真珠採り[全3幕]ビゼー作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

G. Bizet, Le Pêcheurs de Perles 1862~63

真珠採り[全3幕]ビゼー作曲


登場人物❖

レイラ(S) ナディール(T) ズルガ(Br) ヌーラバット(B)

概説

 ビゼーにとって最初の本格的なオペラであり、彼の出世作となった。初演が不評だったために2ヶ月後にはオペラ・コミック座のレパートリーから外され、1886年になって蘇演されるに至った。なお台本の場所をメキシコからスリランカ(セイロン)に変えたのはビゼーである。

 

第一幕

 

 未開時代のセイロン島の荒涼とした浜辺。真珠採りの漁夫や女、子供たちが集まって酒に酔い、歌い踊っているところに漁夫のズルガが現れ、新しい頭領を選ぶ時が来たと告げる。皆は仲間のズルガを頭領に選び、服従を誓う。そこに長い間遠くへ行っていたズルガの旧友ナディールが姿を現すので、人々は驚く。ナディールは草原や森で獲物を追っていた生活を物語り、ズルガや漁夫たちは暖かく彼を再び仲間に迎える。漁夫たちが去り、ズルガとナディールが残る。二人は昔バラモンの尼僧レイラへの恋で争った間柄であるが、過去を水に流して永遠の友になることを誓う(「神殿の奥深く」)。

 その時、高僧ヌーラバットに付き添われた尼僧を乗せたカヌーが着く。顔をヴェールで覆った尼僧は、漁夫の安全と豊漁を祈るためにやって来たのである。ズルガは彼女に一生ヴェールを外さずに純潔を守ることを誓わせ、もしこの誓いを破れば死罪にすると申し渡す。ナディールは尼僧の声を聞いて、彼女が昔の恋人レイラであると気づき、レイラもナディールの姿を認めて手が震える。それを知ったズルガは、今ならまだ誓いを取り消せると言うが、レイラは誓いを守ると言って寺院に向かう。

 一人残ったナディールは、自分が今なおレイラを愛していることを悟り、耳に残る彼女の声をもう一度聞きたいと歌い(「耳に残るは君の歌声」)、ひと休みするうちに眠ってしまう。ヌーラバットはレイラを海に突き出た崖の上に導き、ここで漁夫の安全を祈るように命じて立ち去る。

 レイラは祈祷(きとう)を始め、僧侶たちが崖の下で神をたたえている。その声で目覚めたナディールは崖の下に近づき、一瞬ヴェールを取った尼僧がレイラであると確認する。ナディールは驚喜してレイラに呼びかけ、彼女も他人に気づかれないように歌の中で彼に答える。

 

第二幕

 

 海を見下ろす荒れ果てたインド寺院。ヌーラバットは、真珠採りの舟が無事戻ったから今日の祈祷は終わりにしてよいとレイラに言い、この寺院に一人留まってズルガとの誓いを守り、今後も祈祷を続けるように命じる。レイラは幼い時に逃亡者を命がけで守り、お礼に男から首飾りをもらったことを話し、誓いは絶対に破らないと語る。ヌーラバットは武装したバラモン教徒に、崖の下で見張っているよう命じて立ち去る。

 一人闇の中に残されたレイラは恐ろしさに震えながら歌う(「いつかのような暗い夜に」)。やがて遠くからレイラの美しさをたたえながらナディールが現れる。レイラは危険だから彼に去るように言うが、彼への愛に抗し切れずに誓いを破って抱き合う。

 明晩の再会を約束して別れようとした時銃声がしてヌーラバットとバラモン教徒が現れ、逃げるナディールを追う。やがてナディールを捕らえたヌーラバットが戻り、ナディールとレイラを処刑しようとする。そこにズルガが駆けつけて人々の怒りを沈(しず)めると、友情を誓ったナディールをかばい、人々に二人を許すように言う。二人は立ち去ろうとするが、その前にヌーラバットは尼僧のヴェールを取る。尼僧がレイラであることを知ったズルガは、友情を裏切られた嫉妬(しっと)と怒りに燃えて、二人に死刑を宣告する。

 

第三幕

 

 第一場 明け方のテントのある浜辺。テントの前に立ったズルガは、激怒のあまり二人に死刑を宣告したことを悔いて自らを恥じる(「嵐も静まりおおナディール」)。そこに漁夫に引き立てられたレイラがやって来る。彼女は自分の方から誘惑したのだから、ナディールを許してやって欲しいと彼の命請いをするので、ズルガはナディールの方から自分との友情を裏切ったのではないと知って喜ぶ。しかし美しいレイラを見ているうちにズルガはナディールに嫉妬し、自分もレイラを愛していると告白する。しかしあくまでもナディールとの愛を貫こうとするレイラにズルガは怒り狂う。

 そこにヌーラバットが処刑の準備ができたと知らせに来る。この時レイラは、自分が守った逃亡者からもらった首飾りを形見として母親に託すよう頼む。それを見たズルガは、彼女が自分の命の恩人であったことを知り、彼女を助ける決心を固める。

 第二場 火刑台が用意された森の中。柱につながれたナディールを前に、人々が酒に酔って踊っている。ヌーラバットがレイラを連れて現れると、人々の怒りをよそに二人はともに死ぬ喜びを歌う。そこにズルガが駆け込んで来て、部落が火事になったと叫ぶので、皆は消火のために走り去る。ズルガはレイラに彼女が自分の命の恩人であると告白し、恩返しのために二人を逃亡させようとして村に火を放ったことを明かす。

 愛する二人はズルガに感謝して逃げる。しかしその一部始終を立ち聞きしていたヌーラバットは、戻って来た人々にズルガの裏切りを告げる。人々の刃にかかって傷ついたズルガは、レイラの名を呼びながら息絶える。遠くから無事逃げ去ったレイラとナディールの声が聞こえる。

 

Reference Materials



初演
1863
年9月29日 リリック劇場(パリ)

台本
ミシェル・カレ、ウージェーヌ・コルモン/フランス語

演奏時間
第1幕46分、第2幕33分、第3幕28分(クリュイタンス盤CDによる)

参考CD
●ミショー、ゲッダ、ブランク、マルス/デルヴォー指揮/パリ・オペラ・コミック座管・唱(EMI

●アンジェリシ、ルゲイ、ダンス、ノグェラ/クリュイタンス指揮/パリ・オペラ・コミック座管・唱(EMI

参考DVD
●マッシス、中島康晴、グラッシ、ドナート/ヴィオッティ指揮/ヴェネツィア・フェニーチェ座管・唱(DEN

 

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ ラクメ          カルメン ▶︎▶︎▶︎



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