祝い歌が流れる夜に[プロローグと全2幕]原嘉壽子作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

K. Hara, Iwaiutaga nagareruyoruni 1982

祝い歌が流れる夜に[プロローグと全2幕]原嘉壽子作曲


登場人物❖

しま(S) 金沢公一郎(Br) その妻・艶子(Ms) 長男・謙一(Br) その妻・雅江(Ms) 長女・みどり(S) その婚約者・中川義男(T) しまの息子・博(T) 他


概説

 原嘉壽子のオペラは、内外の多彩な原作から選ばれている。これは一九七二年にNHKの長時間テレビ・ドラマのために書き下ろされた物語を基に、プロローグを持つ二幕のオペラとしてまとめられた。

 

 第二次大戦後三十年ほど経った時代。関西の事業家金沢家では、長女みどりと中川義男との結納が行われている。当主の金沢公一郎は仲人に感謝し、義男にはみどりの将来をよろしくと頼む。長男謙一は広縁で煙草に火をつけようとした時、庭の植え込みで怪しい人の気配を感じて不安を覚える。みどりは所詮政略結婚だと割り切っている。

 謙一の妻雅江は、夫がストライキの時に労務担当役員を押しつけられて子会社に追いやられたことを嘆き、義男を後継者に仕立てようとする義父と芸者上がりの義継母艶子を非難する。謙一は亡き母を懐かしむが、雅江はその死因について疑念を持っている。突然裏口に、昔女中だったしまが訪ねて来る。

 艶子は彼女が結婚祝いに駆けつけたものと思い込んで広間に導く。みどりはしまに、昔聴かせてもらったインドネシア民謡を歌うよう所望する。金沢は昔の大戦末期の南の島での忌まわしい記憶が蘇る。

 金沢はしまが誰であるか思い出し、薄暗い蔵屋敷に連れ出して真意を探り出そうとする。そのやり取りを立ち聞きしたみどりは、兄謙一としまの過去の秘密を知って衝撃を受ける。動揺したみどりが部屋に戻ると、若い男が飛び出して来て掌で彼女の口を押さえつける。みどりは博と称するその男の言いなりになる。謙一はしまと結婚できなかったことを彼女に詫びるが、二人の愛憎に満ちた過去の話を聞いていた雅江は、二人を侮辱と憎悪の目で見つめる。

 みどりが若い男と腕を組んで広間に現れ、ボーイフレンドとして博を紹介する。博の目的を察した金沢がお金で済ませようとした時、義男が飛び込んで来て博を縛り上げる。博は銀行強盗だと言うが、みどりは彼を逃してしまう。警官とともに皆が戻って来るが、みどりはすべて嘘だったと告白し、義男を自室に呼ぶ。

 蔵屋敷では、しまが博は謙一の実子であると告白し、雅江は謙一がそれを隠していたことを非難する。雅江はしまと博を引き取るよう謙一に言って家を出て行く。残されたしまは謙一に過去の回想を語り、彼は彼女の人生を踏みにじったことを詫びる。最後に女中が現れて銀行強盗が射殺されたと報告し、しまと謙一は茫然自失する。

Reference Materials



初演
1984
10月5日 池袋サンシャイン劇場(東京)

原作
菊村到の同名のテレビ・ドラマ

台本
原嘉壽子/日本語

演奏時間
135

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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