絵姿女房[プロローグと全2幕]林 光作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

H. Hayashi, Esugata Nyobo 1960~61

絵姿女房[プロローグと全2幕]林 光作曲


登場人物❖

すい(S) よも(Br) 老爺(Br) 他

概説

 林光の作品は、管弦楽曲、室内楽曲はもとより、多くの声楽曲や多数の映画音楽まで幅広いジャンルにわたっている。オペラについては、オペラシアターこんにゃく座の座付き音楽監督兼作曲家として、多彩な活動を展開した。それらは室内オペラとしての性格が強いが、「絵姿女房」は林光としては珍しいグランド・オペラであり、大阪労音の委嘱により作曲された。

 矢代静一の民話風の戯曲の台詞をほとんどそのままテキストとして用い、方言を生かした日本語の美しさを表現している。

 

 夕映えが美しい田舎道で、貧しい美少女すいと貧しくて若い百姓よもとが出会う。それからちょうど一年が経った頃の同じ場所。二人は夫婦になっている。大樹にはすいの絵姿が立て掛けてあり、よもは首を吊って死のうとしている。その様子を通りかかった老爺(殿様)が眺めている。

 よもは目の不自由な長者の娘と結婚して金持ちになりたいが、根は善良な彼は惚れている女房すいを捨てることができないでいる。すいの絵姿に恋した老爺は、正体を明かしてすいを城に寄こすように言い、応じなければよもを殺すと脅す。よもは困惑しながらも、お金のためにすいを売ろうとする。

 そこにすいがやって来る。純粋なすいは事情がよくわからないまま、よもを死なせないために殿様のもとに奉公することになる。すいはよもに、三年経ったら桃売りになって迎えに来てほしいと約束する。

 三年後の殿様の城内の庭先。大勢の桃売りがやって来る。その中に老爺に扮した殿様が混じっているのをすいは目ざとく見つける。殿様が自分の地位に悩んで、自分自身を苛めていることをすいは見抜いている。彼女はそのような殿様を好きになっているが、同時によもにも幸せになってほしいと思っている。よもが約束通りやって来るが、仕事に失敗した彼はすいを迎えに来たのではなくて、彼女を殿様に売り飛ばして金を手に入れようともくろんでいる。そんなよもの下心を読み取った殿様は、今度は本当にすいを買って彼に金を与えて帰らせる。

 すいはしわくちゃになった自分の絵姿を殿様の懐から取り出すと、それを引き裂く。「すいはすい」と自分の気持ちに素直になって笛を吹きながら城を立ち去る。後に残された殿様が桃をかじりながらモノローグを歌って幕は下りる。

Reference Materials



初演
1961
年5月10日 産経ホール(大阪)

台本
矢代静一の同名戯曲/日本語

演奏時間
不詳

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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