまり目先のことにとらわれず、将来にわたって長い目で考えてみたらどうであろうか。


「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 2 学ぶ・教える」

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