詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より
フランスオペラ
L. Delibes, Lakmé 1880~83
ラクメ[全3幕]ドリーブ作曲
❖登場人物❖
ジェラルド(T) ラクメ(S) フレデリック(Br) ニラカンタ(B) マリカ(Ms)
エレン(S) ローズ(S) ミス・ベンソン(Ms)他
❖概説❖
イギリス統治下の十九世紀インドが舞台の異国情緒豊かな美しいオペラであるが、現地の音楽は使われていない。アリア「鐘の歌」がひときわ名高い。
第一幕
バラモン教の寺院の庭園。インド人の信徒たちが朝の祈りを捧げるなか、高僧ニラカンタはイギリス人の弾圧を憎み、彼らから解放されるよう祈る。
寺院の中から、祈りの声とともにニラカンタの娘ラクメが現れる。ニラカンタはラクメを召使ハジと侍女マリカに預けて町の祭りへ出かける。ラクメとマリカは蓮を摘みに傍の川から小舟に乗って行く。
そのすきに聖域の禁を破ってイギリス人の士官ジェラルドとフレデリック、家庭教師ベンソンとその生徒のエレンとローズの五人が庭園に忍び込み、ラクメが石の上に置いて行った宝石を見つける。そのうちフレデリックが、聖域に長居は危険だから早く立ち去ろうと言い出すので、彼らは婚約者エレンのために宝石を写生する約束をしたジェラルド一人を残して去る。
一人になったジェラルドは、異教徒の娘に怪しい思いをはせるが(「神がかった偽りの幻想よ」)、戻って来たラクメとマリカに発見される。ラクメはマリカを去らせると、ジェラルドに何をしに来たのかと問うが、二人はたちまち恋に落ちる。人の来る気配にラクメはジェラルドを逃がすが、帰って来たニラカンタは垣根が壊れているのを見つけて、聖域に忍び込んだ者への復讐(ふくしゅう)を誓う。
第二幕
インドの街の広場。広場には露店が並び、人々でごった返している。ベンソンが物売りやジプシーに絡まれて怒っている。十二時の鐘とともに市場は閉まり、バラモンの巫女(みこ)たちの踊りが始まる。
そこに乞食(こじき)に変装したニラカンタが辻歌いに変装したラクメを連れて現れ、聖域への侵入者を発見しようとしている。ニラカンタはラクメに歌わせるが(鐘の歌「若い娘はどこへ行く」)、相手は現れない。
ニラカンタはなおもラクメに歌を強制するが、ラクメは人混みの中にジェラルドを認めて気を失う。するとそれを見たジェラルドが彼女を助けようとするので、めざす男を発見したニラカンタとバラモン僧たちは、イギリス兵の行進に紛れて逃げようとするジェラルドを追いかけて行く。
その間にジェラルドはラクメのところに来るので、ニラカンタに捕まって一撃のもとに刺されて倒れる。しかし彼の傷は浅く、ラクメは忠実な召使ハジに手伝わせて彼の体を森の中に運ぶ。
第三幕
森の中の秘密の小屋。ラクメの懸命の手当てで一命を取り止めたジェラルドは、彼女の歌う子守歌で目を覚ます(「星をちりばめた空の下を」)。ジェラルドは彼女に感謝し、二人は愛の陶酔にふける。ラクメが永遠の愛を得られるという聖水を汲みに出かけるのと入れ違いにフレデリックが現れ、インド娘をあきらめて早く軍隊に戻るよう言うので、彼も軍人としての使命を思い出す。
聖水を汲んで来たラクメはジェラルドを見つめると、彼の心が変わったのに気づく。すべてが終わったと知ったラクメは毒花をんでから、ジェラルドと聖水を飲み交わして永遠の愛を誓う。しかしラクメは次第に力が抜けてジェラルドの腕の中に崩れる。
そこにニラカンタが入って来てジェラルドを殺そうとするが、ラクメは苦しい息の中から、二人は聖水を交わした仲だと言い、自分だけが贖罪(しょくざい)の犠牲になると言いながら息絶える。娘は永遠の命を得たと言うニラカンタの祈りの中に幕が下りる。
Reference Materials
初演
1883年4月14日 パリ・オペラ・コミック座
原作
ピエール・ロティ/「ロティの結婚」
台本
エドモンド・ゴンディネ、フィリップ・ジル/フランス語
演奏時間
第1幕51分、第2幕56分、第3幕31分(ボニング盤CDによる)
参考CD
●デセイ、クンデ、ルゲリネル、ファン・ダム、ハイダン/プラッソン指揮/トゥールーズ・カピトール管・唱(EMI)
●サザーランド、ヴァンゾ、カレス、バキエ、ベルビエ/ボニング指揮/モンテ・カルロ歌劇場管・唱(D)
ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止