アリアーヌと青ひげ[全3幕]デュカス作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

P. Dukas, Ariane et Barbe-Bleue 1907

アリアーヌと青ひげ[全3幕]デュカス作曲


登場人物❖

青ひげ(B) アリアーヌ(S、Ms) アリアーヌの乳母(A) セリゼット(Ms) イグレーヌ(S) 

概説

 ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」に感銘を受けたデュカスが書いた唯一のオペラである。台本もドビュッシーと同じくメーテルリンクの戯曲を原作にして、デュカスが多少の手を入れている。夢幻的な世界が精緻な音楽によって鮮やかに浮かび上がった佳作と言える。
 

第一幕

 

 青ひげの城の大広間。戸外では農民たちの騒いでいる声が聞える。彼らは五人の先妻を殺した城の主人青ひげが、六人目の妻を娶(めと)ったという噂でもちきりである。灯りが漏れていた窓が閉まって静かになると、灯火を持った乳母がアリアーヌと一緒に現れる。乳母は、農民たちが言うようにここは危険だから逃げましょうと彼女に言う。しかし先妻たちは死んでいないと信じるアリアーヌは、この城の秘密を探ってみるのだと答え、青ひげから預った七つの鍵の中の銀の鍵を投げ捨てるので、乳母は慌ててそれを拾う。

 それは青ひげが自由に使ってよい鍵だと言ったもので、アリアーヌには興味がない。そして残りの鍵で、左右に並んだ扉を次々に開けはじめる。

 最初のひとつを開けると、そこには山になったアメジストが光り輝いている。続いて第二の扉の中はサファイア、第三の扉の中には真珠、そして第四の扉の中にはエメラルド、第五の扉の中にはルビーが積まれていて、第六の扉の中には燦然(さんぜん)と輝くダイヤモンドが入っている。

 しばし宝石に見とれていたアリアーヌは、青ひげが開けることを禁じていた第七の扉を、使用を禁じられていた金の鍵を使って明けようと、乳母の制止も聞かずに地下室に下りて行く。すると突然青ひげが姿を現わし、お前も従順な妻ではないと言ってアリアーヌを非難する。それでもアリアーヌは第七の扉を開けると、中は真っ暗で地の底から気持ちの悪い女のうめき声が聞える。

 青ひげはアリアーヌの腕を取って外に連れ出そうとするが、彼女は悲鳴をあげる。とっさに乳母は外に通じる城の大扉を開けるので、農民たちが入口に押し寄せて来て、青ひげを殺そうと投石する。アリアーヌは一転して落ち着いた態度で農民をなだめ、彼らを立ち去らせる。

第二幕

 

 薄暗い地下室。重い扉の音がして、アリアーヌと乳母は青ひげによって地下室に閉じ込められてしまう。しかしそんなことにけないアリアーヌは、ランプを手に奥に進む。するとそこには、殺されたと思われていた五人の先妻のうごめく姿があった。喜んだアリアーヌは彼女たちに駆け寄って話しかけ、元気づけて外に美しい花園があることを教える。そして彼女たちの名前を尋ねたり身の上話を聞いたりして、ここから逃げ出しましょうと言う。しかし先妻たちはすっかりあきらめている様子で、脱出する意欲も気力も失われている。

 アリアーヌが石を拾って投げると、扉の上の大きなガラスが割れ、外から太陽の光が射し込んで来て、海と空が大きく広がっている風景が目の前に見える。一同は岩を登って外に出る。久し振りに見る外の明るい光景に五人の先妻は喜び歌う(「オルラモンドの五人の娘」)。


第三幕

 

 第一幕と同じ大広間。六つの扉は開かれたままで、六人の妻たちはめいめいに衣裳や宝石を身に着けて夢中になっている。アリアーヌはメリザンドの美しさを褒め、セリゼットはアリアーヌがいてくれるならばずっとこの城にいても良いとまで言う。しかしアリアーヌは先妻たちに、衛兵のすきを見て青ひげが不在の間に城を脱出しましょうと言う。

 そこに乳母が駆け込んで来て青ひげの帰還を告げる。先妻たちは悲鳴をあげ、恐る恐る城外の様子を眺めて萎縮してしまう。しかし青ひげはなかなか部屋に入って来ない。彼女たちの話によって、青ひげが城に着いたところを農民たちの群れに襲われて、血まみれになって倒れたことがわかる。

 兵士たちが城門を開けるので、農民たちが傷ついた青ひげを運び入れる。彼らはアリアーヌに殺人鬼の青ひげを殺すことに協力しようと申し出るが、彼女はそれには及ばないと言って人々を帰らせる。

 先妻たちは青ひげに駆け寄って彼を介抱する。アリアーヌも、乳母の反対にも拘らず青ひげを縛っていた綱を解いてやり、傷の手当てを施す。ようやく自由になった青ひげは静かに起き上がり、傷ついた手で妻一人一人に挨拶をする。

 しかしアリアーヌの番になると、彼女は青ひげの手を取って静かに別れを告げる。彼女は先妻たちに今は城門が開かれているので一緒に城を出ましょうと言うが、誰もアリアーヌの後を追おうとはしない。一人アリアーヌは乳母を伴い、先妻たちに「お幸せに」と言って出て行く。

 

Reference Materials



初演
1907
年5月10日 パリ・オペラ・コミック座

原作
モーリス・メーテルリンクの同名戯曲

台本
ポール・デュカス/フランス語

演奏時間
第1幕32分、第2幕37分、第3幕47分(ド・ビリー盤CDによる)

参考CD
● ポラスキ、ヘンシェル、ユン/ド・ビリー指揮/ウィーン放送響、スロヴァキア・フィル唱(Oehms

● シージンスキー、バキエ、パウノヴァ/ジョルダン指揮/フランス放送フィル・唱(Er

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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