じょうるり[全3幕]三木稔作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

M. Miki, Joruri 1981~1985

じょうるり[全3幕]三木 稔作曲


登場人物❖

阿波の少掾(B−Br) 与助(Br) 弟子1(T) 弟子2(Br) 弟子3(B−Br) お種(S

概説

 三木稔がセントルイス・オペラ劇場十周年記念のために委嘱された作品で、彼としては三作目のオペラである。当初は近松門左衛門の浄瑠璃が原作として考えられたが、最終的にはオリジナルなストーリーとなった。日本語台本と英語台本の二版がある。

 

 時代物の人形浄瑠璃の興行が終わる。若い人形使いの与助は、座頭である阿波の少掾の妻お種を密かに愛しているが、お種はまだ気づいていない。与助はいつまで隠し通していけるか悩み、新しく彫る人形の頭をお種に似せて作る。三人の弟子たちは、盲目の師匠少掾がいつそれに気がつくだろうかと嘲(あざけ)る。

 お種は窓辺で落葉を眺めて、人生の秋を嘆いている。少掾はお種に琴を弾くように言うが、弾いているうちにお種は琴の上に涙を流す。与助はその涙をすくって、彫っている人形の頭に塗り込める。お種が泣いているのに気づいた少掾は、与助になぜ自分が目を失ったかを話す。それによると、まだ若かった頃、残酷な代官の色欲からお種を救おうとして捕らえられ目を犠牲にしたという。そしてお種は、以後献身的に少掾に仕えているのだった。

 冬になって雪が降ると、お種の心はますます沈む。彼女は内容があまりに現実的な浄瑠璃「たのえ(おたねの語呂合わせ)御前」の稽古を止めさせる。与助と言い争ううちに、与助はお種への気持を告白する。三人の弟子が少掾(見猿)、与助(言わ猿)、お種(聞か猿)の三猿にたとえて嘲るので、少掾が追い散らす。弟子の一人から「たのえ・お種」の頭を渡された少掾は、その形がお種にそっくりなので、それを彫った者の気持ちを察知して心が乱れる。お種の母親の亡霊が現れて、お種を代官に売ろうとしたのに損をさせられたと罵る。少掾も若い二人の気持ちを察する。

 何ヶ月か経ち春になるが、本心を知られたお種はずっと少掾を避けている。少掾は複雑な感情と罪悪感に心が引き裂かれそうになる。与助は家を出るか自殺すると言うが、少掾はどちらも拒否する。庭で与助とお種が望みのない境遇を嘆いていると、弟子たちが少掾からの贈り物として新たな心中物の台本が入った手箱を届ける。少掾は三人のうち誰かが死ねば、他の二人が責めを負って問題は解決すると言う。

 お種と与助は聖なる滝でこの世に別れを告げようと旅立ち、滝壺で姿を消す。後に残された少掾は二人の物語を伝えて悼む。

Reference Materials



初演
1985
年5月30日 セントルイス・オペラ劇場(アメリカ)

日本初演
198811 13日 日生劇場(東京)

日本語初演
2005
年9月21日 シアター1010(東京)

台本
コリン・グレアム/英語

日本語台本
三木稔

演奏時間
第1幕51分、第2幕49分、第3幕60

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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