カルメル会修道女の対話[全3幕]プーランク作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

F. Poulenc, Dialogues des Carmélites 1953~56

カルメル会修道女の対話[全3幕]プーランク作曲


登場人物❖

ブランシュ・ド・ラ・フォルス(S) フォルス侯爵(Br) 騎士フォルス(T) リドワンヌ夫人(S) クロワシー夫人(A) コンスタンス(S) マザー・マリー(Ms) ジャンヌ(A) 司祭(T) 他

 

概説

 原作は、フランス革命下の時代に宗教弾圧に抗議して処刑された修道女たちの実話をもとにしている。プーランクには楽天的で機知にあふれた音楽というイメージが強いが、この作品はそのようなスタイルからはかけ離れた深刻な内容のオペラであり、その凄惨な音楽はプーランクの作曲家としての幅の広さを示す傑作である。

 

第一幕

 

 第一場 一七八九年フランス革命期パリのフォルス侯爵の書斎。外が不穏なので、外出した娘ブランシュの安否を侯爵が心配していると、息子の騎士フォルスが駆け込んで来る。侯爵は死んだ妻も暴動から逃げ帰って来たことを思い出す。妻は帰って来た翌日にブランシュを早産したが、そのせいか彼女は神経質な性格になったと言う。家に戻ったブランシュは神経が高ぶって眠れない。自分の性格では普通の生活ができないと感じたブランシュは、修道院に入る決意を父親に告げる。

 第二場 修道院の応接室。数週間の後、ブランシュはカルメル会の修道院を訪れて入会を申し出る。老修道院長クロワシー夫人は修道院での生活は厳しい祈りの場で、世間から逃避するための場ではないと諭す。ブランシュは決意の強さを訴え、入会が許されれば、「キリストの聖なる臨終のブランシュ」というシスター名にしたいと言う。

 第三場 修道院の中の食物受領室。修道女になったブランシュは、若い同僚のコンスタンスと食べ物を取りに来る。明るく快活なコンスタンスに対して、ブランシュは修道院長が病気なのに呑気ではいられないと言うと、コンスタンスは修道院長が助かるように二人で一緒に死のうと言う。ブランシュはそんな馬鹿なことを言うものではないと言う。

 第四場 修道院内の病室。重病の修道院長は付き添いのマリー修道女長に、自分の死後はブランシュをマリーに託すと言う。ブランシュが部屋に入って来る。修道院長は優しく別れを告げると危篤状態に陥る。精神が錯乱した修道院長は神を罵る。マリーは他の修道女を退けるが、ブランシュは修道院長が苦しみながら死ぬ様子にショックを受ける。

 

第二幕

 

 第一場 夜中の礼拝堂。ブランシュとコンスタンスは修道院長の棺の番をしている。コンスタンスが交代の修道女を呼びに行く。一人になったブランシュが恐怖で逃げ出そうとした時、マリーが入って来てブランシュを咎めるが、優しく彼女を部屋まで送る。

 幕前劇 コンスタンスとブランシュは、次の修道院長の話をしている。ブランシュはマリーがなることを期待するが、コンスタンスは修道院長が臆病者の身代わりとして死んだのだと言い、その臆病者は勇気と落ち着きを持って死に臨むだろうと噂する。

 第二場 修道院内の会議室。新しい修道院長には、平民出身のリドワンヌ夫人が迎えられる。新修道院長は、どんな危険が迫っても祈りが大切であることを皆に話す。

幕前劇 ブランシュの兄フォルスは、外国に逃れる前に彼女に別れを告げようと修道院を訪れる。修道院長は、マリーの立ち会いを条件に兄妹の面会を認める。

 第三場 修道院内の応接室。フォルスは修道院も安全でなくなったから父のもとに戻るようブランシュを説得するが、彼女は自分の身を神に委ねた気持ちに変わりないと言う。

 第四場 聖器安置室。司祭が現れ、宗教活動が禁止されたので最後のミサを執り行う。司祭は安全のために平服に着替え、群集と兵士が通り過ぎると出て行く。人民委員が入って来て宗教活動の禁止を伝え、全員に僧服を脱ぐよう命じる。ジャンヌ修道女長が現れて、修道院長がパリに行くと告げる。怯えるブランシュに、マリーはキリスト像を手渡す。

 

第三幕

 

 第一場 破壊された修道院の礼拝堂。修道院長代理を務めるマリーは、修道女たちに信仰のためには殉教も必要だと主張し、殉教の可否の全員投票を行う。一人だけ反対したコンスタンスが進み出て、反対したが今は考えを変えたと言う。司祭が一人ずつ誓いを立てさせるが、その間にブランシュは逃げ去る。

 幕前劇 修道院長がパリから戻り、修道女たち全員が修道院から離れることを告げる。三人の士官が修道女たちに、革命の敵の法王に従う司祭に会ってはならないと命令する。

 第二場 破壊されたフォルス侯爵の書斎。ブランシュは家に戻って来たが、この家を占拠した革命家に召使として使われている。突然マリーが現れて殉教の時が来たことを伝えるが、ブランシュはまだ心の準備ができていないと答える。

 幕前劇 ブランシュは町の噂話で、カルメル会の修道女が全員逮捕されたことを知る。

 第三場 裁判所に近い牢獄。パリに連行された修道女たちは投獄されている。コンスタンスがブランシュはどうしたのかと尋ねるが、修道院長も知らないと答える。コンスタンスは彼女が戻って来る夢を見たので、必ず戻って来るだろうと言う。獄吏が現れ、革命裁判所によって全員の死刑が確定したと告げる。

 幕前劇 バスティーユ近くの路上で、平服姿のマリーと司祭が密かに落ち会う。パリでブランシュからの連絡を待っていたマリーは、自分だけが死を免れた不名誉を恥じるが、司祭はそれは神のご加護だと言う。

 第四場 ギロチンが置かれた革命広場。修道女たちが護送用の馬車から降ろされるのを群集たちが興奮して見ている。修道院長を先頭に、修道女たちが聖母マリアをたたえる「サルヴァ・レジーナ」を歌いながら一人ずつ断頭台に進んで行く。その最後列にいたのはコンスタンスだったが、駆けつけたブランシュはコンスタンスの後に続く。

Reference Materials



初演 1957年1月26日 ミラノ・スカラ座

原作 ジェルトリュード・フォン・レフォール/「死刑台への最後の女」

台本 ジョルジュ・べルナノス/フランス語

演奏時間
第1幕63分、第2幕47分、第3幕42分(ナガノ盤CDによる)

参考CD
● デュボス、ヤカール、ゴール、ヴァン・ダム、ヴィアラ/ナガノ指揮/リヨン歌劇場管・唱(Virgin

参考DVD
● ヘンリー、シュミット、デイル、ドゥニーズ/レイサム=ケーニック指揮/ストラスブール・フィル、ライン国立歌劇場唱(Art

● シェーネ、ヴールガリドゥ、シューコフ、ハリーズ/ヤング指揮/ハンブルク・フィル、ハンブルク国立歌劇場唱(Art

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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