袈裟と盛遠[全3幕]石井 歓作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

K. Ishii, Kesa and Morito 1968

袈裟と盛遠[全3幕]石井歓作曲


登場人物❖

遠藤盛遠(Br) 袈裟(S) 渡辺の渡(T) 平清盛(Br) 白菊(S) 佐藤義清(T) 呪師(B)他

 

概説

 明治百年記念の文化庁芸術祭特別公演として、二期会と藤原歌劇団の合同で上演された。物語の多くは「源平盛衰記」から採られているが、「平家物語」に出てくる文覚上人(盛遠)に焦点が当てられているので、オペラには「平家物語より」という副題が添えられている。

 

 平安末期のある春の宵、渡辺の渡の屋敷では花見の宴が催されている。遠藤盛遠は得体の知れない男を伴って来る。求められてその男は芸の代わりに不吉な予言をする。次第に不気味な空気に包まれるので、渡は白拍子に踊らせる。盛遠は、渡が最近娶(めと)った美しい新妻・袈裟御前を一目見て心を奪われる。一同は夜ふけに屋敷を去る。残った盛遠が心のうちを袈裟に打ち明けようとした時、平清盛が走り込んで来て、渡が落馬して重傷を負ったと知らせる。

 秋になり、都の外れのある古寺の前で、恋にやつれた盛遠が袈裟を待ちわびている。現れた袈裟に盛遠は想いのたけを告白するので、彼女も心を乱す。その様子を見ていた清盛の許婚の白菊は嫉妬にかられ、自分の愛を切々と盛遠に訴える。翌日の夜、庭で月の光の下に立っている袈裟に渡は話しかけるが、彼女は盛遠との関係について重大な嘘をつく。忍び込んで来た盛遠は、袈裟に一緒に逃げてくれなければ渡を殺すと迫る。進退きわまった袈裟は、渡の首を斬ってくれと言う。

 子の刻、屋敷に忍び込んで来た盛遠は、渡の寝所に入って一刀のもとに首を斬る。しかし月明かりに照らされた首を見ると、それは身代わりになった袈裟のものだった。

 盛遠は袈裟の首を抱きかかえて山中に逃げ込み、罪の深さに半狂乱となる。そこに盛遠を追って渡がやって来る。渡は家人に追捕の将の清盛に知らせるよう命じてから盛遠を斬ろうとするが、思い止まって刀を収める。妻も親友も失おうとしている渡は、都を去ると言い残して寂しく去る。袈裟の亡霊が現れて、渡との幸せだった日々のことだけを語るので盛遠は愕然とする。

 盛遠は袈裟の姿をもう一度見ようと包みを開けて見ると、醜い腐肉の塊に変わり果てていた。苦しんだ盛遠は一心に祈り始める。盛遠の耳には、追っ手の清盛の声も耳に入らない。やがて清盛の家来が放った火が猛烈に襲いかかる。盛遠は一心不乱に祈り続るまま、あたりは火炎で包まれる。

 暗黒の何もない空間、文覚上人という僧になった盛遠の姿が、広い大地を遥か遠くに去って行く。

Reference Materials



初演
1968
1120日 東京文化会館

台本
山内康雄/日本語

演奏時間
135


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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