ヒロシマのオルフェ[1幕]芥川也寸志作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

Y. Akutagawa, Orpheus in Hiroshima 1959~60

ヒロシマのオルフェ[1幕]芥川也寸志作曲


登場人物❖

青年(Br) 死の国の娘、のちに看護婦(S) 中年の娼婦、実は巫女(Ms) 死の国の運転手、のちに医師(T)

概説

 芥川也寸志の唯一のオペラである。このオペラはNHKの委嘱によって書かれた放送用の作品で、当初「暗い鏡」という題名だった。1967年テレビ用に改作されたが、その際に現行のタイトルに改められ、翌年ザルツブルク・オペラ・コンクールで最高の審査員特別賞を受賞した。原爆に対する告発の意味を持っている。

 被爆によって、顔のケロイドと白血病による死の恐怖に怯える青年は、包帯で顔をぐるぐる巻いている。雨のそぼ降る夜の町角で、青年は中年の娼婦に声をかけられて一夜を過ごす。娼婦は実は巫女で、青年に手鏡を渡す。鏡を覗くと青年は傷ひとつない顔であった。そこに鏡の中から若い娘が出て来るので、彼女に対する恋から生への希望を抱く。彼女は死の国の娘で、死ぬ前にひとつだけ願いごとをかなえてあげようと言うので、彼は未来の世界を見たいと言う。

 青年は花咲き乱れる天国の様子を夢で垣間見る。夢から覚めた青年は、生への希望を取り戻して白血病で死ぬ前に顔の手術をしようと決意するが、娘は願いごとが終わったら暗黒世界から青年の迎えが来ることを知っている。青年は軍服を来た死の国の兵士に銃で撃たれてうずくまる。倒れた青年を死の国の運転手が連れて行こうとするが、青年に同情した娘は優しく包帯で顔を巻いてやる。暗黒世界の霊たちが裏切り者と叫び、運転手は闇に消える。

 朝が来るとベッドには半裸の娼婦が寝ていて、傍らに青年が倒れている。目を覚ました青年は前夜見た不思議な夢の体験を思い出す。しかし今では鏡を見ても、包帯を巻いた自分の顔しか映らない。もう二度と包帯を解くなという娼婦に対して、青年は手術を受ける決意を固めて立ち去る。

 病院の手術室では、医師が青年の意思を確認してから麻酔注射を打つ。青年は幻覚の中に、医師と看護婦が死の国の運転手と娘であることを認める。原爆実験の開始の合図のような数字が数えられる、娘は死んではだめだと絶叫するが、青年の意識は混濁して行く。

Reference Materials



初演
1960年3月20NHKラジオ)

舞台初演
1960
年3月27日 読売ホール(東京)

台本
大江健三郎

演奏時間
48
分(下記CDによる)

参考CD
● 井原秀人、石橋栄実、田中友揮子、安川忠之/本名徹次指揮/オペラハウス管・唱(Cam

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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