オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
日本オペラ
T. Mayuzumi, Kojiki 1989~1996
古事記[全4幕]黛敏郎作曲
❖登場人物❖
イザナギ(Br) イザナミ(Ms) スサノヲ(T) アマテラス(S) オモイカネ(B) アシナヅチ(B) 天つ神/クシナダ(S)他
❖概説❖
ベルリンで上演されたオペラ「金閣寺」の成功によって、リンツ州立歌劇場から新作の委嘱を受けて作曲された黛敏郎晩年の大作である。黛敏郎はかねてから構想を温めていた「古事記」の神話時代に題材を求め、台本にドイツ語を採用した。
プロローグは語り部によって、現代の先端文明を行く日本から太古の世界へと回帰し、この国の始まりが物語られる。天つ神に命じられたイザナギとイザナミの夫婦神は、天降って日本の国生みをする。さらに多くの神々を誕生させたイザナミは、火の神を生んだために焼け死んで黄泉の国に送られる。イザナギはイザナミを追って黄泉の国に向かうが、イザナミを取り返すことに失敗する。やがて太陽神アマテラスや気性の激しいスサノヲなどの神々が誕生する。
スサノヲは姉神アマテラスの命令に従わず、国を治めようとしないで乱暴狼藉を働くので、怒ったアマテラスは天の岩戸の中に姿を隠してしまう。あたりは光を失って暗くなり、神々は困惑する。智恵の神オモイカネが一計を案じ、岩戸の前では神々が祈り、アメノウズメがにぎやかに踊る。何事かとアマテラスが天の岩戸を開けて再び姿を現すので、日の世界が戻る。スサノヲは、乱暴を働いた罪によって高天原(たかまがはら)から追放される。
出雲の国に降り立ったスサノヲは、アシナヅチが八岐大蛇(やまたのおろち)という怪獣が毎年現れて民を苦しめ、今年は娘のクシナダをいけにえにする番だと言って嘆くのを聞く。スサノヲは大蛇を退治して、めでたく美しいクシナダと結婚する。
心を入れ替えたスサノヲは戦争の準備をしている天界に使者を遣わし、大蛇の尻尾から発見された天叢雲剣を献上して、アマテラスに恭順を誓う。アマテラスはスサノヲを許して、皇孫のニニギノミコトを支配者として天孫降臨させる。
エピローグは語り部の「かくて日本は始まった…」という結びで、満天の星空の元の現代の日本に戻る。
Reference Materials
初演
1996年5月24日 リンツ州立歌劇場(オーストリア)
日本初演
2001年10月27日 サントリーホール(東京)
日本舞台初演
2011年11月20日 東京文化会館
原作
「古事記」より
台本
中島悠爾、ゲルトルート・フセネガー(補筆)/ドイツ語
演奏時間
プロローグと第1幕37分、第2幕20分、第3幕25分、第4幕とエピローグ18分(大友直人指揮/日本舞台初演時)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止