オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
日本オペラ
M. Mamiya,Narukami 1973~1974
鳴神[1幕]間宮芳生作曲
❖登場人物❖
鳴神上人(Br) 雲の絶間姫(S) 白雲坊(T) 黒雲坊(B) 鳴物
❖概説❖
放送用のオペラとして作曲され、1974年の第六回ザルツブルク・テレビ・オペラ賞コンクールでグランプリを獲得した作品である。文楽人形オペラとして鳴物が加わる。
その昔、長年の修業を積んで神通力を持つ鳴神上人と呼ばれる高僧がいた。時の天子は皇子誕生の祈願を上人に頼み、願いがかなったら褒美に立派な戒壇を作る約束をする。ところが皇子誕生後、天子はその約束を守ろうとしない。怒った上人は北山の滝壺に世界中の龍神を閉じ込めたので、国中が旱魃大飢饉(かんばつだいききん)となった。困った天子は、宮中一の美女雲の絶間姫を、身分を隠して鳴神上人のもとに遣わし、色気で神通力を失わせようとした。
山の奥深い滝壺の傍らに上人の庵がある。弟子の白雲坊と黒雲坊は、上人と天子との争いをぼやきながら、こっそり酒盛りをしている。上人が現れて祈祷を始めると旅装束の美女が現れて、死別した夫の衣を洗うにも雨が降らないので困ると嘆く。上人は女の身の上話を聞き、思わず身を乗り出して壇上から転げ落ちて気を失う。
女からの口移しで水を飲んで正気に戻った上人は、お前は私をたぶらかすのかと言って突き放す。女は自分を疑うとは嘆かわしい、いっそ滝壺に身を投げて死んでしまうと言う。上人は女を呼び止めて自分に弟子入りさせようと、頭を剃る剃刀を買うために白雲坊と黒雲坊を里に行かせる。
その間に女は上人に酒を飲ませて眠らせる。そして滝壺に張った縄を切って龍神を解き放つと、豪雨が降って国中を潤す。目を覚ました上人は騙されたと知り、雷神の本性を発揮して怒り狂うが、雲の絶間姫は雲に乗って逃げ去る。
Reference Materials
初演
1974年5月12日(NHKラジオ)1974年6月9日(NHKテレビ)
舞台初演
1994年9月3日
セシオン杉並(東京)
原作
歌舞伎/「雷神不動北山桜」
台本
間宮芳生
演奏時間
60分
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止