赤い陣羽織[全2幕]大栗裕作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

日本オペラ

H. Ohguri, Akai Jinbaori 1955

赤い陣羽織[全2幕]大栗 裕作曲


登場人物❖

おかか(Ms) 奥方(S) 亭主(T) 代官(Br) 庄屋(Br) 子分(T)他

 

概説

 「夕鶴」と「修禅寺物語」の成功によって活気づいた日本のオペラ界に刺激を受けて、関西でも創作オペラの機運が高まり、関西歌劇団が取り組んだ創作歌劇の第一弾として発表された。作曲者に抜擢された大栗裕は、当時関西交響楽団のホルン奏者だったが、このオペラの成功によって、作曲家としての地位を確立した。

 原作のアラルコン「三角帽子」は、ファリャが作曲したバレエとして名高いが、スペイン王権の権威の象徴である三角帽子は、日本の江戸時代の支配階級を誇示する赤い陣羽織に置き換えられている。

 ある村に、実直で働き者だがぶ男な亭主とおかか(女房)が、馬の孫三郎と仲睦まじく平和な生活を送っていた。代官は、しばしば村を見回るうちに若くて美人のおかかに横恋慕し、亭主が留守の間に時々訪れて来るようになった。今日も尋問があると言って、庄屋は亭主を呼び出す。美人で勘の鋭いおかかは、それが代官の差し金であると察知する。

 深夜の同じ場面、代官の企みを知った亭主は、庄屋の家からほうほうのていで自分の家に逃げ戻って来る。すると代官の赤い陣羽織と着物があり、履き物までがそろって置いてあるのを見て、直感的に何があったのかを理解する。実は代官はこの家の近くにやって来たところ川の橋板から滑って落ち、這い上がって亭主の家に入った。そしておかかに鍬で殴られて気を失っている。陣羽織や着物は川に落ちた時に濡らしたので、それを干していたのである。戻って来た亭主を庄屋が追って来るが、亭主は仕返しに代官の奥方を寝取ってやろうと陣羽織を身につけて代官屋敷に乗り込む。

 陣羽織がなくなったので、家の奥では代官がしかたなく亭主の野良着をまとっている。やがて亭主を追った庄屋が戻って来るが、代官と庄屋は亭主とおかかの意図を感じ取って慌てて屋敷に帰る。

 舞台は代官の屋敷の中に変わる。聡明な奥方は駆けつけてきた代官と子分に対して、代官はもう帰っていると言って屋敷に入れない。ようやく屋敷に入ると、赤い陣羽織を来た亭主が代官よろしく座っている。すべてを見通している聡明な奥方の冷静な態度に、代官は声もない。そして万事丸く収まり、亭主とおかかは仲良く家に戻って行く。

Reference Materials



初演
1955
年6月11日 三越劇場(大阪)

原作
ペドロ・アントニオ・アラルコン/「三角帽子」

台本
木下順二/日本語

演奏時間
第1幕47分、第2幕15分(下記CDによる)

参考CD
木村四郎、小島幸、広岡隆正、横井輝男、林誠、桂斗伎子/朝比奈隆指揮/大阪フィル(EMI

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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