天守物語[1幕]水野修孝作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

S. Mizuno,The Tale of Himeji Temple 1977

天守物語[1幕]水野修孝作曲


登場人物❖

天守夫人 富姫(S) 姫川図書之助(Br) 猪苗代国亀の城 亀姫(S) 奥女中 薄(Ms) 朱の盤坊(B−Br) 舌長姥(A)他


概説

 ザルツブルク・テレビオペラ賞に出品するために、NHKの委嘱により制作された。原作の東洋的な美学を生かした幻想豊かな作品として、現在までしばしば舞台で上演されている

 

 播州国姫路の白鷺城の天守には、美貌の妖怪である天守夫人富姫が、天守を護る獅子頭と棲みついている。侍女たちが天守閣の欄干から釣り糸を垂れていると、播磨守の鷹狩を妨害しようと越前国の夜叉が池まで出かけていた富姫が閃光とともに戻って来る。

 富姫の妹分である猪苗代国亀の城亀姫が、雲に乗って遊びに来る。彼女は手土産に、播磨守とは兄弟の亀の城主の首を持っている。やがて播磨守の一行が鷹狩から引き揚げて来る。亀姫が播磨守の秘蔵の鷹を褒めるので、富姫は土産の返礼に魔法で白羽の鷹を奪って亀姫に与える。播磨守の家臣は鷹が天守に逃げたと思って矢や鉄砲を放つが、何の効果もない。

 亀姫の一行は帰路につく。自慢の鷹を失った播磨守は、罰として鷹匠の姫川図書之助に、百年来足を踏み入れたことのない天守の様子を見届けて来るよう命じる。

 富姫が一人物思いに沈んでいると、凛々しい図書之助が階段を登って来る。富姫は彼が天守に登って来た事情を知ると、彼の勇気と正直さに心を動かされ、二度と登って来てはならないと言って生きたまま帰す。

 図書之助が再び天守に現れると、妖怪たちの仕業で真っ暗になり、図書之助は降りられなくなる。覚悟を決めた彼に心を動かされた富姫は、天守に留まるよう説得する。だが現世に未練を持つ図書之助を憐んだ富姫は、天守に来た証拠として播磨守代々の家宝の兜を持たせて帰す。

 ところが図書之助は兜を盗んだという濡れ衣を着せられ、武士たちに追われて天守に逃げ込む。彼と富姫は獅子頭の陰に隠れる。武士がその目を槍で突くと、天守に住みつく全員が盲目になる。追っ手が去り、富姫と図書之助は命を断つ決心をする。

 そこに獅子頭を彫った工人の近江丞桃六が現れて獅子頭の目にノミを振るうと、富姫と図書之助の目に光が戻る。

Reference Materials



初演
1977
年7月31日(NHKテレビ)

舞台初演
1979
年3月8日 郵便貯金会館ホール(東京)

原作
泉鏡花の同名小説

台本
金窪周作(補作 まえだ純)

演奏時間
95

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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