B. Britten, The Turn of the Screw 1954

ねじの回転［プロローグと全２幕］ブリテン作曲

❖登場人物❖

プロローグ（Ｔ）　女性家庭教師（Ｓ）　マイルズ（Boy-S）　フローラ（Ｓ）　家政婦グロース夫人（Ｓ）　ジェッスル嬢（Ｓ）　ピーター・クィント（Ｔ）

❖概説❖

　ヘンリー・ジェイムズの不気味な小説のオペラ化であり、ブリテンの心理劇を代表する名作として知られる。いったん回転を始めたねじは、破局に至るまで停止しないという性質に因（ちな）んでつけられた題名がユニークである。

 「ねじの回転」

プロローグ

　マイルズとフローラの二人の子供の後見人の依頼によって、若くて美しい女性が家庭教師として赴任する経緯が物語られる。後見人は子供の親戚筋の立派な紳士であり、子供たちをブライにある自分の邸宅に住まわせて家庭教師をつけていたのだが、その家庭教師が死んだので後任を彼女が務めることになった。後見人は彼女に、多忙な彼を一切煩わせてはならないと言う。

第一幕

　第一場　旅。六月のある日の午後、家庭教師は馬車でブライに向かう。彼女は魅力的な後見人への思いと、子供たちや長年いる家政婦とうまくいくか不安を抱いている。

　第二場　歓迎。二人の子供は家政婦と楽しそうに騒いでいて、家政婦は子供に礼儀正しく家庭教師を迎えるよう諭す。到着した家庭教師は躾（しつ）けの良さそうな子供たちに安心する。

　第三場　手紙。翌日の夜、家庭教師は家政婦からマイルズが学校から退学処分になった手紙を受け取り驚く。家政婦はマイルズは悪い子ではないと言い、二人は抱き合う。

　第四場　塔。美しい初夏の夕べ、家庭教師に子供たちも懐（なつ）いて、子供たちへの愛情も深まった。その時塔の上に人が見えるので、彼女は後見人かと思って喜ぶが、見知らぬ男なので不安にかられる。

　第五場　窓。二人の子供は民謡を歌いながら木馬で遊んでいる。また塔に人影が見えるので家庭教師は家政婦に問い質（ただ）すと、それは死んだ以前の召使クィントで、自殺した前任の家庭教師ジェッスル嬢と仲良くなり、マイルズにも悪い影響を与えていると言う。家庭教師は二人の子供を護って後見人の期待に応えることを誓い、家政婦も味方になると言う。

　第六景　授業。ラテン語の勉強中にマイルズは突然「マロ」と奇妙な歌を歌い出すので、家庭教師はクィントの影響かと思い誰に教えられたのかと問うが、自作だと答える。

　第七場　湖。家庭教師が邸内の公園でフローラと地理の復習をしながら散歩していると、対岸にジェッスル嬢の亡霊が見える。家庭教師はフローラも見たはずだと思い、不安が募る。

　第八景　夜。クィントはマイルズに、ジェッスル嬢はフローラに声をかけて、外に出てきた子供たちを霊の世界に引き込もうと誘惑する。現れた家庭教師と家政婦は子供たちを家に連れ戻す。

第二幕

　第一場　対話と独白。ジェッスル嬢とクィントの亡霊は、子供たちを霊の世界に引き込もうとしている。家庭教師は迷路にはまり込んだ自分に悩む。

　第二場　鐘。日曜日の礼拝の日、子供たちは教会の中庭で聖歌を歌っている。フローラは教会堂に入るが、マイルズが家庭教師に学校に戻りたいと何気なく話しかけるので、彼女はこの言葉に挑戦的な姿勢を感じる。

　第三場　ジェッスル嬢。家庭教師が部屋に入ると、ジェッスル嬢の幽霊が机に座っているので愕然とする。ジェッスル嬢の亡霊は自分の境遇を嘆き、フローラを待っていると言う。家庭教師は決然として亡霊を追い払い、後見人に対して一度会いたいという手紙を書く。

　第四場　寝室。家庭教師は後見人に手紙を書いたことをマイルズに話し、マイルズに過去の話をさせようとすると、クィントの声がしてマイルズは叫び声をあげる。一陣の風が吹いてロウソクが消える。

　第五場　クィント。クィントの命令で、マイルズは家庭教師が書いた手紙を盗み取る。

　第六場　ピアノ。マイルズがピアノを弾き、家庭教師と家政婦はなごやかである。しかし家政婦が居眠りするとフローラはそっと逃げ出す。気づいた家庭教師は慌てて探し始める。

　第七場　フローラ。フローラは湖畔で発見される。追いかけて来た家庭教師だけにジェッスル嬢の亡霊が見える。連れ戻されたフローラはこれまでの不満を爆発させるので、家庭教師は自分の努力が失敗だったと絶望する。

　第八場　マイルズ。フローラは家政婦と一緒にロンドンの後見人の許へ向かう。家庭教師は今日こそマイルズから真相を聞き出そうとすると、クィントの声が響く。マイルズはクィントにお前は悪魔だと叫んで家庭教師の腕にすがりつく。クィントは敗北を認めるが、その時マイルズは息絶える。

Reference Materials