イーゴリ公[プロローグと全4幕]ボロディン作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

ロシアオペラ

A. P. Borodin, Prince Igor 1869~79

イーゴリ公[プロローグと全4幕]ボロディン作曲



登場人物❖

イーゴリ・スヴィアトスラヴィチ(Br) ヤロスラヴナ(S) ウラディーミル・イーゴレヴィチ(T) ガリツキー公(B) コンチャック(B) コンチャコヴナ(A) オヴルール(T) エローシュカ(T) スクーラ(B)他

 

概説

 ロシア民族オペラの代表作のひとつで、民族色豊かな絵巻物のような音楽が楽しめる。1887年に作曲者が未完のまま世を去ったので、リムスキー=コルサコフとグラズノフが共同でオーケストレーションを完成した。

 

プロローグ

 

 プーティヴルの広場。兵士や民衆が壮大に合唱しているところに現れたイーゴリ公は、ポロヴェッツ人を討つために戦場へ向かうと宣言する。その時日蝕が起こるので、不安がる人々は思い止まるように言うが、イーゴリ公は妻ヤロスラヴナの兄ガリツキー公に後事を託し、息子ウラディーミルと出陣する。

 

第一幕

 

 第一場 ガリツキー公の館の中庭。イーゴリ公の留守を預かるガリツキー公は毎日のように美酒飲食にふけり、あわよくばプーティヴルの権力を奪おうと狙っている(「ようやく待ち望んだ時が来た」)。

 町の女たちがやって来て、ガリツキー公の館にさらわれた娘を返してくれと頼むが、彼は娘たちは幸せに暮らしていると言って相手にしないどころか、女たちを脅迫して追い帰す。グドーク弾きのスクーラとエローシュカは、こんなことがイーゴリ公の夫人ヤロスラヴナに知れたら大変だと言うが、放漫な生活に慣れきった男たちは、イーゴリ公に代えてガリツキー公を領主にしようと騒ぐ。

 第二場 イーゴリ公の宮殿のヤロスラヴナの部屋。ヤロスラヴナが出征以来便りのない夫と息子を気遣っていると(「長い年月が過ぎ去った」)、村の女たちがやって来て、ガリツキー公の横暴ぶりを訴える。そこにガリツキー公が現れるので、ヤロスラヴナは兄をとがめるが、ガリツキー公は女たちを追い払うと、今では自分が民衆の心をとらえているから領主にもなれるのだとうそぶき、ふてくされて出て行く。そこにロシア軍が敗れてイーゴリ公父子が捕えられたとの知らせが入る。そして、城外に敵のポロヴェッツ軍が迫って来たというので、男たちは戦いの準備に奔走し、武器を身に着けたりする。

 

第二幕

 

 夕暮れ時のポロヴェッツ軍の陣営。ポロヴェッツの娘たちが歌い踊っていると、コンチャック汗の娘コンチャコヴナはそれを止めさせ、捕らわれのウラディーミルに対する恋心を歌う(「暗い夜はとばりをひろげ」)。ロシア軍の捕虜は丁重な扱いを受け、敵に感謝する。現れたウラディーミルも敵方の娘コンチャコヴナに対する恋心を歌い、やって来た彼女と二人で密かに愛を確かめ合って別れる。

 やがてイーゴリ公が現れて、捕虜になった屈辱と祖国への愛を悲痛に歌う(「疲れ果てた心には眠りも安らぎもない」)。ポロヴェッツ兵でキリスト教徒のオヴルールが近づいて脱走を勧めるが、イーゴリ公はコンチャック汗の信義を裏切れないと逃亡を断る。

 夜明けになってコンチャック汗が姿を見せ、敵将ながら立派な態度のイーゴリ公に親愛の情を抱き(「あなたはヤカールの戦いで傷つき」)、客人として遇すために豪華で力強いポロヴェッツ人の娘たちの踊りを披露する(「ダッタン人の踊りと合唱」)。

 

第三幕

 

 第二幕と同じ陣営。ロシア軍を敗退させたポロヴェッツ軍が戻って来て、人々は凱旋将軍のグサーク汗をたたえる。ロシア人捕虜が多数連行されて来てロシアの町々が焼き払われたと知って、これ以上の屈辱に耐えられなくなったウラディーミルは、イーゴリ公にオヴルールの助けを借りて脱走するよう勧めるので、イーゴリ公もついに脱走を決意する。

 ポロヴェッツ人たちが酒に酔って寝ついた後、オヴルールが現れて逃亡の準備をする。そこにコンチャコヴナが現れて、ウラディーミルに自分はすべて知っていると言い、無謀な逃亡を止めるよう忠告する。しかし彼は逃亡は自分の義務だと言って彼女に別れを告げるので、彼女はそれなら自分を一緒に連れて行って欲しいと迫る。そこにイーゴリ公が現れ、ポロヴェッツの娘と一緒にいる息子に驚いて二人に離れるよう言うが、コンチャコヴナはウラディーミルにすがりついて放そうとしない。ついにイーゴリ公は息子をあきらめて部下と逃げる。

 コンチャコヴナは銅鑼を鳴らしてイーゴリ公の逃亡を知らせ、ロシア人の追跡を命じる。ポロヴェッツ人は残ったウラディーミルを殺そうとするが、コンチャコヴナは彼をかばうので、コンチャック汗もウラディーミルを許して若い二人の結婚を認め、明日ロシアに向かって進軍すると宣言する。

 

第四幕

 

 プーティヴルの城壁。ヤロスラヴナは早朝一人戦火で荒れ果てた城壁で、夫を待つ妻の嘆きを歌っている(「私は飛びまわるカッコーのように」)。農夫の一団が、ポロヴェッツ軍のグサーク汗に略奪された悲しみを語りながら通り過ぎる。そこにオヴルールを伴ったイーゴリ公が帰って来るのが見える。ヤロスラヴナは狂喜して出迎え、彼に抱かれる。

 二人が城壁に向かって歩いて行くと、ほろ酔い加減のスクーラとエローシュカがイーゴリ公を非難しながら現れ、城壁にイーゴリ公がいるのを見て驚く。ガリツキー公邸での放漫生活に慣れた二人はイーゴリ公の帰還に当惑するが、生活は知恵でどうにでもなると考え直し、イーゴリ公の帰還を知らせる鐘を鳴らす。人々が何事かと集まって来て、祖国のために戦ったイーゴリ公をたたえる。


Reference Materials



初演
1890
11月4日 マリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)

原作
12
世紀頃のロシア英雄叙事詩「イーゴリ公遠征譚」と僧院文書「イパテフスキー年代記」によるウラディーミル・スターソフの原案

台本
アレクサンドル・ボロディン/ロシア語

演奏時間
プロローグ30分、第1幕66分、第2幕50分、第3幕29分、第4幕32分(下記CDによる)

参考CD
● ゴルチャコーワ、ボロディナ、キット、グリゴリアン、オグノヴィエンコ、ミンジルキエフ/ゲルギエフ指揮/マリインスキー歌劇場管・唱(PH

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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