葵上[全2幕]別宮貞雄作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > 葵上[全2幕]別宮貞雄作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

オペラ名作217 もくじはこちら

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

S. Bekku, Aoinoue 1977~1979

葵上[全2幕]別宮貞雄作曲


登場人物❖

御息所(Ms) 葵上(S) 光源氏(T) 照日前(A) 横川聖(B)他

 

概説

 別宮貞雄は、一九六七年の「有間皇子」で本格的なグランド・オペラの世界へと踏み出した。その彼が十余年後に発表した彼の三作目となるオペラの大作である。台本は謡曲の「葵上」と、原作不明で世阿弥が改作したとされる「野宮」を底本として、「源氏物語」の中のエピソードから採られている。

 

 賀茂祭の日の都大路。町人たちが葵上の見事な牛車を賛美していると、車添いの前駆(ぜんく)たちが群がる人々を追い払うので顰蹙(ひんしゅく)を買う。葵上の前駆たちは、目の敵にする御息所(みやすどころ)の車を見つけると立ち去るように命じるが、御息所の前駆も抵抗するので争いはエスカレートして大騒動となり、御息所の車は壊されてしまう。光源氏に会うために出て来たのに、かなわない御息所の詠嘆の言葉が聞こえる。

 葵上は床に伏し、光源氏が付き添っている。巫女の照日前が呼ばれて祈祷していると、奥から御息所の歌が聞こえてくる。それを耳にした照日前は呪いの主を語り、その言葉から光源氏はその主が御息所の生霊であることに気がつく。葵上に取り憑いた御息所の恨みの強さに、さすがの照日前の占術も通用しないので、代わりに役の行者である横川聖が呼ばれる。

 彼の祈祷に誘われて、般若の面をつけた御息所が現れる。御息所は言葉の限りを尽くして葵上を愚弄して、高らかに勝鬨(かちどき)の声をあげる。横川聖はさらに祈るが効果はなく、御息所の思うままに引きずり回された葵上は疲れ果てて倒れる。御息所は聖も追い払おうとするが、ついに彼らの念力に祈り伏せられて姿を消す。

 晩秋の洛北・野宮に舞台は移り、机にもたれた御息所が悪夢にうなされている。その様子を案じる侍女たちに、御息所は行者の祈祷で染みついた香の匂いから自らの煩悩を恥じる。葵上の死を知らされた御息所は強い衝撃を受け、侍女たちがようやく光源氏も心やすく通って来るだろうと言う言葉も慰めにならない。

 侍女たちを去らせると、御息所はすべてを捨てて子供の斎宮と伊勢へ下ろうと決意する。そこに光源氏が現れて、優しく彼女を抱きしめて翻意を求めるが、御息所の意志が固いのであきらめて出て行く。御息所は揺れ動く心に耐えかねて泣き崩れる。

Reference Materials



初演
1981
年7月14日 新宿文化センター(東京)

台本
鈴木松子/日本語

演奏時間
120

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ 袈裟と盛遠       夕鶴 ▶▶▶︎


オペラ名作217 もくじはこちら



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE