ホフマン物語[プロローグ、エピローグと全3幕]オッフェンバック作曲

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詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

J. Offenbach, Les Contes dÅfHoffmann 1877~80

ホフマン物語[プロローグ、エピローグと全3幕]オッフェンバック作曲

 

登場人物❖

ホフマン(T) オリンピア(S) ジュリエッタ(S) アントニア(S) リンドルフ(Br) スパランツァーニ(T) コッペリウス(Br) ダペルトゥット(Br) シュレーミル(B) ミラクル博士(Br) クレスペル(B) ニクラウス(MsBr) ミューズ(語り役)他

概説

 オペレッタ作曲家であるオッフェンバックが最後に作曲に挑んだ本格的オペラである。しかし、その完成を見ずに病死したので、彼が残したピアノ・スコアをもとにエルネスト・ギローの手で完成された。初演は大成功を収め、年内に101回も続演された。

ホフマン物語.png
「ホフマン物語」2005年 写真提供:新国立劇場 撮影:三枝近志

プロローグ

 

 ニュルンベルクにある(初版はミュンヘン、原作はベルリン)ルーテルの酒場。顧問官のリンドルフは隣接する劇場のプリマ・ドンナであるステラの召使を買収し、彼女から愛人の詩人ホフマンに宛てた逢い引きの時間を指定した手紙を入手し、ステラとホフマンの仲を裂いてやろうとする。学生たちがドヤドヤと入って来て歌う。沈んだ様子のホフマンも友人ニクラウスとともに入って来る。ホフマンは学生たちの求めに応じて歌い(「クラインザックの歌」)、さらに自分の失恋に終わった三つの物語を語って聞かせる。

 

第一幕「オリンピア」

 

 ローマの科学者スパランツァーニ博士の応接間。博士は人形作りのコッペリウスに作らせた人形を、娘オリンピアとして今夜のパーティで社交界にデビューさせようとしている。訪れたホフマンは別室に座っているオリンピアをひと目見て、たちまち恋に落ちる。コッペリウスがやって来てホフマンに魔法の眼鏡を売りつけ、博士からは不渡りとも知らずに小切手をせびり取って行く。

 パーティの客人たちがそろうと、博士はオリンピアを紹介する。人形は美しいコロラトゥーラのアリアで歌うが(「森の小鳥はあこがれを歌う」)、途中でゼンマイが緩んで調子が狂ってしまい、ゼンマイを巻き直す。

 歌が終わって一同は食事の部屋へ消えるが、魔法の眼鏡をかけたホフマンにはますます人形が美しく見える。ホフマンはニクラウスの警告を無視して、一人オリンピアを追い回すが、人形はただ「ハイ」と答えるのみである。ホフマンがオリンピアの手を取ると、人形は突然立ち上がって出て行くので、彼は追いかける。その時コッペリウスが入って来て、不渡り小切手を摑(つか)まされた仕返しをしようと待ち受ける。

 やがて客人たちが戻って来てワルツを踊る。ホフマンはオリンピアと踊るが、人形は狂ったように早い動作になり、彼は目を回して倒れる。そしてオリンピアの部屋から突然機械の壊れるような大きな音がして、狂ったようなコッペリウスが出て来る。ホフマンはオリンピアが人形だと知って唖然(あぜん)とし、人々はそれを嘲笑(ちょうしょう)する。

 

第二幕「ジュリエッタ」

 

 ヴェネツィアの大運河に面した宮殿の一室。ニクラウスが高級娼婦のジュリエッタと歌う舟歌が聞こえる(「美しい夜、おお恋の夜」)。宴会が始まり、ホフマンは杯を手に酒をたたえて歌う(「酒こそ喜び、快楽こそすべて」)。そしてジュリエッタの求めに応じて歌う(「夢見るこの胸」)。

 そこに魔術師ダペルトゥットが現れ、宝石の魔性をたたえる(「輝けダイヤモンド」)。彼はジュリエッタを操り、彼女に言い寄る男の影(魂)を次々に奪う。そして彼女に捨てられたシュレーミルの次にはホフマンを狙っている。ホフマンがジュリエッタに愛を告げると、彼女はあなたの影を下さいと言う。ジュリエッタにすっかりほれ込んだホフマンが影でも何でもあげると言うと、不思議にも鏡に自分の姿が映らないのでがく然とする。

 再び宴会になるが、ジュリエッタをめぐってホフマンとシュレーミルは決闘になり、ホフマンはシュレーミルを殺す。その間にジュリエッタはダペルトゥットの腕に抱かれて、ゴンドラで遠くへ去って行く。警官の到着に、ニクラウスはだまされたと知って悔しがるホフマンを連れて逃げる。

 

第三幕「アントニア」

 

 ミュンヘンのクレスペルの家の一室。胸の病に侵された歌手アントニアがチェンバロを弾きながら、母親譲りの美しい声でロマンスを歌う(「彼女は逃げた、きじ鳩よ」)。そこに父親のクレスペルが入って来て、娘の健康を案じて歌うことを禁止し、下男のフランツに誰も家に入れないように命じて外出する。しかし耳の聞こえないフランツはホフマンに言いくるめられ、彼を家の中に入れてしまう。

 ホフマンがチェンバロを前に歌っていると、それを聞きつけたアントニアが入って来て、二人は久しぶりの再会を喜んで愛の二重唱となる。そこにクレスペルが帰って来るので、ホフマンは物陰に隠れる。間もなく不気味な医者ミラクル博士が強引に入って来てアントニアの脈をとり、無理やり歌わせようと悪魔の薬を飲ませようとする。クレスペルはやっとのことでミラクルを追い出す。ホフマンもアントニアに、体を大切にするように言って帰る。アントニアが一人になるとまたもミラクルが現れて歌を強要し、アントニアの母親の肖像画を動かして娘に歌うよう勧めさせる。そこでアントニアは声の限りに歌い、力尽きて倒れる。クレスペルが駆けつけるが、アントニアは息絶える。そして入って来たホフマンを責めるが、現れたミラクルは彼女の脈を取ると、勝ち誇ったように彼女は死んだと告げる。

 

エピローグ

 

 ルーテルの酒場。ホフマンの物語は終わる。学生たちは立ち去り、一人ホフマンは酔いつぶれてミューズの女神の夢を見る。舞台が終わってステラが入って来るが、ホフマンは気づかない。来合わせたリンドルフは、ステラの腕を取って立ち去る。学生たちが戻って来て、酒をたたえて歌う。

Reference Materials



初演
1881
年2月10日 パリ・オペラ・コミック座

原作
エルンスト・テオドール、アマデウス・ホフマン/「睡魔」「失われし幻影の物語」「議員クレスペル」

台本
ジュール・バルビエ、ミシェル・カレ/フランス語

演奏時間
プロローグ25分、第1幕36分、第2幕40分、第3幕44分、エピローグ10分(クリュイタンス盤CDによる)

参考CD
● ダンジェロ、シュヴァルツコップ、ロス・アンヘレス、ゲッダ、ギュゼレフ、ロンドン/クリュイタンス指揮/パリ音楽院管、ルネ・デュクロ唱(EMI

参考DVD
● セッラ、バルツァ、コトルバス、ドミンゴ/プレートル指揮/コヴェント・ガーデン王立歌劇場管・唱(W

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



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