タイス[全3幕]マスネ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

J. Massenet, Thaïs 1892~93

タイス[全3幕]マスネ作曲


登場人物❖

アタナエル(Br) ニシアス(T) パレモン(B) タイス(S) アルビーヌ(Ms

概説

 抒情的かつ神秘的な題材をもとに、官能豊かな音楽で彩られたマスネの傑作のひとつで、通俗的な親しみやすさを持っている。ワーグナー風の無限旋律によって全曲が統一されており、第二幕の間奏曲は「タイスの瞑想曲」としてヴァイオリン独奏で単独に演奏されるほど有名である。

 

第一幕

 

 第一場 四世紀、ナイル河畔テバイードにある修道院。修道士たちが粗末な食事を取っている。彼らが長らく故郷アレクサンドリアに帰っている修道士アタナエルのことを心配しているところに、彼が戻って来る。彼はアレクサンドリアがタイスという遊女に惑わされて淫らな町になってしまったと報告する。修道士の長老パレモンは俗世のことは忘れるように忠告し、修道士たちはそれぞれの庵に引き上げる。一人その場で居眠りしたアタナエルは、夢の中で半裸になって踊るタイスを見る。目を覚ましたアタナエルは、かつて恋したタイスを改心させようと決意して、再びアレクサンドリアに向かう。

 第二場 アレクサンドリア。旧友ニシアスの邸宅を訪れたアタナエルは、みすぼらしい身なりをしているので乞食扱いにされそうになる(「これぞ恐ろしき町」)。アタナエルは女奴隷を従えたニシアスに、タイスを愛欲の世界から救うために彼女に会わせて欲しいと頼む。実はニシアスは大金をつぎ込んでタイスを愛人として囲っているので、彼に夜の宴に加わるように言う。ただし彼女をキリスト教に改心させると、ヴィーナスの怒りを買うだろうと忠告する。

 アタナエルは衣裳を着替えて宴の席に加わり、神の名のもとにタイスを改宗させようと叫ぶ。しかしタイスはそのような願いには耳を貸さないばかりか、今夜自分の家に来るようにアタナエルを誘惑するので、彼は恐怖からその場を逃げる。

第二幕

 

 第一場 タイスの家。戻ってきたタイスは一人になると、享楽の生活に飽きつつも鏡に向かって歌い、永遠の美をヴィーナスに願う(「私を美しいといって」)。そこに訪れたアタナエルは、ふしだらな生活と訣別して信仰に生きるよう熱心に説得するので、タイスはしだいに彼の話に心を動かされはじめる。遠くから彼女を呼ぶニシアスの声が聞こえる。アタナエルは今宵一夜、門前で彼女を待つと告げる。タイスは一人悩んで泣き出す。


  〈間奏曲(瞑想曲)〉


 第二場 タイスの家の前。夜明け前、外でアタナエルが待っているところにタイスは粗末な衣服をまとって出て来て、神の教えに従う決心をしたことを告げる。アタナエルは彼女を尼僧院に入れることを決意して、すべての財産を燃やすことを要求する。タイスはニシアスからの贈り物であるヴィーナスの像だけは持って行きたいと言うが、アタナエルは嫉妬に燃えるかのようにその像を床に叩きつけて壊してしまう。

 友人を伴ったニシアスが上機嫌で現れ、これまでタイスに払ったよりも何倍もの金を賭博で儲けたと言い、踊り子たちを舞わせる。そこに粗末な身なりに着替えたタイスとアタナエルが現れて、家に火を放つ。火事を知った群集は、町一番の美女を失うことに怒って騒ぎ出すが、タイスが信仰に目覚めたことを知ったニシアスは、賭博で儲けた金貨をばら撒いて人々の気をそらすので、その間にタイスとアタナエルはニシアスに感謝して逃げる。

 

第三幕

 第一場 砂漠のオアシス。灼熱の砂漠を旅したタイスはもう歩けない。苦痛が罪を救うと教えるアタナエルは、彼女のために水を汲んで来て飲ませる。タイスは彼の優しさに触れて感謝する。尼僧長アルビーヌと尼僧たちが現れてタイスを尼僧院に連れて行くので、アタナエルは彼女にもう二度と会えないと悟りつつ見送る。

 第二場 テバイードの修道院。修道院に戻ったアタナエルは、タイスに思い焦がれて食事も十分に喉を通らないので、修道士たちが心配している。パレモンはそんなアタナエルに、アレクサンドリアに行く前に俗界に交わらないようにと忠告したことを思い出させ、神が守ってくれるだろうと言って立ち去る。アタナエルは半裸で踊るタイスの幻影にうなされ、彼女の死を告げる神の声を聞く。アタナエルはひと目彼女に会いたいと僧院を飛び出して行く。

 第三場 尼僧院の庭。衰弱しきったタイスは死の床にある。アルビーヌはタイスが三ヶ月間熱心に神に祈った結果、彼女の魂が浄化されたと語る。そこにアタナエルが飛び込んで来るので、タイスは教えに従って永遠の美と不滅の魂を得たことを彼に感謝する。現世の愛欲の虜(とりこ)になっているアタナエルは、彼女を愛していたことを打ち明けるが、タイスは天使に迎えられて息絶える。

 

Reference Materials



初演
1894
年3月16日 パリ・オペラ座

原作
アナトール・フランス/「タイス」

台本
ルイ・ガレ/フランス語

演奏時間
第1幕44分、第2幕55分、第3幕43分(マゼール盤CDによる)

参考CD
●シルス、ミルンズ、ヴァン・アラン、ゲッダ/マゼール指揮/ニュー・フィルハーモニア管、ジョン・オールディス唱(EMI

参考DVD
●メイ、ペルトゥージ、ジョイナー、フェル/ヴィオッティ指揮/ヴェネツィア・フェニーチェ座管・唱(Den

●フリットリ、アタネリ、リベラトーレ/ノセダ指揮/トリノ王立劇場管・唱(Art

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



 

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