ウェルテル[全4幕]マスネ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

J. Massenet, Werther 1891

ウェルテル[全4幕]マスネ作曲


登場人物❖

ウェルテル(T) アルベール(Br) シャルロット(Ms) ソフィー(S) 大法官(B) シュミット(T) ヨハン(B)他

概説

「マノン」「タイス」と並ぶマスネの代表的なオペラで、ゲーテの作品にひそむ感傷的な面を、情熱を内に秘めた抒情的な音楽によって表現している。初演はドイツ語であったが、フランス語による初演は1893年1月16日パリ・オペラ・コミック座で行われた。

 

第一幕「大法官の家」

 

 フランクフルト近郊の大法官の家の庭に面したテラス。ある夏の日、大法官は庭先で小さな子供たちにクリスマスの歌の練習をさせている。やっと上手に歌えるようになったころに、大法官を訪ねて友人のヨハンとシュミットがやって来る。娘のソフィーも出迎えて、姉娘シャルロットのことや、姉妹のいとこに当たる詩人ウェルテル、シャルロットの許嫁(いいなずけ)のアルベールらの噂話をする。ヨハンとシュミットは、大法官と晩に酒場で会う約束をして帰る。

 やがて農夫に道案内されたウェルテルがシャルロットを舞踏会にエスコートするためにやって来て、あたりの美しい田園風景をたたえる(「おお、恵みに満ちた自然よ」)。シャルロットは亡き母に代わって弟妹たちの食事の世話をしてから、ウェルテルとともに舞踏会に出かける。大法官も酒場に出かけてソフィー一人になったところに、仕事で半年間旅に出ていたアルベールが訪れる。アルベールはソフィーから、シャルロットの愛が変わらなかったと聞いて満足して立ち去る。

 夜になって月の光が周囲を照らす頃、シャルロットはウェルテルに送られて舞踏会から戻って来る。シャルロットがウェルテルに別れを告げて家に入ろうとすると、彼女の魅力に惹かれ始めたウェルテルはついに恋心を打ち明ける。その時、家の中からアルベールが帰って来たと告げる父親の声が聞こえる。シャルロットは、自分には亡き母の遺志で既に許嫁がいるとウェルテルに告げて家の中に入ってしまう。それを聞いてウェルテルは絶望の叫びを発する。

 

第二幕「菩提樹」

 

 ヴェツラールの町の教会の前の広場。牧師の金婚式のミサのために人々が教会に集まって来る。結婚して三ヶ月になるシャルロットとアルベールもやって来て、菩提樹の下のベンチに腰を下ろして幸福な生活を語らい、教会に入る。その仲睦まじそうな様子を遠くからじっと眺めていたウェルテルは、心の中の苦しみを独白する。そして悄然(しょうぜん)とベンチに座っていると、教会から出て来たアルベールが近づいて話しかける。彼はウェルテルがシャルロットを深く愛しているのを知っていて、ウェルテルの夢を破ったことをわびる。しかし、アルベールは妻の貞節とウェルテルの良識とを信じている。

 そこにソフィーがアルベールを踊りに誘いに来るので、アルベールは彼女が密かにウェルテルを愛していると告げて去る。残ったウェルテルはシャルロットを見かけて苦しい愛を訴えるが、彼女はどうか永遠に遠くへ行って欲しいと言う。しかしウェルテルの熱意に押し切られて、クリスマスの晩に待っていると答えて去る。絶望したウェルテルは永遠の別れを決意して、来合わせたソフィーにも別れを告げて走り去るが、それを聞いたシャルロットは激しい衝撃を受けて立ちつくす。

 

第三幕「シャルロットとウェルテル」

 

 アルベールの家の一室。クリスマス・イヴの夕方。シャルロットはウェルテルから来た手紙を読んでいる(手紙の歌「ウェルテルよ、誰が言えましょうか」)。彼女は読み進むうちにウェルテルに対する愛情の高まりを抑え切れなくなるが、様子を見に来たソフィーが姉を慰め、クリスマスの晩餐に誘う。

 シャルロットはソフィーを先に行かせ、神に心弱き自分を助けて欲しいと祈っていると、突然ウェルテルが入って来る。彼はシャルロットへの想いを断ち切れないと語り、何度もためらった末に約束の日にここに戻って来てしまったと言う。初めはシャルロットも平静に応対していたが、ウェルテルがオシアンの詩集を開いてその中の悲しい愛の詩に想いを託して歌うと(オシアンの歌「春風よ、なぜわれを目覚ますのか」)、感情を隠し切れずに我を忘れてウェルテルの腕の中に抱かれる。しかしすぐに我に返ると、ウェルテルの腕を振りほどき、最後の別れを告げて部屋から走り去る。ウェルテルも死を選ぶしかないと覚悟して飛び出して行く。

 ウェルテルが戻って来たことを耳にしたアルベールは、妻の様子がおかしいのに気づき、ここに誰かいたかと尋ねる。そこに使いの者がウェルテルから預った手紙を持って来る。そこには、遠い旅に立つのでピストルを拝借したいと書いてある。アルベールは妻に希望通りピストルを貸すように命じる。シャルロットは恐ろしい予感にとらわれ、ウェルテルを追って家を飛び出す。

 

第四幕「ウェルテルの死」

 

 ウェルテルの部屋。シャルロットが急いで入って来ると、血にまみれた瀕死のウェルテルが倒れている。シャルロットは気づいて目を開けたウェルテルに、最初に会った時から彼を愛していたと告白する。

 助けを呼ぼうとするシャルロットを制し、ウェルテルは死を前に二人だけで語り合うことを望む。死の前にせめて最後の口づけをとシャルロットは情熱的な接吻をする。ウェルテルは、死んだら墓地の二本の菩提樹の下に埋めて欲しいと頼み、シャルロットの腕の中で息絶える。外からはクリスマスを祝う子供たちの歌声が聞こえてくる。

Reference Materials



初演
1892
年2月16日 ウィーン宮廷歌劇場

原作
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ/「若きウェルテルの悩み」

台本
エドゥアール・ブロー、ポール・ミリエ、ジョルジュ・アルトマン/フランス語

演奏時間
第1幕43分、第2幕33分、第3幕38分、第4幕23分(プラッソン盤CDによる)

参考CD
● クラウス、トロヤノス、バルボー/プラッソン指揮/ロンドン響、コヴェント・ガーデン・シンガーズ(EMI

● ヴァルガス、カサロヴァ、コトスキ/ユロフスキ指揮/ベルリン・ドイツ響、ベルリン児童唱(RCA

● アラーニャ、ゲオルギウ、プティボン/パッパーノ指揮/ロンドン響、ティフィン児童唱(EMI

参考DVD
● アルバレス、エレート、シュラメク、ガランチャ/ジョルダン指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DEN

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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