ピーター・グライムス[プロローグと全3幕]ブリテン作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イギリスオペラ

B. Britten, Peter Grimes 1944~45
ピーター・グライムス[プロローグと全3幕]ブリテン作曲

登場人物❖

ピーター・グライムス(T) エレン・オーフォード(S) ボルストロード船長(Br) ホブソン(B) スウォロウ(B) 猪亭の女将(A) セドリー夫人(Ms) ネド・キーン(Br) ホラス・アダムス(T) ボブ・ボールズ(T)他

概説

 ブリテンのオペラの中で最も本格的な作品として一般の人気が高い。閉鎖的な社会から疎外された人間の心理が鋭く描かれている。曲中の場面転換の間奏曲六曲は、独立した管弦楽曲として演奏されることがある。

 

プロローグ

 

 イギリス東海岸の小漁村の集会所。仮設法廷が開かれ、漁師ピーターが見習いの少年を死なせてしまった事件の審理が行われている。ピーターは事故は不可抗力だったと証言するが、日ごろよりピーターの粗暴さを憎んでいる村人たちは、内心彼が殺したのではないかと疑う。しかしそれを裏付ける証拠がないので、少年は事故死と判断される。

 判事スウォロウはピーターに、以後少年を雇わないよう勧告するが、ピーターは、見習いを雇わなければやっていけないと抗議する。村の女教師の未亡人エレンが一人彼を慰める。

第一幕

 

 第一場 村の海岸通り。漁師や海女が漁の準備をし、退役船長ボルストロードが望遠鏡で海を眺めている。ピーターの船が着くが、先日の事件以来村八分にされた彼を誰も手伝おうとしない。見かねた船長と薬剤師キーンが手を貸し、孤児院の少年をピーターの見習いにつけてやることにしたと話す。人々はそれを非難するが、エレンの口添えもあって彼女と馬車屋ホブソンは少年を迎えに行く(「罪なき人まず石もて打て」)。未亡人セドリー夫人がやって来て、キーンに阿片(あへん)はないかと尋ねると、キーンは夜パブで渡すと答える。

 船長は一人残ったピーターに村を出て大きな船に乗るよう勧めるが、ピーターはここでエレンと結婚することを夢見る。

 第二場 パブ「猪亭」の中。閉店時間が過ぎたのに人々はパブに集まって騒いでいる。セドリー夫人が待っているところにキーンが入って来て、嵐でピーターの家の近くの崖が崩れたと告げる。

 やがてずぶ濡れのピーターが現れ、星占いのような訳のわからないことを独白するので(「大熊座とスバル星は」)、人々は彼を追い出そうとする。険悪な雰囲気をなごませようと船長は輪唱を歌い始めるが、そこに孤児院から少年を連れて来たエレンとホブソンが入って来る。ピーターは嵐をついて、すぐに少年を家に連れて行く。

第二幕

 

 第一場 村の海岸通り。人々は日曜日の祈りに教会へ入って行く。エレンは編み物をしながら、ピーターの徒弟の少年と話をしている。そこに、魚の大群を見つけたと言ってピーターが現れる。エレンは今日は安息日だと抗議して、少年の傷について問いただすが、ピーターは海に出るために無理やり少年を追い立てる。

 その一部始終を酒場の窓から見ていた猪亭の女将(おかみ)やキーンは憤慨し、教会から出て来た村人たちもピーターを非難する。そして彼と親しいエレンをも疑う。人々はピーターの家の様子を見に押しかける。

 第二場 船を逆さまに伏せたピーター・グライムスの小屋。ピーターは泣きじゃくる少年にエレンが編んでくれたセーターを着せ、海に出る準備をさせる。ピーターは金を稼いでエレンと結婚するのだと意気込むが(「あの人もじきに学校の習慣を忘れ」)、以前に死んだ少年の幻影におびえる。

 やがて村人たちが近づくのを見たピーターは、少年に裏の扉から崖づたいに海岸へ降りるよう命じるが、少年は間もなく手を滑らせ、悲鳴とともに海に転落する。驚いたピーターは後を追う。村人たちはピーターが家にいないので、すでに漁に出たものと思って立ち去る。一人船長は、何か思い当たったように崖の道を降りて行く。


第三幕

 

 第一場 数日後の海岸通り。美しい夜、スウォロウが猪亭の女将の二人の姪を口説くのに失敗してパブに入って行く。セドリー夫人がキーンを相手に、ピーターがまた少年を殺したと噂していると、船長とエレンが現れる。

 エレンは少年のセーターを海岸で発見したと言い、船長はピーターの船は一時間も前に帰って来ているのに少年の姿が見つからないと話す。エレンは自分が編んだセーターが謎を解く手がかりになってしまったと嘆き(「子供のころの刺繍は」)、二人はピーターを探しに行く。

 その様子をすっかり立ち聞きしたセドリー夫人は、パブの中のスウォロウに事の次第を伝えるので、スウォロウは警官を兼ねるホブソンに捜査を命じる。村人たちもピーターが少年を殺したに違いないと憤慨して、ピーターを探しに行く。

 第二場 同じ場所。明け方近く、遠くでピーターの名を呼ぶ声が聞こえる。そこに疲れ果てて正気を失ったピーターが現れ、あれは事故だったんだとつぶやき、取りとめもなく頭に浮かぶさまざまなできごとを独白する。そこにエレンと船長が現れるが、ピーターはもはやエレンの声も耳に入らない。船長は海の男として船を沖に出して沈め、船と運命をともにするようピーターに忠告する。エレンの制止も空しく二人は船を海岸へ押し出し、ピーターを乗せた船は沖に出て行く。

 夜が明けて、人々は広場に集まって仕事を始める。スウォロウがやって来て、沖で沈みかけた船があると知らせるので、漁師が望遠鏡で見るが何も見えない。人々はそれ以上の関心を示さず、いつもと変わらない生活に戻る。


Reference Materials



初演
1945
年6月7日 サドラーズ・ウェルズ・オペラ(ロンドン)

原作
ジョージ・クラップ/「自治町村」

台本
モンタギュー・スレイター/英語

演奏時間
プロローグ12分 第1幕43分 第2幕49分 第3幕38分(ブリテン盤CDによる)

参考CD
● ワトソン、エルムズ、ピアーズ、ピーズ、ブラニガン/ブリテン指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(D

参考DVD
● グリフィー、ラチェット、パーマー/ラニクルズ指揮/メトロポリタン歌劇場・唱(EMI

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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