天国と地獄[全2幕]オッフェンバック作曲

HOME > メディア > 詳解オペラ名作217 > 天国と地獄[全2幕]オッフェンバック作曲
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

詳解 オペラ名作217 野崎正俊 より

フランスオペラ

J. Offenbach, Orphée aux Enfers 1858

天国と地獄[全2幕]オッフェンバック作曲


登場人物❖

オルフェオ(T) ウリディース(S) 世論(Ms) アリスティ/プリュトン(T) ジュピテル(Br) ジョン・スティックス(Br) ディアーヌ(S) ジュノン(Ms) ヴェーヌス(A) マルス(B)他

概説

 有名なギリシャ神話をパロディ化したオペレッタである。オッフェンバックは自ら劇場を主宰し、97曲のオペレッタを作曲したが、30作目のこの曲はオペレッタ史上最大のヒット作となり、258日のロングランを記録した。題名は正しくは「地獄のオルフェウス」という。

第一幕

 

 第一場 ギリシャのテーバイ近郊の野原。世論が現れて、道徳に対する自分の正しい意見をこの劇に反映させると述べてから幕が上がる。

 音楽院長オルフェオの妻ウリディースは夫に飽き、羊飼いアリスティのために花を摘んで彼の小屋へ投げ入れる。そこにオルフェオが帰って来て、こともあろうに妻を恋人クロエと間違えてヴァイオリンを奏でるので夫婦げんかになる。オルフェオはアリスティに報復するため麦畑に毒蛇を仕かけたと言って出かけるので、ウリディースは恋人に警告しようと立ち去る。

 実はアリスティは地獄の王プリュトンの変身で、オルフェオに毒蛇を仕掛けるよう夢の中で暗示したのである。アリスティはウリディースが毒蛇にかまれて死んだら、彼女を地獄へ連れて帰ろうと企んでいる。アリスティは事がうまく運んだと楽しそうに歌う。

 そこにウリディースが警告に現れるが、アリスティはわざと麦畑に入り、彼を追って麦畑に入ったウリディースは毒蛇にかまれて死ぬ。彼女は喜んでアリスティ(プリュトン)に抱かれて地獄へ下りる。オルフェオも妻がいなくなったと喜んでクロエのところに行こうとするが、世論が現れて妻を取り戻すように命じ、オルフェオは大神ジュピテルに訴えるため世論につき添われて天国に向かう。

 第二場 オリンポスの山上。天国の神々が雲の上で眠っている。恋の神キューピッド、愛と美の神ヴェーヌス、軍神マルスなどが朝帰りして寝る。やがて狩の神ディアーヌが勇ましくやって来るので、ジュピテル以下の神々が目を覚ます。

 ディアーヌが恋人アクテオンがいなくなったと訴えると(「ディアーヌが野に降りてみると」)、ジュピテルはスキャンダルの発覚を恐れて彼を鹿に変えてしまうので、神々はジュピテルの独裁を非難する。では地上でウリディースがいなくなった事件もジュピテルのしわざかと神々は疑うが、ジュピテルは、調査のためマーキュリーを派遣していると言う。

 そこにマーキュリーが戻って、事件の犯人は地獄の王プリュトンだと報告する。プリュトンが呼ばれてジュピテルに叱責されるが、天国の神々はまたもジュピテルの不品行の数々を挙げて非難するので、妻のジュノンは嫉妬(しっと)する。その最中に世論につき添われたオルフェオが現れて、心進まぬままジュピテルに妻ウリディースを返すよう訴える。プリュトンは犯行を否定するが、ジュピテルは皆を引き連れて地獄へ調べに行くことにする。

 

第二幕

 

 第一場 地獄の王プリュトンの私室。プリュトンに誘拐されて軟禁されているウリディースは退屈している。元アルカディアの王子で、今はプリュトンの下男になっているスティックスが彼女を見張りながら言い寄るが(「私がアルカディアの王子だった頃」)、その一本調子の歌にウリディースはイライラするばかりである。

 そこにジュピテルを連れてプリュトンが帰って来るので、スティックスは急いでウリディースを別室に隠す。ジュピテルはプリュトンの立派な個室を見てうらやみ、ウリディースはどこかと尋ねるが、プリュトンは自分は誘拐していないと言い張り、神々を宴会場に連れて行ってしまう。ウリディースは人の気配がしていたのにもう誰もいないとがっかりするが、女に対する嗅覚の鋭いジュピテルは、ウリディースが閉じ込められている部屋を発見する。

 ジュピテルは蝿(はえ)の姿に変身すると、鍵穴から部屋の中に忍び込む。退屈していたウリディースは、彼女を誘惑するように飛び回る蠅を面白がって追い回す(蠅の二重唱「ズズズズズ」)。頃合いを見はからってジュピテルは身分を明かし、彼女を天国へ連れて行こうと申し出る。ウリディースは宴会にバッカスの巫女(みこ)の姿で出席し、二人で一緒に逃げようと約束する。

 第二場 地獄の大広間。天国と地獄の神々が一堂に会して飲み食いの大騒ぎをし、プリュトン万歳と叫ぶ。さまざまな踊りが披露され、ウリディースもバッカスの巫女に変身して歌う。彼女はジュピテルの手を取って踊り出し、どさくさに紛れて逃げようとするがプリュトンに見つかって立ちふさがられる。プリュトンはジュピテルに対し、オルフェオとの約束はどうしたのかと責める。

 そこにヴァイオリンの音が聞こえ、オルフェオが三途(さんず)の川を舟で渡って近づいて来る。彼は心ならずも約束通り妻を返してくれと叫ぶので、ジュピテルもしかたなく地上に連れ戻すまで後ろを振り返らないという条件をつけてウリディースを彼に返してやる。世論に励まされて、オルフェオは地上に向かって戻り始める。ところが、いつになっても後ろを振り返らないオルフェオに業を煮やしたジュピテルは突然雷を鳴らすので、驚いたオルフェオは思わず後ろを振り向いてしまう。

 オルフェオはウリディースと離ればなれになり、晴れて自由の身となる。世論の困惑をよそに、オルフェオは喜び勇んで一人地上の恋人クロエのもとに戻って行く。プリュトンはウリディースを自分のものにしようとするが、ジュピテルはそうはさせじと彼女をバッカスの巫女にしてしまう。

Reference Materials



初演
1858
1021日 ブッフ・パリジャン劇場(パリ)

原作
ギリシャ神話「オルフェオとエウリディーチェ」のパロディ

台本
エクトル・クレミュー、リュドヴィク・アレヴィ/フランス語

演奏時間
第1幕70分、第2幕40分(マッテス盤CDによる)

参考CD
● ローテンベルガー、レヴァース、リッツ、ダラポッツァ、クッシェ/マッテス指揮/フィルハーモニア・フンガリカ、ケルン歌劇場唱(EMI

参考DVD
● デセイ、ファロー、オルメタ、フシェクール、ブロン/ミンコフスキ指揮/リヨン歌劇場管・唱(Art

ショパン別冊 詳解オペラ名作217 2013年12月発行 無断転載禁止  



◀︎◀︎◀︎ ロメオとジュリエット        ホフマン物語 ▶︎▶︎▶︎



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
KAWAI
YAMAHA WEBSITE