光[全4幕]一柳 慧作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

T. Ichiyanagi, Hikari 1999~2002

[全4幕]一柳 慧作曲


登場人物❖

ミツダ(Br) ホアン(S) イシダ(Br) 老女(S) 老人(T) 医師(T) 局長(Br) 他


概説

 一柳慧にとって二作目のグランド・オペラであり、新国立歌劇場の委嘱によって作曲された。

 人間のドラマよりも宇宙飛行士を通して抽象的な光をテーマに扱い、音楽的にはポリフォニックな手法も取り入れられている。部分的に台詞劇もある。

 

 東京の多摩市近郊にある精神病院には、月面から帰国後、記憶喪失症になった元宇宙飛行士ミツダが入院している。訪れて来るのは宇宙資源開発局のイシダ課長だけである。ミツダが夕陽を眺め、中国人の看護師ホアンは生い立ちを独白する。

 局長とイシダはミツダの処遇を話し合う。局長は、今の時代に宇宙飛行士が記憶喪失になるとは理解できない。

 ミツダはホアンに付き添われて外出する。多摩センター駅前のパルテノン風建物の階段の上に来ると、ミツダは何かを決心するが、それが何かは自分でもわからない。イシダがミツダを見舞うと、彼は父親が死んだ時の崖から落下した夢を最近よく見ると言う。

 ミツダは一人病院を抜け出して逃亡する。ミツダが頭の片隅にある一○三号室という記憶だけを頼りにあるアパートを訪ねると、住人の女性は事故死していた。あてどもなく都会を歩き回るミツダは、荒れ果てた家に紛れ込み、痴呆気味の老女と話すうちに月面での体験をかすかに思い出す。

 ミツダは満月を見上げ、高層ビルがそびえる都心の公園でホームレスの老人と出会う。一方、一か月以内にミツダを見つけ出すよう局長から命令されたイシダとホアンは、一所懸命にミツダを探している。ホームレスと一緒に暮らすようになったミツダはチンピラに暴行を受け、朦朧(もうろう)とした意識の中で、未知の宇宙空間で体験した闇と光のドラマや、死への恐怖などを思い出す。

 イシダとホアンは段ボールハウスでミツダを見つける。ミツダは局長に「闇は光だった」と報告する。故郷の黄河のほとりに戻ったホアンは変わらない自然を確認し、ミツダは銀色に輝く発射塔のロケットを見ながら光への想いを語る。やがてその二つの影は一つになる。

Reference Materials



初演
2003
年1月17日 新国立劇場(東京)

原作
日野啓三の同名小説

台本
高橋康也/日本語

上演台本
松本重孝

演奏時間
第1・2幕70分、第3・4幕70分(新国立劇場初演時)

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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