オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
スペインオペラ
M. de Falla, La Vida Breve 1905
はかなき人生[全2幕]ファリャ作曲
❖登場人物❖
サルー(S) 祖母(Ms) カルメラ(Ms) パコ(T) サルバオール叔父さん(B) マヌエル(Br)他
❖概説❖
スペイン情緒豊かなオペラとして、近代スペイン音楽を代表する名曲のひとつである。
1905年のマドリード・サン・フェルナンド芸術院主催のコンクールに応募して一位になったが、初演されたのは8年後になった。翌1914年パリのオペラ・コミック座で上演されてから、広く認められるところとなった。
第一幕
第一場 グラナダのアルバイシン地区のジプシーの家の庭。奥の方から鍛冶職人たちの声が聞こえる。祖母が鳥かごの中の瀕死の小鳥の世話をしながら、鳥も孫のサルーのように恋に悩んでいるとつぶやく。
家の外の通りから物売りの声が聞こえ、にぎやかに女たちが通り過ぎて行く。そこにサルーが入って来て、待っていても恋人のパコが来なかったので捨てられてしまったのではないかと心配する。上流家庭のパコとジプシー娘のサルーとの恋ではうまく行くはずがないのを知っている祖母だが、サルーを慰めると彼女に頼まれてパコが来るかと様子を見にテラスに上がって行く。
残ったサルーは、恋人に捨てられるなら小鳥のように死んでしまう方がましだと歌う(「笑う者たちに万歳!」)。そこに祖母がパコの来訪を告げる。彼はサルーに駆け寄ると、二人は抱き合う。サルーは自分を捨てないでと言うと、パコは自分には君しかいないと言って接吻をする。
そこに年老いたサルバオール叔父が血相を変えて入って来るので、祖母は押し止めてサルバオールの話を聞く。彼の話によると、パコは日曜日に同じ上流階級のスペイン娘カルメラと結婚式を挙げることになっており、不実なパコを殺してやると息巻いている。祖母は、今これ以上の悲しみは余計にサルーを不幸にするとサルバオールをなだめて鍛冶場へ連れ去る。そんな話をまったく知らないサルーは、パコの偽りの言葉を信じて甘い愛の喜びに浸っている。
第二場 グラナダの美しい全景が望めるジプシーの家の庭。グラナダの日没時、コーラスが聞こえる(間奏曲)。
第二幕
第一場 グラナダの通りに面したカルメラの家の中庭。カルメラとパコの結婚の祝宴が開かれ、ギターの弾き語りやカスタネットを打ち鳴らして踊りが披露されている。
表通りにサルーがやって来て、心配そうに中庭をのぞき込む。彼女は噂どおりパコがカルメラと仲じそうにしているのを見て絶望し、一瞬にして幸せがしぼんでしまったと嘆き、苦しみに耐えるよりも死んでしまいたいと言う(「ああ、あそこに彼がいるわ、笑いながら」)。そこにサルバオールと祖母が現れるので、サルーは祖母の腕の中に身を投げて泣く。サルバオールがサルーを連れて祝宴に乗り込もうとするのを祖母は止める。
サルーは窓際で裏切り者を声高に呪うので、その声を聞いたパコの顔が青ざめる。カルメラがどうしたのかと尋ねると、パコは何でもないと取りうが、とうとうサルバオールとサルーは祖母の制止も聞かずに中に入って行く。
第二場 カルメラの家の中庭。祝宴はなおも続き、踊りには“オレ、オレ”の掛け声がかかる。カルメラの兄マヌエルは妹の結婚に満足して祝福の言葉をかけるが、この時サルーの手を引いたサルバオールが入って来る。いぶかるマヌエルに、サルバオールは祝いの踊りに来たと言うが、サルーはパコに向かって、私を殺してと叫ぶ。
皆はすべてを察してパコを見守るが、サルーが裏切り者と叫ぶのに激昂(げきこう)したパコは、この女を放り出せと言う。サルーはあまりの悲しみに倒れ伏し、パコの名を呼んで息絶える。祖母はサルーに駆け寄って泣き伏し、怒ったサルバオールは短刀でパコを突き刺す。
Reference Materials
初演
1913年4月1日 ニース市立カジノ劇場
台本
カルロス・フェルナンデス・シャウ/スペイン語
演奏時間
第1幕35分、第2幕29分(フリューベック・デ・ブルゴス盤CDによる)
参考CD
● ロス・アンヘレス、リバデネイラ、イグェラス、コッスタ/デ・ブルゴス指揮/スベイン国立管、サン・セバスチャン唱(EMI)
● ナフェ、キーン、ノターレ、オルドネス/ロペス=コボス指揮/シンシナティ響、シンシナティ5月音楽祭唱(TeL)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止