ペレアスとメリザンド[全5幕]ドビュッシー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

C. A. Debussy, Pelléas et Mélisande 1893~1902

ペレアスとメリザンド[全5幕]

登場人物❖

ペレアス(T、Br) ゴロー(Br) アルケル(B) イニョルド(S) メリザンド(S) 

ジュヌヴィエーヴ(A)他

概説

 ドビュッシー唯一の完成されたオペラであり、近代オペラの最重要作のひとつ。抒情的な音楽と、ニュアンス豊かなフランス語の発音が見事に結びついた幻想的なオペラである。曲は独立したレシタティーヴォやアリア等はなく、全体の美しい音楽の流れに特徴がある。

 

第一幕

 

 第一場 森の中。狩りで道に迷ったゴローは、金の冠を水の中に落として泉のほとりで泣きぬれている神秘的な乙女を見つける。おびえている彼女はメリザンドという名前以外はほとんど答えない。あたりが暗くなりかけたのでゴローは彼女をなだめると、一緒に道を探しながら歩き出す。

 第二場 城の広間。ゴローが異父弟のペレアスに宛てた手紙を、老王アルケルの娘ジュヌヴィエーヴが王に読んで聞かせている。それによると、王の孫ゴローは先妻の死後に再婚約者との婚約を破棄してメリザンドと結婚したと記され、王の許しを請うているので、老王は独り暮らしも半年経って不憫だからとゴローの結婚を許す。そしてゴローを城へ迎え入れる合図の明かりを塔に灯すよう命じる。

 第三場 城の前。ジュヌヴィエーヴに伴われたメリザンドが海の方を見ていると、ペレアスが上って来る。嵐の来る気配にメリザンドは海に出ていく船の難破を心配するが、メリザンドに気のあるペレアスは、わざと明日出航すると語って彼女を不審がらせる。

第二幕

 

 第一場 庭園の泉のほとり。ペレアスはメリザンドを泉のほとりに誘い、盲目の泉と呼ばれる由来を説明し、ゴローとの結婚の経緯を問う。メリザンドは話をそらしながら水と戯れているうちに、過って結婚指輪を水の中に落としてしまう。

 正午の鐘が鳴って二人は城に戻るが、ペレアスはメリザンドに、ゴローに指輪のことを尋ねられたら正直に答えるよう言う。

 第二場 城内の一室。ゴローはベッドに横たわり、正午の鐘が鳴った時に落馬したとメリザンドに語る。彼は看病するメリザンドを気遣うが、彼女の指に指輪がないのに気づいて問いただす。メリザンドは海辺ので失くしたと嘘をつくが、怒ったゴローはペレアスと一緒にすぐに探しに行くよう命じる。

 第三場 海岸の洞窟の前。ペレアスとメリザンドは、指輪を失くしたと偽った洞窟にありもしない指輪を探しにやって来る。しかし、月明かりに照らされた洞窟の中に三人の乞食(こじき)がたむろしているのに恐れをなして城へ戻る。

第三幕

 第一場 城の塔の一室。星明かりの夜、メリザンドが塔の窓辺で長い髪をすいていると、ペレアスが下の小道をやって来る。彼は明日旅立たねばならないと言って彼女に恋を打ち明け、頭上に垂れ下がったメリザンドの金髪を抱擁(ほうよう)して戯れているところに、突然ゴローが現れる。ゴローは子供じみた愚かしい行為をたしなめると、ペレアスを連れ去る。

 第二場 城の地下窟。翌日、ゴローは城の地下にある薄気味悪い場所にペレアスを連れて行く。死の臭気に息が詰まりそうになったペレアスは恐れをなし、ゴローを促して外に出る。

 第三場 地下窟の出口のテラス。やっと地上に出て、さわやかな空気に息をついたペレアスはほっとする。ゴローはペレアスに、メリザンドは間もなく母になる身だから疑われるような真似はしないよう、彼女に近づかないことを忠告する。

 第四場 城の前。ゴローは先妻との間にできた幼い少年イニョルドを抱き上げ、メリザンドとペレアスがよく一緒にいるかと尋ねる。イニョルドからやっとのことで二人がいつも一緒で、一度だけ抱き合っていたと聞き出した時、メリザンドの部屋に明かりが灯る。

 ゴローはイニョルドを肩に乗せて部屋の中をのぞかせると、ペレアスとメリザンドが一緒にいると言う。ゴローはもっとよく見るように言うが、イニョルドがむずかるので、しかたなしに下に降ろす。

第四幕

 

 第一場 城内の一室。父親の寝室から出て来たペレアスは、メリザンドに出会う。父から死相が出ているから明日旅に出るよう命じられたペレアスは、メリザンドに今夜もう一度泉のほとりで会ってほしいと頼む。

 第二場 城内の一室。老王がメリザンドを不憫に思って彼女と話をしているところにゴローが現れ、彼女の不貞を激しく責めて手荒い仕打ちを加える。見かねた老王が制止するのでゴローは出て行くが、メリザンドはあの人はもう自分を愛していないと嘆く。

 第三場 城の築山。イニョルドが岩の間に入ったボールを取ろうと大きな石を持ち上げようとしていると、殺場に向かう羊の群れが通りかかる。それを見たイニョルドは、急に何かを思い立って立ち去る。

 第四場 庭園の泉のほとり。ペレアスが待っているところにメリザンドが現れる。二人は愛を告白して激しく抱き合う。その時庭園の扉が閉められ、ゴローが姿を現してペレアスを刺し殺し、逃げるメリザンドを追いかける。

第五幕

 

 城内の一室。ゴローの子を産んだメリザンドは瀕死の床にあり、人々が彼女を取り囲んでいる。ゴローは自責の念にかられながらも、メリザンドにペレアスとの関係を問いただすが、彼女はペレアスを愛しはしたが肉体関係はないと答える。

 老王が生まれたばかりの子供をメリザンドに見せるが、彼女は静かに息を引き取る。老王は、彼女の代わりにこの子が生きるのだと言って、赤ん坊を抱いて部屋を出て行く。

 

Reference Materials



初演
1902
年4月30日 パリ・オペラ・コミック座

原作
モーリス・メーテルリンクの同名戯曲

台本
クロード・ドビュッシー(一部改作)/フランス語

演奏時間
第1幕27分、第2幕28分、第3幕27分、第4幕40分、第5幕26分(アバド盤CDによる)

参考CD
● バルボー、シュターデ、スティルウェル、ファン・ダム、ライモンディ/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツ・オペラ唱(EMI

● パーチェ、ユーイング、ル・ルー、ファン・ダム、クールティス/アバド指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG

参考DVD
● ハグリー、アーチャー、マクスウェル、コックス、ウォーカー/ブーレーズ指揮/ウェールズ・ナショナル・オペラ管・唱(DG

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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