マノン[全5幕]マスネ作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

J. Massenet, Manon 1881~83
マノン[全5幕]マスネ作曲


登場人物❖

騎士デ・グリュー(T) 伯爵デ・グリュー(B) レスコー(Br) ギョー・ド・モルフォンテーヌ(T) ド・ブレティーニ(Br) マノン・レスコー(S)他

概説

 プッチーニの「マノン・レスコー」と同じ原作によるが、マスネのオペラでは原作にかなりの手が加えられ、主人公マノンの性格描写に大きなスポットが当てられている。初演以来好評を博し、1912年の作曲者の死までに760回も上演されてた。

 

第一幕

 

 アミアンの旅籠(はたご)の中庭。好色の貴族ギョーは、友人ブレティーニや女中たちと食事のために旅篭に立ち寄る。そこに駅馬車が到着して、降り立ったマノンをいとこの近衛士官レスコーが出迎える。

 マノンは初めての旅にまだ興奮を隠し切れない(「私はまだぼんやりして」)。レスコーが荷物を取りに行っている間にマノンの美しさに惹かれたギョーが言い寄るが、戻って来たレスコーに追い払われる。レスコーはマノンに忠告を与えると(「私の目をよく見てごらん」)、再び旅篭に入る。

 マノンが修道院に入る身の上を自ら慰めているところに(「さあマノン、夢を捨てて」)、騎士デ・グリューが出発しようと旅篭から出て来る。マノンの美しさに魅せられた彼は思わず彼女に声をかけ、二人はたちまち恋に落ちる。マノンは明日修道院に入ると告げるが、彼女の身の上に同情したデ・グリューはパリへ逃げるよう勧め、二人はギョーがマノンを誘惑するために用意した馬車に乗って逃げ去る。ギョーは皆の笑い者になり、デ・グリューに復讐(ふくしゅう)を誓う。

第二幕

 

 パリのアパートの一室。マノンとデ・グリューはつつましいが幸せな生活を送っている。デ・グリューは故郷の父に結婚の許しを求める手紙を書き、マノンとともに読み上げる。

 そこに二人の居所を突き止めたブレティーニと、彼に買収されたレスコーが現れる。レスコーはデ・グリューがマノンを誘惑したことを責める。一方ブレティーニは、マノンに富と享楽のある生活をさせると言うのでマノンの気持ちは揺らぐ。

 デ・グリューが書いた手紙を出しに行っている間に、マノンは彼と別れようと決心する(「さらば、小さなテーブルよ」)。家に戻ったデ・グリューはマノンとの愛の生活を夢見るが(夢の歌「目を閉じると」)、父が差し向けた男に拉致(らち)されてしまう。

 

第三幕

 第一場 パリのセーヌ河畔のレーヌ通り。祭りの日の通りはさまざまな店でにぎわっている。ブレティーニの愛人になって美しく着飾ったマノンも遊びに来て、さっそうと歩いている(「私が女王のように町を行くと」)。

 彼女はデ・グリューの父伯爵に出会い、彼がサン・シュルピスの神学校に入ったと聞かされる。ショックを受けたマノンは、彼女の歓心を買おうとギョーが雇った踊り子に見向きもせずに、サン・シュルピスの神学校へ馬車を走らせる。

 第二場 サン・シュルピスの神学校。信者たちが礼拝堂から現れ、デ・グリュー神父の説教が素晴らしかったと話し合っている。父伯爵も息子の聖職への決意が固いのを知り、息子を激励して出て来る。

 デ・グリューは忘れようとしても忘れ切れないマノンの面影を想っていると(「消え去れ、優しい面影よ」)、突然マノンが面会を求めてやって来る。驚いたデ・グリューは彼女に帰るように言うが、マノンの情熱的な愛の告白に負けて、二人はしっかり抱き合う。


第四幕

 パリのトランシルヴァニア・ホテルの豪華な広間。大勢の人々が賭博(とばく)にふけっている。レスコーも賭博に加わって大勝ちし、愛人の三人の女優を伴って入って来たギョーは陽気に歌う。

 そこにマノンとデ・グリューが入って来る。二人は元の甘い生活に戻ったものの、マノンは享楽生活の習慣から抜け出せず、デ・グリューは母親の遺産を全部使い果たしてしまった。マノンは彼に賭博で稼ぐよう勧め、気の進まない彼を連れてここにやって来たのである。二人を見かけたギョーは、マノンへのからデ・グリューに勝負を挑む。デ・グリューは調子に乗って勝ちまくり、マノンは大喜びする。女も奪われ、賭けにも負けたギョーは怒り狂って勝負を止めると、デ・グリューをいかさま師だと罵って出て行く。

 突然のできごとに皆が騒いでいるところに、警官を連れたギョーが戻って来る。彼はデ・グリューとマノンを指差して、あいつがいかさま師だと告発する。そこに現れた父伯爵も墜落した息子の連行を認めるので、二人は逮捕される。

第五幕

 

 ル・アーブルに通じる街道。父伯爵の計らいで自由の身になったデ・グリューは、アメリカへの流刑が決まったマノンを路上で取り戻そうと仲間とともに待ち伏せしている。レスコーは無謀な方法は止めるよう忠告するが、いざとなると護送の兵士に恐れをなして仲間が逃げてしまうので、計画は失敗する。

 デ・グリューに同情したレスコーは金で護送の隊長を買収し、一時的にマノンは釈放される。やっとの思いでデ・グリューに会えたマノンが彼の腕の中に飛び込むと二人は熱い抱擁を交わし、マノンはデ・グリューに自分の罪を詫びる。デ・グリューは彼女に一緒に逃げようと言うが、体が衰弱しきったマノンは死期が近いのを悟って、彼との楽しかった日々を回想して最後の接吻をする。

 デ・グリューは彼女を励ますが、やがてマノンは力なく彼の腕の中に崩れ落ちると、これがマノン・レスコーの物語よとつぶやいて息絶える。デ・グリューは絶望のあまり、マノンの体の上に身を投げる。

Reference Materials



初演
1884
年1月19日 パリ・オペラ・コミック座

原作
アベ・プレヴォ/「マノン・レスコーと騎士デ・グリューの物語」

台本
アンリ・メイヤック、フィリップ・ジル/フランス語

演奏時間
第1幕38分、第2幕31分、第3幕55分、第4幕19分、第5幕20分(プラッソン盤CDによる)

参考CD
●コトルバス、クラウス、キリコ、ファン・ダム/プラッソン指揮/トゥールーズ・カピトール管・唱(EMI

●ゲオルギウ、アラーニャ、パトリアルコ、ファン・ダム/パッパーノ指揮/王立モネ劇場管・唱(EMI

参考DVD
●フレミング、アルバレス、セネシャル/ロペス=コボス指揮/パリ・オペラ座管・唱(DEN

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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