額田女王[プロローグを持つ全4幕]原嘉壽子作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > 額田女王[プロローグを持つ全4幕]原嘉壽子作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オペラ名作217 もくじはこちら

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

K. Hara, Nukadano-okimi 1993~1995

額田女王[プロローグを持つ全4幕]原嘉壽子作曲


登場人物❖

額田女王(S) 中大兄皇子(Br) 大海人皇子(T) 有間皇子(T) 中臣鎌足(Br) 鏡女王(Ms) 女帝(Ms) 他


概説

 女流作曲家として数々のオペラの作曲で多大な成功を収めている原嘉壽子が、浜松市制85周年記念公演として作曲を委嘱されたもので、彼女の13作目のオペラにあたる。ワーグナーに見られるライトモティーフの使用による一貫した音楽の流れが特徴的な作品である。

 

 古代の大化改新に引き続く七世紀の中頃。美しい額田女王に大海人皇子が恋をする。彼女の姉の鏡女王が大和から額田のもとを訪ねて来て、最近中大兄皇子が額田に恋しているので自分に冷淡になったと訴えるので、額田は二人の皇子から愛されているのを知る。

 造営中の飛鳥の岡本宮で、中臣鎌足は中大兄に造都の犠牲に人民の不満が募っても断固事業をやり抜くよう進言する。深夜に岡本宮の一角から不審火が出る。いったんは避難した中大兄は額田が心配で取って返すと、それより先に駆けつけたのは有間皇子だった。再び宮殿から炎が上がり、有間の政権を批判する声を耳にした中大兄は、謀反(むほん)の冤罪(えんざい)を着せて有間を処刑する。

 萩が咲いた造営中の宮城の奥庭で、中大兄は額田に求愛し、一年間の猶予を与える。額田は狂心を装っても処刑された有間の二の舞は踏むまいと決意を述べる。

 それから一年後、新羅に攻め込まれた百済救援に朝鮮半島への出兵が画策され、中大兄は出陣の前にせめて一夜だけの関係を額田に求める。伊予の熱田津では、筑紫に向かう船団が停泊している。斉明天皇の御座船の出陣式では、額田が中大兄の心境の歌を詠むので、大海人は中大兄を妬む。

 それから一年後の筑紫の王宮での観月の宴で、大海人はまだ額田をあきらめきれずに話しかける。宴が終わり、中大兄は彼女に戦に勝った時には国民になり代わって戦勝の喜びを詠ってほしいと言うので、額田は中大兄に心を惹かれる。

 さらに一年が経った夏の夜。中大兄は有間皇子や孝徳天皇の亡霊を見て寝つけない。額田は中大兄に、それは新羅との戦争に負けた知らせだろうと言う。朝鮮出兵の辛酸をなめてから四年が経ち、ようやく民意も回復するが、今度は近江遷都でまた人民を苦しめる。

 額田は天皇になる中大兄との関係を清算し、巫女として大和を去る決意を固め、最後の別れを交わす。宮中の人々は、隊列を組んで近江に向かう。

Reference Materials



初演
1996
年9月8日 アクトシティ浜松

原作
井上靖の同名小説

台本
原 嘉壽子/日本語

演奏時間
140
分(アクトシティ浜松初演時)

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ 祝い歌が流れる夜に        忠臣蔵 ▶▶▶︎


オペラ名作217 もくじはこちら



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE