カルメン[全4幕]ビゼー作曲

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オペラ名作217 もくじはこちら

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

G. Bizet, Carmen 1873~74

カルメン[全4幕]ビゼー作曲


登場人物❖

カルメン(Ms) ドン・ホセ(T) エスカミリオ(Br) ダンカイロ(T) レメンダード(T) スニガ(B) モラレス(Br) ミカエラ(S) フラスキータ(S) メルセデス(S)

概説

 世界で最も親しまれているオペラのひとつであるが、初演時はさほどの評判にはならず、ビゼーはその年の秋に世を去った。ウィーン上演のために台詞をレチタティーヴォに直す仕事は友人のエルネスト・ギローの手で進められ、グランド・オペラ・スタイルの「カルメン」は1875年10月23日、ウィーン宮廷歌劇場で上演されて成功を収めた。近年は再び台詞入りのオペラ・コミック・スタイルの原典版で上演されることが多い。

カルメン.png
 「カルメン」

第一幕

 

 セビリアの煙草(たばこ)工場前の広場。衛兵たちが広場を往来する人々を眺めていると、伍長のホセを訪ねて恋人の村娘ミカエラが来る。士官のモラレスは、間もなく衛兵の交代で彼が来るからここで待つように言うが、ミカエラはまたあとで来ると言って立ち去る。衛兵の交代が行われ、隊長のスニガや伍長のホセがやって来る。煙草工場が昼休みの時間になり、女工たちが煙草をふかしながら工場から出て来ると、若い男たちが彼女らを迎える。

 その中をカルメンが現れ、言い寄る男たちを相手にせずホセに流し目を送ると、魅惑的なハバネラを歌い(「恋は野の鳥」)、彼に赤い花を投げつけて走り去る。ホセが拾い上げてうっとりしているとミカエラが現れ、彼女から彼の母からの手紙とキスを受け取る。そしてホセは、母の言う通りミカエラとの結婚を決意する。

 ミカエラが帰った後、工場の中で突然騒ぎが起きて、女工たちが口々にわめきながら走り出て来る。隊長の命令で工場に入ったホセはカルメンを引き立てて来る。ふてぶてしい態度に、隊長はカルメンに牢獄入りを命じる。しかしカルメンはセギディーリアを歌ってホセを誘惑し(「セビリアの砦の近くに」)、町外れの酒場で会おうと言う。その誘惑に抗し切れなくなったホセは、ついにカルメンの手を縛った縄をゆるめてやる。いよいよ令状を持って護送しようとする時、カルメンはホセを突き飛ばして高笑いしながら逃げ去る。

第二幕

 

 セビリアの町外れにあるリリアス・パスティアの酒場。カルメンは仲間のフラスキータやメルセデスとともに客の相手をし、にぎやかに「ジプシーの歌」を歌う(「ひびきも鋭く」)。客として来ていた隊長のスニガは、カルメンを逃亡させた罪で牢に入っていたホセが今日釈放されたと彼女に告げる。

 そこに闘牛士エスカミリオが現れ、勇ましい「闘牛士の歌」を高らかに歌って皆のを浴びる(「諸君の乾杯を喜んで受けよう」)。エスカミリオはカルメンに惹かれるが、彼は間もなく人々を連れて立ち去る。客が去ると、密輸業者のダンカイロとレメンダードは、カルメンたち三人のジプシー女を仲間に入れようとするが、カルメンは今夜は男を待つから駄目だと言う。

 遠くからホセの声が聞こえる。彼を迎えたカルメンはカスタネットを鳴らしながら歌って歓待するが、帰営のラッパが聞こえるのでホセは帰ろうとする。カルメンが勝手にしろと怒ると、ホセはカルメンが投げた赤い花を取り出して彼女への想いを訴える(花の歌「おまえが投げたこの花は」)。カルメンは、それなら軍隊から脱走して密輸業者の仲間に入れと誘う。その時隊長が戻って来てホセがいるので、隊に帰るよう命令する。そして命令に従わないホセと決闘になるが、密輸業者たちが出て来て彼を取り押さえる。ホセはしかたなしに密輸業者の仲間に加わる。


第三幕


 寂しい山中のジプシーの密輸業者たちの根城。密輸業者たちが重い荷物を担いで来て、休息する。カルメンはもうホセを愛していない。フラスキータとメルセデスはカード占いを始める。カルメンも仲間になってカード占いを始めるが(「さあ、私の番をやってみよう」)、占いはすべて死と出るので当惑する。密輸業者たちが荷物を持って出かけ、ホセが一人見張りに残る。

 そこに案内人がミカエラを連れて来る。ミカエラはホセを連れ戻す決意を歌うが(「何を恐れることがありましょう」)、人影を見つけたホセが銃を撃つので、岩陰に隠れる。現れたのはエスカミリオで、恋仇のホセとエスカミリオは決闘になる。エスカミリオが刺されそうになった時、カルメンや密輸業者たちが駆けつけて二人の間に分け入る。エスカミリオはカルメンたちを闘牛に招待して立ち去る。その時、岩陰にいたミカエラが見つけ出される。彼女はホセの母親の病気を告げるので、もうホセへの愛が冷めたカルメンは彼に下山を勧める。ホセはカルメンに未練を残しながらも下山する。

第四幕

 

 セビリアの闘牛場前の広場。広場は群衆でにぎわっている。闘牛士たちが次々と闘牛場に入場し、人々の歓呼の中にエスカミリオもカルメンを伴って現れる。カルメンと愛の言葉を交わしてエスカミリオは闘牛場に姿を消す。一人残ったカルメンにフラスキータとメルセデスは、ホセが来ているから気をつけるように警告して去る。

 やがて現れたホセは、カルメンにもう一度やり直そうと執拗に懇願するが、カルメンはもう終わりだと冷たく突き放す。闘牛場内から大歓声が聞こえるのでカルメンが場内に入ろうとすると、ホセが行く手を遮る。カルメンは死んでもエスカミリオを愛していると言い、ホセから貰った指輪を投げつける。嫉妬(しっと)に狂ったホセは隠し持っていた短刀でカルメンを刺し殺す。闘牛場から出て来た人々は、あまりの惨状に立ちすくむ。ホセはカルメンの体の上に身を投げ、彼女への愛を口にしながら号泣する。

Reference Materials



初演
1875
年3月3日 パリ・オペラ・コミック座

原作
プロスペル・メリメの同名戯曲

台本
リュドヴィク・アレヴィ、アンリ・メイヤック/フランス語

演奏時間
第1幕50分、第2幕40分、第3幕39分、第418分(プレートル盤CDによる)

参考CD
●バルツァ、リッチャレッリ、カレーラス、ファン・ダム/カラヤン指揮/ベルリン・フィル、パリ・オペラ座唱(DG

●カラス、ギオー、ゲッダ、マッサール/プレートル指揮/パリ・オペラ座管、ルネ・デュクロ唱(EMI

参考DVD
●バンブリー、フレーニ、ヴィッカーズ、ディアス/カラヤン指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DG

●オブラスツォワ、ブキャナン、ドミンゴ、マズロク/クライバー指揮/ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場唱(DEN

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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