サムソンとデリラ[全3幕]サン=サーンス作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

C. Saint-Saëns, Samson et Dalila 1869~72

サムソンとデリラ[全3幕]サン=サーンス作曲

 

登場人物❖

デリラ(Ms) サムソン(T) ダゴンの高僧(Br) アビメレック(B) ヘブライの長老(B)他

概説

サン=サーンスが生涯に書いた12曲のオペラのうちの代表作であるが、書き始めた時はオラトリオにするつもりだったという。1877年のワイマールでの初演はドイツ語訳であった。原語のフランス語初演はそれから13年後の1890年3月3日にルーアンで行われた。

第一幕

 

 パレスティナの都ガザの広場。ペリシテ人に征服されて奴隷(どれい)の境遇に落とされたヘブライ人たちが集まって、神に民族を助け給えと祈っている。そこに人々の中から青年サムソンが進み出て、神の神託によって今や立ち上がる時が来たとヘブライ人たちを勇気づけると、人々も彼に従うことを誓う。

 そこにガザの大守アビメレックがペリシテの兵士を率いて現れ、気勢を上げているヘブライの神を嘲(あざわら)うので、サムソンは神の復讐(ふくしゅう)だと言ってアビメレックに激しい敵意をむき出しにする。怒ったアビメレックは剣を抜いてサムソンに襲いかかるが、サムソンはその剣を奪って逆に彼を殺してしまう。そしてペリシテの兵士を追い払い、ヘブライの人々とともに意気揚々と引きあげる。

 入れ違いに神殿からダゴンの高僧が現れる。高僧はアビメレックの死骸を見て激怒し、不遜なサムソンを討つように命じるが、怪力無双のサムソンを見たペリシテの兵士は、足がすくんで動けない。そこにサムソンの一隊が押し寄せて来るという知らせが入るので、高僧は怒りをあらわにするが(「永久に呪われよ」)、そのも効き目がなく、ペリシテの兵士たちは町を捨てて山へ逃げる。間もなくヘブライの男女たちが集まって、勝利の解放を神に感謝する。

 その時ダゴンの神殿の扉が開いて、ペリシテの乙女たちを従えたデリラが現れる。彼女は乙女たちの踊りに合わせて巧みにサムソンを誘惑し、自分の隠れ家に来るよう誘う。

 美貌のデリラの虜(とりこ)になってついて行くサムソンに、ヘブライの老人たちは身の破滅だと忠告するが、彼はついにデリラへの愛を告白してしまう。喜ぶデリラは官能的な歌と踊りでサムソンに語りかけると(「春はめざめて」)、挑発的なまなざしを送りながら神殿に戻って行く。

 

第二幕

 

 ソレクの谷にあるデリラの隠れ家の前。着飾ったデリラは石に座って、今宵きっとサムソンがやって来ると確信し、恋の力によってサムソンを倒す決意を独白する(「愛よ、か弱い私に力を貸して」)。

 高僧が現れて、サムソンを捕らえれば望みの褒美をやろうとデリラに言うが、彼女は復讐のためにサムソンを打ち負かそうとするだけで褒美はいらないと言う。そして今夜こそサムソンの怪力の秘密を探り出してみせると固い決意を述べる。二人は恨みを晴らそうと互いに感情を高ぶらせる。高僧が帰り、デリラも家に入るとサムソンがやって来る。

 彼はデリラの魅力に惹かれてここに来たものの入口の前で躊躇(ちゅうちょ)していると、デリラが家から出て来て、彼に抱きついて甘い言葉をささやく。サムソンはなおも神に選ばれた自分は愛の力を断ち切らなければならないと彼女を退けようとするが、に恋を迫るデリラの言葉に、ついに神に背いても彼女への愛を誓う。デリラは高らかに愛を歌い、あなたの言葉で咲いた恋を永遠に誓ってほしいと言う(「あなたの声に心は開く」)。

 サムソンをすっかり恋の虜にしたデリラは、自分を本当に愛しているならば彼の力の秘密を明かしてくれるよう迫る。彼はそれだけはできないと答えると、デリラは怒って家の中に入ってしまう。その時突然激しい雷鳴と雷光が起こり、憑(つ)かれたようにサムソンもデリラの家に入る。

 しばらくすると、待ちかねたようにペリシテの兵士たちが現れ、デリラの合図とともに家の中に入ってサムソンを捕らえてしまう。家の中からは、裏切られたと言うサムソンの声が聞こえる。

 

第三幕

 

 第一場 ガザの牢獄。怪力の源である髪を切られたサムソンは、盲目にされた上に鎖でつながれ、重い石臼を引かされている。彼は神に背いたことを後悔している。獄の外からはサムソンを責めるヘブライ人の声が聞こえる。やがてペリシテ人が来て、サムソンを引き立てて行く。

 第二場 ダゴンの神殿の中。ペリシテの人々が詰めかけて勝利を祝う宴を開いている。ペリシテの貴族たちを率いた高僧や乙女たちに囲まれたデリラが玉座に座っている。華やかなバッカナールの踊りが続き、やがて子供たちに導かれたサムソンが牢獄から連れて来られる。

 高僧はデリラの色仕掛けにかかった惨めな姿のサムソンを侮辱し、ペリシテ人も彼を嘲笑(ちょうしょう)する。デリラもすべてが計画的な策略であったと明かし、ついに復讐は成就したとサムソンに言う。高僧はデリラに、ダゴンの神に神酒を供えて占いをするように命じ、高僧やペリシテ人たちは神に祈る。高僧は、サムソンにもダゴンの神に盃を献上するよう強要して、彼を祭壇の中央に引き立てる。

 ところがサムソンは手を引く子供たちに、神殿を支える二本の柱の間に自分を導くようにそっと頼む。踊り狂うペリシテ人たちの前で、神に念じたサムソンが渾身の力を込めて柱を押すと、柱は揺らいで崩れ、神殿はを立てて崩壊する。デリラと高僧とペリシテ人の悲鳴の中に幕は下りる。

Reference Materials



初演
1877
12月2日 ワイマール宮廷歌劇場

原作
旧約聖書(士師記第1316章)

台本
フェルディナン・ルメール/フランス語

演奏時間
第1幕49分、第2幕41分、第3幕35分(プレートル盤CDによる)

参考CD
●バルツァ、カレーラス、エステス、ブルチュラーゼ/デイヴィス指揮/バイエルン放送響・唱(PH

●マイアー、ドミンゴ、フォンダリー、クルティス、レイミー/チョン指揮/パリ・バスティーユ歌劇場管・唱(EMI

ゴール、ヴィッカーズ、ブランク、ディアコフ/プレートル指揮/パリ・オペラ座管・唱(EMI

参考DVD
ヴィッカーズ、ヴァーレット、サマーズ/デイヴィス指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(W

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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