ミカド[全2幕]サリヴァン作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

イギリスオペラ

A. S. Sullivan, The Mikado 1885

ミカド[全2幕]サリヴァン作曲


登場人物❖

日本のミカド(B) ナンキプー(T) ココ(Br) プーバー(Br) ピシュタシュ(Br) ヤムヤム(S) ピッティシン(Ms) ピープボー(S) カティシャ(A) 他

概説

 1870年代からギルバートとサリヴァンのコンビで大ヒットした一連のオペラは、劇場支配人ドイリー・カートが主宰するサヴォイ劇場で上演されたためにサヴォイ・オペラとも呼ばれる。パリで流行したオペレッタのイギリス版ともいえるが、日本では軽歌劇と呼ばれることがある。¥
 ミカドというのは日本の天皇のことで、1862年のロンドン万博や、1885年にロンドンで開設された「日本村」の影響によって、イギリスで日本への関心が高まっていたことから発想された作品である。なお、ティティブという地名は仮想の町であるが、埼玉県秩父の語呂合わせと考える人がいる。



第一幕

 

 ティティブにあるココの館の庭。貴族たちが死刑執行長官であるココの館の庭に集まって騒いでいる。そこに旅回りの歌手ナンキプーが現れ、ココが後見人になっているヤムヤムの所在を尋ねる。貴族たちに身分を問われたナンキプーは私は旅の歌芸人だと言う。貴族のピシュタシュがヤムヤムに何の用事があるのかと尋ねると、ヤンキブーは、自分は一年前にこの町にやって来て彼女と相思相愛の仲になった。ところが彼女がココと結婚することになり、ココが恋愛ご法度の罪で死刑を宣告されたと聞いたので、彼女が自由の身になったと思って探しに来たと答える。

 するとピシュタシュは、ココは異議申し立てが認められて罪を許され、死刑執行長官に任命されたので、彼が自分の首を切らない限り死刑は行われないと言う。役人たちとともに大臣のプーバーが現れるので、ナンキプーが賄賂をつかませると、彼は「若者よ望みはない」と言い、今日ヤムヤムとココが結婚式を挙げることを教える。そこにココが現れて、大臣に結婚費用の捻出について尋ねるが、大臣は大蔵大臣と個人の立場を使い分けてうやむやに答える。

 ヤムヤムが姉妹と学校から戻って来るのでココは彼女を抱きしめようとするが、彼女はナンキプーのほうに駆け寄る。しかしココは、後見人の権限によって彼女を嫁にすると言い張る。一騒ぎの後、皆が立ち去ってヤムヤムとナンキプーが残ると、彼はヤムヤムに対して、実は自分はミカドの皇子で、年上のカティシャとの縁談を逃れるために宮中を出て旅をしていることを打ち明ける。

 二人が立ち去ると、ココ、ピシュタシュ、プーバーの三人がやって来て、この一年間死刑執行がないことをミカドから咎められ、ここ一ヶ月以内に誰かを犠牲にしなければならないと頭を抱える。そこでヤムヤムとの結婚がうまくいかずに自殺しようとしているナンキプーに、自殺するくらいなら一ヶ月だけ好き放題にしてよいから、その後に犠牲になってくれと持ちかける。ナンキプーは、ヤムヤムとの結婚を条件に話を受ける。

 そこにカティシャが現れ、彼こそ自分の婚約者だと主張して彼の身分を明かそうとするが、ヤムヤムの姉妹たちが騒ぎまわるのでうやむやとなる(このアンサンブルでは「鬼」「びっくり」「しゃっくり」などの日本語が連発される)。

第二幕

 

 ココの館の庭。ヤムヤムはナンキプーとの結婚式のために、念入りに化粧をして衣裳の準備に余念がない。ナンキプーとピシュタシュがやって来て、一日を一年と思えば三十年間の結婚生活になると陽気に言って慰め、抱き合っている二人を残して皆は立ち去る。そこにココが飛び込んで来て、死刑になった男の妻は生き埋めの刑になることがわかったと告げるので、三人は困り果てる。

 ココがどうしたものかとナンキプーと相談しているとプーバーがやって来て、ミカドの来町を伝える。ココはミカドから死刑執行について問いただされるのではないかと怯える。小心者のココは死刑執行などできるはずはなく、プーバーに偽の死刑執行証明書を書かせてナンキプーに逃亡するよう説得する。彼はヤムヤムと一緒でなければできないと言うのでココはそれを許し、二人は逃げることに同意する。

 日本語の「宮さん宮さん」の合唱の行列とともにミカドとカティシャが現れ、ココは恐る恐る死刑執行証明書を差し出す。ミカドは今日訪れた目的は死刑執行を確認するためではなく、ナンキプーという偽名を使って町に忍び込んだ皇子を探すためだと言う。そして死刑証明書に皇子の名前が書かれているのを見て驚き、皇子を殺した者は死刑だと告げる。

 ココが嘆いていると、結婚式を済ませたナンキプーとヤムヤムが戻って来る。ココはナンキプーに生き返ったことにしてくれと請うが、それではカティシャが納得しないから、誰かが犠牲になって彼女と結婚するという条件を出す。ココはしかたなくカティシャと結婚することを受け入れる。ココはカティシャに結婚を申し入れ、初めは拒否していた彼女もココの必死な求愛にほだされてそれを受け入れる。

 昼食を済ませたミカドが刑場にやって来る。カティシャとココが入ってきて赦しを請い、これまでの経過を説明する。そこにヤムヤムとナンキプーが入って来るので、カティシャは一杯食わされたとココを恨むが、ミカドはすべてを許し、喜びの合唱の中に幕となる。


Reference Materials



初演
1885
年3月14日 サヴォイ劇場(ロンドン)

台本
ウィリアム・シュウェンク・ギルバート/英語

演奏時間
第1幕53分、第2幕36
(ナッシュ盤CDによる、台詞含まず)

参考CD
● ドイリー・カート・オペラ・カンパニー/ナッシュ指揮/ロイヤル・フィルハーモニー管(D

● ブラニガン、ルイス、エヴァンス、シンクレア/サージェント指揮/プロ・アルテ管、グラインドボーン・フェスティバル唱(CFP

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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