子供と魔法[1幕]ラヴェル作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら
詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

M. Ravel, L´Enfant et les Sortilèges 1920~25

子供と魔法[1幕]ラヴェル作曲

登場人物❖

坊や(Ms) ママ(A) 肘掛椅子(B) 安楽椅子(S) 大時計(Br) ティー・ポット(T) 茶碗(Ms) 火花(S) 羊飼の少年(A) 羊飼の少女(S) お姫様(S) 小人の算数の先生(T) 黒猫(Br) 白猫(Ms) 木(B) とんぼ(Ms) うぐいす(S) こうもり(S) リス(S) 雨蛙(T)

 

概説

 作曲者自身ファンタジー・リリックと呼んだが、オペラとバレエを融合させた舞台劇である。物語は子供を主役にしたお伽噺(とぎばなし)ではあるが、音楽は大人のための寓話劇となっている。音楽は途切れることなく続けられ、全曲でひとつの楽曲になっている。登場人物は多いが、ひとりの歌手がそれぞれいくつかの役を兼ねるのが普通である。

 モンテ・カルロでの初演も翌年のパリ初演もともに不評で、この曲の真価が認められたのは作曲者の死後のことである。

子供と魔法.png
 

 第一場 ノルマンディ地方のある古風な田舎家の一室。六歳ぐらいの坊やが宿題を前にして勉強を始めるが、すぐに遊んだり悪戯(いたずら)をしたくなる。ドアが開いてママがおやつを持って来るが、勉強は少しも進んでいない。ママは反抗的な態度をとる坊やを叱り、罰として砂糖の入っていないお茶と何も塗ってないパンを置いて出て行く。

 坊やは腹いせにティー・ポットや茶碗を放り投げて粉々に壊し、かごのリスをペン先でつっ突く。さらに猫の尻尾を引っ張ったり、暖炉の火を掻き回したり、ヤカンをひっくり返したり、壁紙をズタズタに破いたり、時計の振り子を外したり、ノートや本を破いたり、手当たり次第の乱暴をする。

 思う存分の悪戯に飽きた坊やが肘掛椅子に座ろうとすると、椅子はひとりでに動き出して、坊やを座らせないで安楽椅子とダンスを始める。すると、坊やにいじめられた他の家具も動き出す。大時計は坊やに振り子を外されたので鳴り止まないと言って動き出し、ティー・ポットは英語をしゃべりながらボクシングの構えで坊やを脅かし、中国の茶碗は「ハラキリ、雪州、早川」と言って坊やを突く。

 やがて太陽が沈んで、恐ろしさと寂しさで震えた坊やが暖炉に近づくと、火花が飛び出して来て坊やを追いかけて灰と戯れる。黄昏(たそがれ)時になって室内が暗くなり、坊やが小声で怖いなと言うと、坊やに破られて別々になっていた壁紙の羊飼いの少年と少女が悲しげに通り過ぎる。

 次に、散らかったお伽噺の一ページから美しいお姫様が現れ、本が破られたので魔法使いに殺されそうだと訴える。王子に代わって坊やがお姫様を助けようとするが、大地が裂けてお姫様は地中に吸い込まれてしまう。坊やは物語の続きを探そうとするが、出て来るのは算数の本ばかりである。坊やがそれを踏みつけると小人の算数の先生が現れて、坊やを数字のダンスに引きずり込む。

 疲れた坊やは目を回してひっくり返る。すると黒猫に続いて白猫が現れて二重唱を歌う。坊やは猫を追いかけて満月の庭に出る。

 第二場 月に照らされた明るい庭。坊やは嬉しそうに見慣れた大木の幹に寄りかかると、木はお前につけられた傷がまだ疼(うず)くと言ってうめく。

 一匹のとんぼが、坊やに捕らえられた恋人を捜して飛び回る。坊やのために妻を失ったこうもりは、子供のために餌を集めねばならないと坊やを責める。雨蛙やリスたちも集まって、それぞれ自分たちのつらさを歌う。やがて庭は動物たちで一杯になってしまう。

 坊やは動物たちが互いに愛し合っているのを見て寂しくなり、思わず「ママ」と叫ぶ。すると動物たちや木々は、悪戯な坊やを懲(こ)らしめようと飛びかかるが、そのうちに動物同士のけんかになって、一匹のリスが坊やの傍に傷ついて倒れる。坊やはリスの傷の手当てをしてやり、自分も疲れ果てて気を失う。動物たちは坊やの優しい気持ちを知って、意地悪をしたことを後悔する。動物たちは坊やを家の前に運ぶと、子供に代わって「ママ」と叫ぶ。

 家に明かりが灯るのを確かめて、坊やは良い子になったと言いながら動物たちは遠ざかって行く。一人になった坊やは月明かりに照らされて「ママ」と叫び、家に向かって両手を差しのべる。

Reference Materials



初演
1925
年3月21日 モンテ・カルロ歌劇場

台本
シドニー・ガブリエレ、クローディヌ・コレット/フランス語

演奏時間
44
分(プレヴィン盤CDによる)

参考CD
● オジェアス、コラール/マゼール指揮/フランス国立管・唱(DG

● コジェナー、シュトゥッツマン/ラトル指揮/ベルリン・フィル、ベルリン放送唱(EMI

● ダヴィニー=ワイナー、タイヨン/プレヴィン指揮/ロンドン響、アンブロジアン・オペラ唱(EMI


ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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