青ひげ公の城[プロローグと1幕]バルトーク作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ハンガリーオペラ

B. Bartók, Duke Bluebeard's Castle 1911

青ひげ公の城[プロローグと1幕]バルトーク作曲

 

登場人物❖

青ひげ公(B) ユディート(Ms

 

概説

 バルトーク唯一のオペラであるが、イタリア・オペラともワーグナー・スタイルのオペラとも異なり、アリアとレチタティーヴォの中間的なハンガリー語独特のイディオムによる音楽によって、緊張感にあふれるドラマが形作られている。

 開幕前に吟遊詩人によるプロローグの前口上があるが、省略されることもある。

青ひげ公の城.png
「青ひげ公の城」


プロローグ

 

 幕が上がる前に吟遊詩人が現れて、これから古城をめぐる古い言い伝えをお聞き下さいと前口上を述べる。

 

第一幕

 

 青ひげ公の城の中のゴシック風の円形広間。奥の階段の上は小さな鉄の扉に通じ、横の壁には七つの大きな扉がある。突然階段の上の鉄の扉が開いて、青ひげ公が新妻ユディートと現れる。青ひげ公はユディートに、親兄弟を捨ててこの城に来たことを後悔しないかと尋ねると、彼女はどこまでもついて行くと答えるので、青ひげ公は扉を閉める。ユディートは、この暗く湿った城を明るくして口づけで濡れた壁を乾かそうと言う。そしてこの城の全部を見せて欲しいと、七つの扉全部を開けるよう求める。

 ユディートが第一の扉を叩くと、中から苦しそうなうめき声が聞こえる。せがむユディートに青ひげ公はしぶしぶ第一の扉の鍵を渡す。第一の扉を開けると、そこは赤い光に包まれた拷問室で、恐ろしい器具がたくさん見える。

 ユディートはさらに第二の扉の鍵をせがんで扉を開けさせる。今度は橙(だいだい)色の光が漏れる。そこは恐ろしい武器庫で、血がこびりついた多くの武器が並べられている。ユディートは夫の権力の大きさと残忍な性格を知るが、夫のすべてを知りたい欲望にかられてさらに他の鍵を求めるので、青ひげ公は不安げな警告を発しながらも、続く三つの扉の鍵を渡す。

 第三の扉を開けると、黄金色の光が射し込んで来る。部屋は宝物庫で、金・銀・ダイヤモンドに真珠や王冠がいっぱいに詰まっている。ユディートは夫の財力に感心するが、財宝に血の跡がついているのを見逃さない。

 青ひげ公は、では陽の光を入れようと言い、妻に第四の扉を開けさせる。すると青緑色の光が流れ込み、美しい花園が広がっている。青ひげ公はこれは自分の秘密の庭なのだと言い、どんな花もお前の言う通りになると説明するが、ユディートは花園の土が血で染まっていて、花が血で育っているのを悟る。

 彼女は誰が血を撒いたのかと尋ねるが、青ひげ公は何も答えず第五の扉を開けさせる。そこからはキラキラした光が波のように流れ込んで来る。バルコニーの先は遥か遠くまで広大な領地が見渡せる。青ひげ公は太陽の光に照らされる美しい野や森を自慢して、すべてお前のものだと言うが、ユディートは空の雲が血のように赤いとつぶやく。

 青ひげ公はここでユディートを抱こうとするが、彼女は残り二つの扉を開けるよう求める。第六の扉を開けると、すすり泣くような声が聞こえ、乳白色の光の中に白くよどんだ涙の湖がある。青ひげ公はもうこれで終わりで最後の扉は絶対に開けないと言って、ユディートと長い接吻を交わす。しかしユディートは、第七の扉の中には夫の以前に愛した妻の死体があるに違いないと言って、第七の扉の鍵を求める。鍵を回すと第五・第六の扉が閉まり、第七の扉からは月光のような青白い光が射し込んで来る。美しく着飾った無言の三人の女性が静かに出て来て、ユディートは彼女たちの美しさに驚く。青ひげ公は、「一人目の女性は夜明けに見つけたので、すべての夜明けは彼女のもの。二人目は真昼に見つけたので、すべての真昼は彼女のもの。三人目は夕暮れに見つけたので、すべての夕暮れは彼女のもの」と三人の女性との出会いを説明すると、彼女たちは中に消えて行く。

 青ひげ公は第三の扉の中から宝物を取り出すと、「四人目は真夜中に見つけた」と無理やりユディートの身を飾り立て、お前こそ一番美しい女だと言う。ユディートは、金縛(かなしば)りに会ったように三人の女性の後を追って第七の扉の中に消える。青ひげ公は、永遠に夜よ続けとつぶやいて姿を消す。


Reference Materials



初演
1918
年5月24日 ブダペスト国立歌劇場

原作
シャルル・ペロー/「マ・メール・ロア」中の「青ひげ公」、モーリス・メーテルリンク/「アリアーヌと青ひげ」(デュカス作曲)などの青ひげ伝説

台本
ベラ・バラージュ/ハンガリー語

演奏時間
プロローグ16分、第141分(ケルテス盤CDによる)

参考CD
● ルートヴィヒ、ベリー/ケルテス指揮/ロンドン響(D

● ノーマン、ポルガール/ブーレーズ指揮/シカゴ響(DG

● テッパー、フィッシャー=ディースカウ/フリッチャイ指揮/ベルリン放送響(DG

参考DVD
● シャシュ、コヴァーチュ/ショルティ指揮/ロンドン・フィル(D

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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