横山幸雄ピアノQ&A 136 から Q5 小さい子どもを演奏会に連れて行くときに……

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先日出かけたコンサートのことです。小さな子どもが隣の席で落ち着かない様子で演奏を聴いていましたが、次第に立ったり座ったりを繰り返し、あげくの果てにコンピューターゲームを取り出して遊び始めたのです。一緒にいる母親は音楽に酔いしれて注意しないし、周囲の人々も顔をしかめるだけです。私にも小さい子どもがおり、そのうち演奏会に連れていきたいと思っているのですが、母親が教えるべきことは何でしょう。

 

 コンサートに来るのは、音楽を聴くためである。それを妨害するような行為を自分の子どもがしていても平然としていられるとはすごい神経だ。以前に比べて「小さな子どもを持つ親でも気軽にコンサートに足を運べるように」と託児室を設けたコンサートも増えている。また、未就学児童に入場を認めないコンサートも多いが、もちろんこれは目安であって他人に迷惑をかけないのであれば、なるべく小さい頃からいい音楽に触れてほしいと僕は思う。しかし逆に、その年齢に達していても聴く気がないのであれば、かえって苦痛であろう。

 そもそも会場を走り回ったりする子どもは、きっと家庭の中に音楽を聴く雰囲気がないのであろう。突然コンサート会場に来て、「そこで静かに聴け」というほうが無理だ。コンサートに子どもを連れてくるのは、子どもの教育のことも考えてのことだと思う。だが、来場する前に家でも集中して音楽を楽しむことができるか、ということを見極めてほしい。

 そうでないとこの質問の中のようになる可能性がある。そして、もしこのような非常識な客が混ざってしまった場合、注意したり、最悪の場合は退場してもらう責任は主催者にある。日本では他人に文句を言ったり、叱ったりする習慣があまりないようだが、そのような会場の異変に気を配るのも主催者の役目だ。

 なにも息を殺して身動きひとつせずに聴け、などとは言わない。いい雰囲気で演奏できたほうが演奏者だってうれしい。

 また、ピアノを習う子どもがいやいやながらになってしまうのも、家庭内の音楽的環境の影響もあるのではないか。テレビを見る時間を少し削ってそのぶん音楽を聴くようになれば、いろいろな問題が解決の方向へ向かうのではないか。
 ちなみにこのようなことは時にあるらしく、僕もデビュー間もないころはびっくりしたりもしたが、最近は「そういうこともあるかもしれない」と覚悟は決めているので、動揺して演奏が乱れたりすることはまぁないと思う。ピアニストは精神的にもタフじゃないとやっていけない。


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「横山幸雄ピアノQ&A136 上 part 1 ピアノの楽しみ」より

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