黒塚[1幕]牧野由多可作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

Y. Makino, Kurozuka 1973

黒塚[1幕]牧野由多可作曲


登場人物❖

鬼女(S) 祐慶(Br) 山伏(Br) 能力(T)

概説

 山田耕筰に作曲を師事した牧野由多可は、邦楽器のための現代邦楽のパイオニアとして活躍したが、この作品にも邦楽器が効果的に用いられ、地謡が加わる。ウィーンでの庭園フェスティバルで上演する目的で日本オペラ協会の委嘱で作曲されたが、諸般の事情によりウィーン上演は実現しなかった。

 

 奥州安達が原の秋の夕暮れ。諸国を行脚しながら修業中の那智東光坊の山伏と阿蘭梨祐慶らの一行が通りかかる。一行は自己紹介と行脚の意義などについて語る。あたりは人気(ひとけ)もなく、立ち寄る宿もない寂しい野原なので一行は途方に暮れていると、野なかの一軒のあばら家から灯りが漏れているのが見える。そこを目指してたどり着いてみると、家の中ではうら若い美女が糸繰り車を前に座っていて、年を取っても老いることができない不滅の身であると嘆いている。

 祐慶ら一行が一晩の宿を乞うと、女は一度は断る。しかしたっての願いとあっては、このようなあばら家でも良ければと泊めてもらえることになる。女が扉を開けて、一行は招き入れられる。女は自分の身の上話を始め、やがて泣き出すので祐慶は励まし諭す。女は童心に返ったように陽気な歌声とともに華やいで踊り出すが、堪え切れないように再び泣き沈む。女は今夜は寒いから山へ行き薪を取って来て暖を取って差し上げようと言い、自分が戻るまでは決して閨(ねや)を覗かないように念押しして出かける。

 祐慶と山伏は女との約束を忠実に守って閨を見ないが、好奇心旺盛な能力は、一人閨をこっそり見る。そこには人の死骸が山となっていて、腐敗した血と肉で臭いが満ちているのでびっくり仰天する。能力はそのことを祐慶たちに知らせると、一目散に逃げ出す。残った山伏と祐慶も出発しようと身支度を整え、閨を覗いてみると能力の言う通りなので驚く。そこに雷鳴と稲妻の下、女が鬼女に変身して戻って来る。

 鬼女は二人を一口で喰い殺そうと鉄杖を振りかざして迫って来る。鬼女が襲いかかった時、祐慶たちは数珠をもんで必死に五大明王の功力に訴え祈る。双方の激しいせめぎ合いの結果魔女は祈り伏せられ、苦しみもがいた末に倒れる。魔女は吹き荒れた夜の嵐に紛れて祐慶たちの前から消え失せる。暁の光の中、祐慶たちは立ち去る。

Reference Materials



初演
1974
年2月27日 文京公会堂(東京)

原作
世阿弥の同名の謡曲

台本
飯沢匡(現代語訳)/日本語

演奏時間
70

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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