詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
フランスオペラ
G. Charpantier, Louise 1890~1900
ルイーズ[全4幕]シャルパンティエ作曲
❖登場人物❖
ルイーズ(S) ジュリアン(T) ルイーズの父(B) ルイーズの母(Ms)他
❖概説❖
フランスの自然主義を代表するオペラで、パリの市民生活の雰囲気が生き生きと描かれている。初演の成功は圧倒的なものがあり、翌年2月22日に100回目を、作曲者が死去した1956年2月19日までに998回の公演が持たれた。
第一幕
パリのモンマルトルにある労働者住宅の屋根裏部屋、四月の夕方。お針子ルイーズが、母の帰りを気にしながら向かいのテラスに立つ詩人ジュリアンと愛を語り合っていると、不意に母親が帰って来て娘を部屋に引きずり込む。母親は定職のないジュリアンを好ましく思っていない。
やがて仕事で疲れ切った父親が帰って来て夕食となる。食後に父親は手紙を取り出して、またジュリアンからルイーズとの結婚許可を求める手紙が来ているから、一度彼を呼んでみようと言う。
しかし母親は、あんな男はとんでもないと怒り出すので、父親はルイーズに彼をあきらめるよう諭す。父親はルイーズに新聞を読んでくれるよう頼むので、彼女は泣きながら読む。
第二幕
第一場 モンマルトルの丘の麓の四つ辻、四月の早朝。貧しい労働者の一日が始まる頃、朝帰りの男が新聞売りの娘をからかう。牛乳屋の女が男を追い払うが、走り去る男にぶつかって尻餅をついた屑屋は、自分の娘があいつに誘惑されて家出したと苦々しく語る。
警官が来て、たむろしている浮浪者を追い払う。やがてジュリアンがボヘミアンの芸術仲間たちと現れる。ジュリアンだけがそこ残って、洋装店へ勤めに来るルイーズを待ち伏せる。母親に送られて来たルイーズが一人になったところにジュリアンが現れて彼女を口説くが、彼女はあなたが好きだが今はどうにもならないと迷惑そうに仕事場に駆け込んでしまう。
第二場 お針子の仕事部屋。陽気な仕事場の中でひとりルイーズが黙り込んでいる。皆は彼女は恋をしていると冷やかす。そこに楽団を引き連れたジュリアンがやって来て、窓辺でセレナードを歌う。
お針子たちははじめは喜んで騒いでいるが、ジュリアンの深刻な調子の歌に興ざめして罵り出す。耐え切れなくなったルイーズは、気分がすぐれないので帰ると言って、ジュリアンの後を追う。
第三幕
モンマルトルの丘の頂にある小さな公園、初夏の黄昏(たそがれ)時。ジュリアンと同棲生活を始めたルイーズは、眼下に広がるパリの街を眺めながら愛の喜びを歌う(「その日から」)。ジュリアンは親のエゴを批判し、自由と快楽を主張する。二人はパリを賛美して、やがて公園の一角に建つ宿屋に姿を消す。
ボヘミアンたちが現れ、浮浪者や近所の人々も集まって騒ぎ出す。その最中にルイーズの母親が現れるので、ジュリアンは思わず身構えるが、彼女は父親の具合が悪いからルイーズに一時家に帰るように言う。ルイーズは後ろ髪を引かれる思いで家に帰ることにする。
第四幕
第一幕と同じ部屋。母親は、ジュリアンのテラスがなくなったので見晴らしが良くなったと言う。久しぶりに仕事に出かけて疲れて帰って来た父親は、家庭の幸せが崩れ去ったのを嘆く。
食後父親はルイーズを抱きしめて、昔に戻って欲しいと言うが、彼女は強く自由恋愛を主張するので、父親は興奮して怒り出す。ルイーズは、すぐ自分を返す約束だったと両親をなじってジュリアンの名を叫ぶ。
怒った父親は我を忘れてルイーズを追い出すので、彼女は悲鳴をあげて飛び出す。やがて興奮から覚めた父親はルイーズを追いかけるが、彼女の姿はもうない。茫然とした父親はパリの街を呪う。
第五幕
ドン・キショットの死。古い森に通じる道。長い遍歴で病を得たドン・キショットは、木の幹にもたれて眠っている。死を間近に控えた彼の傍らで、サンチョは一心に祈っている。最期の時が迫っていることを悟ったドン・キショットはドゥルシネへの思いを回顧し、忠実なサンチョに美しい島を与えることを約束する。遠くからドゥルシネの歌声が聞える中で、ドン・キショットは息絶える。
Reference Materials
初演
1900年2月2日 パリ・オペラ・コミック座
台本
ギュスターヴ・シャルパンティエ/フランス語
演奏時間
第1幕38分、第2幕48分、第3幕50分、第4幕35分(プレートル盤CDによる)
参考CD
●コトルバス、ドミンゴ、ベルビエ、バキエ/プレートル指揮/ニュー・フィルハーモニア管、アンブロジアン・オペラ唱(SONY)
●ロット、プリュエット、ゴール、ブラン/カンブルラン指揮/王立モネ劇場管・唱(Er)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止
◀︎◀︎◀︎ ドン・キショット ペレアスとメリザンド ▶︎▶︎▶︎